10.21.2024

[film] The Talk of the Town (1942)

10月13日、日曜日の昼、BFI Southbankで見ました。 LFFの”Treasures”というカテゴリーで昔の作品のリバイバル。日曜の昼にこういうの見るのはよいねえ。
2本のオリジナル35mmナイトレートフィルムから4Kリストアされたものだそう。 邦題は『希望の降る街』 - かなり変。

監督はGeorge Stevens、脚本にはIrwin Shawが参加している。
めちゃくちゃおもしろいコメディだったのだが、会場では見たことがある人がそんなに多くなくて、やや不思議だった。イントロをしたキュレーターのRobin Baker氏によると、George Stevensのストーリー重視王道路線のようなのがカイエの作家主義の文脈からきちんと評価されなかったのが大きかったのではないか、とか。

工場の労働者で組合で活動していたLeopold Dilg(Cary Grant)が工場に放火して工場長を殺した容疑で逮捕・投獄される(新聞大見出しぐるぐる)。大雨の晩、Dilgは脱獄して飛び降りた時に痛めた足を引き摺って少し離れた森のなかにある同窓生Nora (Jean Arthur)のコテージにやってきて倒れ込む。ここまではノワールの脱獄ものっぽいテンション。

NoraはDilgをしばらくの間匿うことにするものの、このコテージは夏の間大学の法学の教授Michael Lightcap (Ronald Colman)に貸すことになっているの… と言ったところで一日早く教授が到着してしまったので、とりあえずDilgを屋根裏部屋に隠す…のだが、NoraはDilgをそのまま放っておくわけにもいかず、Dilgもずっと隠れているわけにもいかず、脱獄逃亡中の身であることを隠した上で教授には住み込みの庭師として紹介し、Noraは教授の身の回り雑用係として3人が一緒に暮らしていくことになる。

Dilgを捜して頻繁に警察がやってくるし新聞は連日顔写真入りでDilgのことを報じているので、隠れたり隠したり逃げたりの綱渡りが続いて、その間にDilgと教授はチェスをしたり法学が現実を十分に見ていないことについて延々議論したり、なんだかんだ仲良くなっていく。 やがて教授は最高裁判事に指名されて、その勢いでNoraに恋を告白して…

この先がどうなっていくのか、見ている側におおよその流れとしてはわかるのだが、NoraはDilgとくっつくのか教授とくっつくのか、Dilgはどうやって自身の無実を証明するのか、細かいところが気になってきて、そしてびっくりすることに映画はその細かいところまでぜんぶきちきちと追っかけていく。スクリューボール式のrom-comとしては117分もあって長いのだが、ものすごくしっかりとベースを作って最後の法廷シーンまで持っていく。そこまでの飛躍ややっつけがないので、静かな法廷の緊張感が際立つし、更にその先には恋の裁き(by Nora)が待っているのでたまんない。 ノワールで始まってコメディが引っ搔き回して、最後は法廷、という流れ。

とにかく真ん中の3人の掛け合いがよくできていて楽しくて、それぞれの持ち味を期待通りに出したり引いたり、そのなかでNoraはどっちの男に引っぱられるのか、最後までわからない – 引っぱられるのでなく、最後はもちろん – というのと、ひょっとしたらDilgと教授も.. というのも現代の映画なら入ってくる要素だと思う(教授の髭とか… )くらいにみんな魅力的で。

世の中のことをよく知らない大学教授が雑多な世界に巻きこまれて大騒ぎになるスクリューボール・コメディといえば、もちろんHoward Hawksの” Ball of Fire” (1941) - 『教授と美女』があって、これは問答無用の傑作なので見てほしいのだが、これも含めて大学教授が男性ばかりだった時代 - 女性は学問のことわからない・触らないだろ前提で成立しているお話しなので、そうじゃない版もどこかにあるのだったら見たい。

あと、似たようなタイトルでJohn Fordの”The Whole Town's Talking” (1935) ってあったなあ、と思ったらこれにもJean Arthurは出ているのだった。街の噂に必ず挟まってくる彼女。

上映が終わると満場の客席からは大拍手が。そうこなくちゃ。

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