6月15日、日曜日の昼、BFI SouthbankのFilm on Film Festivalの最終日に見ました。
この日は3本、どれもいろんな意味でたまんなかった。
5月のシネマヴェーラの特集「超西部劇」でも話題になっていた(の?)作品。 邦題は『女群西部へ!』。
上映された35mmプリントは、もともとTV局(Channel4)が放映用に持っていたのをBFIに寄贈したもので、放映用なので殆ど上映されたことがない、ものすごくよい状態のプリントだった。
イントロでは、もともと原作を書いたFrank Capraが監督もやりたかったのにスタジオが許さず、William A. Wellmanが監督することになり、この作品はWellmanにとっても一番のお気に入りになったそう(彼の息子の評伝によると)。 あと、映画でのスタントウーマンが登場した最初期の作品になるのだとか。
1851年、カリフォルニアででっかい農場を経営するRoy(John McIntire)が男たちをこの土地に留めておくには女たちが必要だ、ってBuck (Robert Taylor)に頼んで、シカゴで集めた女性たちを結婚目的で集団で移送する計画を立てる。シカゴでは女性たちの選考会のようなものが開かれ、それなりの覚悟を問われたうえで約140人が選ばれ、女性たちは壁に貼られた相手方男性の写真からお好みをピックアップして携える(今ならオンラインでクリックして保存)。
地方の農家にヨメを、って今もどこかの国でやっている、大枠としてはなんだかひどくガサツでしょうもない話をFrank Capraが考えた、っていうのはなるほど(醒)、ってなりつつも、映画はカリフォルニアの男たちが企画したように、それに乗ったシカゴの女たちが思っていたようには進んでいかない。インディアンの襲撃があり、自然災害があり、馬車の転落があり、出産があり、そのぜんぜんうまくいかなくてきつい – 子供も含めて大量の人々がいろんな理由でばたばた亡くなったり殺されたりしていく - ドラマが中心で、ラストに描かれるウェディングはほとんど天国のようになるのだが、映画で描かれた過酷さの終着点として、ここの「天国」の描き方は無理なく整合していると思った。
苦難を乗り越えた彼女たちを待っていたものだけでなく、その苦難がものすごくダイナミックに、見事な群像劇として描かれている。泣き叫ぶ人も勿論いるが、それだけではなく、黙って黙々と歩く人、肩を寄せ合う人、西部の大地にゆっくりと歩みを進める彼女たちの像が、その連なりが、なんだかとてもよいの。
あと、女性は概ね力強くかっこいいのに対して、Buckも含めて男たちはしょうもないのばっかりで、逃げるか殺されるかばかり、というのがおもしろい。 あと、Henry Nakamuraが演じた異様に長い名前の日本人は江戸時代の日本からどうやってあそこまできたのか。侍ではなくクリスチャンのようだし。
Strongroom (1962)
↑のに続けて見ました。イントロにEdgar Wrightが登場する予定だったのだが、新作の追いこみで来れなくなった、と(”Star Wars”の上映には来てたのにな)。
英国の低予算B級映画で、監督はVernon Sewell - Michael Powellのメンターだったそう - で、今回はこのフェスのためにニュープリントが焼かれた、と。 IMDbを見ると『殺しか現金(ゼニ)か』っていう邦題が出てくるのだが、日本でも公開されたのかしら?
Edgar WrightはQuentin Tarantinoからこの映画のことを聞いて、見たらすごくおもしろかったので、Martin Scorseseにも教えてあげたら、Martyもとても気に入ったって。確かにおもしろいったら。
大西部の群像劇から、きゅうきゅうして暗い地下の金庫室にもぐる。
月曜日がBank Holidayの休日となる英国の田舎の土曜日、店を閉めて帰ろうとしている小さな銀行の支店に、行員が帰って数が少なくなったところを見計らって3人組の強盗が押し入り、残っていた店長と事務員の女性を脅して鍵を奪い、地下の金庫室(Strongroom)に案内させて袋に現金をいれて、行員ふたりを(通報されないように)金庫室に閉じこめて銀行をでる。
途中で現金を持っていく2人と、鍵を持っていく1人に分かれて(金庫室は厳重に密閉されているので、あとで鍵を開けないでそのままにしておくと人殺しになってしまう – Bank Holidayで人が来なくなるので尚更やばい)、後で落ちあおう、って別れるのだが、鍵を持っていった奴が交通事故で亡くなった、とその兄弟である現金組の方に警察が知らせにくる。
自分たちを捕まえにきたのでなかったのはよかったが、問題は鍵を持った彼が死んでしまったので、後から金庫室を開ける術がなくなってしまった – 後で金庫室から行員の死体が発見され、強盗だったこともばれたら自分たちは強盗どころか殺人犯になってしまうなんとかしなきゃ、と。
こうして、金庫室に閉じこめられ酸素不足の困難に締めつけられつつ中から穴を開けようとする行員2人と、現場に行ってバーナーを使って外から穴を開けようとする強盗2人と、この鍵はどこのなんのカギだろうか?って怪しみ始める警察の3つの現場が渦を巻いて、室内の酸素がなくなるタイムリミットも含めて、とてつもない緊張を生んでいくの。警察が鍵の専門家を呼びだして鍵を特定していくあたりのおもしろさときたら。 そして最後に…
イギリス人の間抜けなところと頑固なところとトロいところが金庫破りという犯罪を軸にまわっていくのが見事な緊張感を生んで、いまそこらで実際に起こってもおかしくないような。
6.20.2025
[film] Westward the Women (1951)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。