6.17.2025

[film] Ballerina (2025)

6月8日、日曜日の午後、Curzon Victoriaで見ました。

John Wickシリーズからのスピンオフ作品で、脚本を最近のJohn Wickのを手掛けているShay Hattenが担当している。

冒頭、幼いEveが父と暮らしている孤島にChancellor (Gabriel Byrne)と呼ばれる男の一味がやってきて激闘の末に彼女の父を殺して、EveはDirector (Anjelica Huston)の組織に引き取られて、バレリーナとしてのレッスンを受けつつも格闘技の訓練を受けてプロの殺し屋として成長する – この辺を両立させる意味があまりよくわからないのだが、幼時のEveは「白鳥の湖」のメロディーを奏でるお人形のオルゴールをずっと抱えている。

殺された父の仇をとるためにも、ってEve (Ana de Armas)はAnjelica Hustonの組織と血の契りを結んで、絶対の忠誠を誓わされつつ、父を殺した連中を追っていくと... という敵討ちの物語としてはふつうのオーソドックスで、そこにJohn Wickワールドのよくわかんない組織とか掟の話が絡んでくる。 一作目の”John Wick”(2014)って、自分の犬を殺されたから、って敵をぼこぼこにしてしまう軽さがよかったのに、後のチャプターで組織あれこれが絡んでくると、なんだか面倒で見るのが辛くなってきて、今回のスピンオフは、バレリーナが主人公なのでその辺が軽くなってくれることを期待したのだが、むしろ逆で、バレエの世界の厳しい規律とか「白鳥の湖」の過酷さが絡まって被さってきて重い。バレエの軽やかさとか華麗さで殺しまくるようなところがあまりないところがなー。

Ana de Armasが007の“No Time to Die” (2021)でキューバのエージェントとして持ちこんだアクションの明快さと軽さを期待したのだが、それらはほぼなくて、血と傷にまみれて痛みに顔を歪めたりしながら殺しまくる、それが125分間続く。John Wick (Keanu Reeves)が登場してもそこは変わらず、びっくりするくらい新シリーズのフレッシュなかんじがないのって、どうなのか。

あと、基本的なところでAna de Armasさんて、コメディの顔でありキャラだと思うのよね。怒りと恨みに燃えて仁義なき全面戦争みたいの、って“Kill Bill”のUma Thurmanで見ているし、他にも同じようなドラマはいくらでもあるのでー。

最後のほうは、オーストリアの冬山の奥の集落で、そこの住民がぜんぶ敵のカルトの構成員なので四方八方から武器を携えて襲ってくる、ていうのがヤマで、お皿をばりばり割りあったり(あれ、相当痛いと思うけど)、火炎噴射機で一挙に焼き討ちとか、おもしろいところもあるけど、バレリーナがやることじゃないよね。John Wickの空手(みたいなやつ)vs. パ・ド・ドゥからの串刺し、みたいな技の対決を見たかったのになー。


バレエといえば、これの前日の7日の昼にRoyal Balletで”Onegin”を見たのだった。
バレエはもっと頻繁に、3ヶ月に一回くらいは見たいのだがチケットの値段が随分高くなっていて難しい。

「初めてのバレエ」みたいな入門編で、キャストはOneginがCesar Corrales, TatianaがFrancesca Hayward, OlgaがViola Pantuso。バレエは十分によかったのだが - Francesca Haywardはすっかり大御所になってきたなあ、とか。
お話しとしてはOneginがひとり勝手に我儘の限りを尽くして、ひとり孤立して悩んで去っていくものすごくひどい話 - ヒロインを泣かせるための典型的なバカ男設定 - だったわ。

(いろいろあるので押し込んでいく↓)


Anselm Kiefer: Early Works

“Ballerina”を見る前、バスで1時間くらいかけてOxfordに行ってAshmolean Museumで見ました。

Anselm Kieferの初期作品群を展示しているのだが、彼が24歳の時、屋根裏部屋で父が持っていたナチスの制服を発見して、Kiefer自身がそれを羽織って各地をまわりナチスの‘Sieg Heil’ 敬礼をしている写真を加工したOccupations series (1969–70) - 国としてナチスの記憶を消そうとしていったところに、もしもし?なんで忘れたりできるわけ?ってやるとか、カントやニーチェを描いた素朴な(ぽく見える)木版画とか民藝風のとか、ホロコーストの後にアートがありうるとしたら? を問い続けて塗り重ねたり積んだりしていった果てが我々の知るばかでっかいKieferに繋がっていくのだな、と。二条城での展示はこちらを使った方が馴染んだのではないか、と思ったり。

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