6.24.2025

[film] The Killing (1956)

6月14日、土曜日の晩、BFI SouthbankのFilm on Film Festivalで見ました。

この日は朝からStratford-upon-AvonにRoyal Shakespeare Companyの芝居を見に行って、夕方Londonに戻ってきた。土日は電車が突然止まったりなくなったりするので少しはらはらしたがどうにか間にあった。

この上映には”From Stanley Kubrick’s Personal Collection”とあって、ある日BFIにKubrickの住んでいたChildwickbury Manorから連絡が入り、ここにフィルムがいっぱいあるけど見たい? と言われたので見るに決まってるだろ、って行ってみると、よい状態で保管された彼の監督作の各国語版なども含めた大量のコレクションがあって、まだ掘り進めている最中だそうなのだが、その中からとても状態のよかったこれとデビュー作の短編ドキュメンタリーを。

Day of the Fight (1951)

監督・制作・撮影・編集をKubrickがやっている。
NYに暮らすボクサー(Walter Cartier)とその双子の兄弟がその晩の大事な試合に向けて準備していく様をDouglas Edwardsのナレーションが実況中継のように追って、その語りのテンションがそのまま試合の熱に繋がっていく。彼らの長い一日を12分に凝縮していて、終わると肩の力が抜ける – という点では既にKubrickの映画。リング上に寝転がって撮ったようなショットがあったけど、あれってやって許されたの?


The Killing (1956)

邦題は『現金に体を張れ』。Stanley Kubrickのハリウッド映画第一作。Lionel Whiteの小説をKubrickとJim Thompsonが脚色した作品。

上の“Day of the Fight”から続けて見ると、ヤマのイベントに向けて男たちが準備していくのをナレーション(Art Gilmore)が横から緊張感たっぷり、運命を語るかのように併走していくスタイルは似ている。

そしてもちろん、一対一のスポーツの試合とJohnny Clay (Sterling Hayden)が集めてくる仲間たち-それぞれで主演作を撮れそうな男たち - の群像劇&その背景となる競馬(試合)、という違いもある。どれだけ抜かりなく準備していっても「殺し」 - “The Killing”という巻き戻しのきかない一線を越えたものが出てしまったところから、事態は狂うべくして狂っていく、というノワール。

競馬の馬券売り場からお金を盗む、そこからよくあんなふうに世界とお話しを膨らませることができるなあ、って。なんでここにチェスプレイヤー兼レスラーを絡めたりすることができるのか。しかも最後なんてあんなちっちゃい犬ころに...

そしてフィルムの陰影のクオリティはすばらしかった。前見たときはデジタルで、全体に白っぽかったがこの粗い白黒の粒立ちは見事で、最後に舞い散る札束の一枚一枚がJohnnyにそう見えたであろうのと同じように非情に焼き付いてくるのだった。上映後、立ち上がって喝采する人たちがいたが、それくらい。


Hard to Handle (1933)

6月15日、日曜日の夕方、BFI SouthbankのFilm on Film Festivalで見ました。
この日、Westward the Women (1951)~Strongroom (1962)に続く3本目。35mmのフィルムはBBCが放映用に保管していたものだそう。

監督Mervyn LeRoy、主演James Cagneyによる78分のpre-codeコメディ。日本では公開されていない?

ホレス・マッコイの『彼らは廃馬を撃つ』(1935) で小説となり、Sydney Pollackの“They Shoot Horses, Don’t They?” (1969)で映画化もされた、あの悲痛な大恐慌時代のマラソン・ダンスをネタに、当時大スターだったJames Cagneyがどたばたコメディとして引っ掻き回している。

マラソン・ダンスでへろへろになりながら優勝しかけていたカップルの賞金が男の方に持ち逃げされて、その片割れだった恋人(Mary Brian)とその賞金で借金をどうにかしようとしていた詐欺師のLefty (James Cagney)は押し寄せてくる借金とりの相手をしたり逃げたりしつつ、新手の詐欺を仕掛けていって… というお話しで、恋人よりもそのママのRuth Donnellyのキャラの方がより強烈だったり、いろいろ。 

金儲けのネタとして出てくる万能のグレープフルーツ、半分に切ってお砂糖をかけてスプーンですくって食べるのって、この頃からあったのかー、っていうのと、最近そういう食べ方しなくなったよね.. とか。

そして、これくらいはったり仕込んで仕掛けて搔きまわさないと回らないくらい大変だったのが大恐慌時代、というのはなんとなく伝わってくる。そういう中でスターとして輝いていたJames Cagneyのことも。

あと、恋人役はCarole Lombardがやる予定だったけど降りた、って。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。