6月18日、水曜日の晩、O2 Arenaで見ました。
“Peel It Back” ワールドツアー、欧州公演の3つめ。
野外のフェスをまわっていた2022年から3年ぶりとなるライブで、自分の履歴をみると前回見たのは2022年のLAのPrimavera(フェス)で、その前は2018年のRadio City Music Hall、その前は同年のRobert SmithがキュレーションしたLondonのMelt Downから2つ、その前は2017年のNYのPanorama(フェス)、その前は2014年のHollywood BowlでのSoundgardenとのライブ、と、だいたい3~4年周期で見てきていて、ほぼ野外 or 大規模ホールで、アリーナは - アリーナの仕様をフルに使ったライブは久々だったのだが、なかなかすばらしかった。
19:20くらいに会場に入るとDJらしき人がモニターの上に組まれたやぐらでがんがん始めていて、Boys Noizeとあった前座がなかなか始まらないなー、と思っていたら、この人がBoys Noizeなのだった。名前だけ見てどっかの三文パンクバンドかと思っていた。やや80年代のカーブがはいったぶっといエレクトロで、年寄りにもやさしい。
ステージがふたつあることは聞いていて、スタンディングエリアの真ん中に幕に覆われた立方体のでっかい箱が組まれていて、やってくる客はそっちの方を向いて取り囲んでいるのでそこから始まるらしい、ということはわかる。20:20くらい、直前までBoys Noizeがノンストップでやっていて、気がつくと幕がなくなっていて、むきだしのキーボード類が積まれていて – そのむきだし感がまたたまらない – Trent Reznorがひとりで座って静かに”Right Where It Belongs”を歌いだす。
NINのライブというのは、だいたい最初からフルスロットルでぶちかまして走り抜けて、最後に満身創痍の傷だらけのへとへとで”Hurt”を歌って消える、というパターンだったので、これは新しい。そしてTrentのテンションの、漲っているかんじは変わらない。 その状態で、彼が改めて覚醒した”With Teeth” (2005)の曲から、“What if all the world you used to know is an elaborate dream?” なんて素で歌われたら… そして、この後の”Ruiner”のエンディングの吐息。 これだけでじゅうぶんモトが取れたかも。
続く“Piggy”でIlan Rubinを除く3人が小さなステージにあがり、Ilan Rubinは..? と思っていると、曲のエンディングで突然ドラムスが爆裂して、メインステージのスクリーンに雷神になったでっかいIlanが映しだされ、おおおって慄いている間にメンバーは仕切られた通路を通ってメインステージの方に向かう。(Taylor Swiftみたいにダイブして消えたりすればよかったのに)
ドラムスのばりばりはそのまま”Wish”に繋がり、いつものNINモードになるのだが、ステージを覆う蚊帳みたいな薄膜状のスクリーンに淡くプロジェクションされて揺れて、その上に火花や電光や雲が走りまくるヴィジュアルがすごい。新しい”TRON”の宣伝(音楽 by NIN)が並んでいたが映画会社からお金が出ているのではないか、というくらいの完成度。
そして音質もまたものすごくよくて、”March of the Pigs”のエンディングは極上最速のスラッシュだったし、延々とまらない”Reptile”の、爬虫類の肌がぴたぴたしてくる密着感ときたら卒倒もんだし、過去さんざん試行錯誤してきた”Copy of A”のビジュアルは、まるで宇佐美圭司のタブローだし。
“Act3”ではTrentとAtticus Rossは再び通路を渡って真ん中のステージに向かい、そこで待っていたBoys Noizeを加えた3人編成で”The Warning” – “Only” – “Came Back Haunted”の3曲を。オープニングのアンプラグド(ではないけど)の静謐さとは真逆のみっしりマッシブなエレクトロで、しかし間にスタンダードのAct2を挟むことで、逆立った毛とかトサカの裏に張りついていた怒りが肉となって膨れあがる – “Haunted”の過程を目の当たりにして、そして再びメインステージに戻った”Act4”は、せっかく盛りあがった肉たちを再びミンチにかけてしまう(Mr. Self Destruct)。
とてもわかりやすいストーリーラインを描いているようで、でもタイトルは”Peel It Back” – 「剥がせ」なんだよね。
セットに”The Fragile” (1999)からの曲がない(別の日にはやっているけど)、「憑りつかれ」がテーマとしか言いようがない構成で、明らかにステロイド筋肉を落としてスリムになったTrentのシェイプとあわせて相変わらず「どうしたのあんた?」 であった。(関係ないけど、典型的なBass & Drums体型になってしまったAlessandro & Ilanはどうにかすべきではないか)
Act4でのマイクロフォンのトラブルはやや残念だったが、彼が”Sorry about that”って謝ったり、メンバー紹介をしたりの珍しい場面を見れたのでよしとしたい。「自分で機材を壊すのは最高に楽しいけど、他人がそれをやるのは許せない」、って久々にギターを叩きつけて壊し、マイクをぶん投げていた。
こんなひとがアカデミー賞獲っているんだからなんだか痛快よね。
6.20.2025
[music] Nine Inch Nails
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