10.14.2024

[film] The Legend of Hell House (1973)

10月7日、月曜日の晩、BFI Southbankの特集 “Martin Scorsese Selects Hidden Gems of British Cinema”で見ました。

この特集はもう終わってしまったのだが、特集でかかった21本のうち、見れたのは18本だけ。選んだのがMartin ScorseseとEdgar Wrightなので、ややB級サスペンス-ホラー寄りのが多くて、あとちょっとコメディとか文芸よりのがあればなー、とか、女性が選んだら全然異なるものが出てくるのでは、とか。

邦題は『ヘルハウス』 … と聞いて、小学生のとき『エクソシスト』が公開されてヒットして、もちろん怖くて見に行けるわけないのだが、それより恐ろしいのが『ヘルハウス』だ、っていう伝説があって見にいった人は英雄になっていた - などを思い出し、いままさに見ようとしているのがその『ヘルハウス』であるのをシアターに座ってから気づいて、でも怖くなったのでやめますなんて言えず… がんばった。

監督はJohn Hough、原作はRichard Mathesonによる71年の小説”Hell House”で、脚本も彼が書いている。音楽は共同でDelia Derbyshireの名前が。35mmフィルムの傷や退色も含めて、すばらしくよいプリント。

物理学者のDr. Lionel Barrett (Clive Revill)が大富豪から幽霊屋敷と呼ばれて名高いBelasco Houseの調査を依頼される。同行するのは彼の妻Ann (Gayle Hunnicutt)と霊媒師のPamela Franklin (Florence Tanner)と前回の調査で唯一生き残ったBen Fischer (Roddy McDowall)の計4人で、クリスマスイブの一週間前に屋敷に入って、シーンごとに日時が字幕表示されて、記録や証拠 - Legendとして残る – 50年経っても残っているねえ、と。

最初から相手は幽霊屋敷である、あそこにはなにかある/でる、と明確に言われていて、これは科学的に対処できるはず、とする科学者と直接話したり相手してみれば、という霊媒師と両極がいて、お金くれるなら、という適当なのがいて、要は霊だろうが科学だろうが両面で絶対にでる設定なので準備・用意はできているはずなのだが、やっぱり画面に現れくるのは猫だろうが鳩だろうがぜんぶ怖い – 怖いと思うからこわいんだ、って言われるその罠に簡単にはまる。だって視野の幅から高さからすんなり見てわかる怖さ - 流血とか傷とか、そんな説明なくても見てみれば - だし。

Edgar WrightはJack Claytonの”The Innocents” (1961) - 『回転』の反対側に位置する恐怖映画だと語っているが、確かに最初から種も仕掛けもなくぜんぶ見せていて、ほれ怖がれ、こんなのもあるぞ、ってほいほい投げてくるようで、それでも怖いのだからどうしようもない。

あとは時間の経過か、何時何分に何をした、が記録されていくが、それと同じ時間の流れの中にあれらはぜんぶ置かれ、ずっとそのままにされてきたのだ – 世界の殆どはそういうのでできているのだ、という念押しで浸みだしてくる恐怖。なんでお墓や古屋敷が怖いのかがぜんぶここに。


Dr. Jekyll and Sister Hyde (1971)

10月3日、木曜日の晩、上と同じ特集で見ました。邦題は『ジキル博士とハイド嬢』。

イントロと上映後のQ&Aでは脚本を書いたBrian Clemensの息子のSam ClemensとSister Hydeを演じたMartine Beswickが登場してお話しを。

監督はRoy Ward Baker、原作はR.L. Stevensonの小説”Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde” (1886)、制作はHammer Film Productions。

ヴィクトリア朝時代のロンドンで、まじめな研究者であるDr. Jekyll (Ralph Bates)は名をあげるべく不老不死の薬を研究していくうち、墓荒らしの鬼畜コンビBurke & Hareが持ってきた女性の死体から抽出した女性ホルモンを自分で試してみたら女性の身体に変態してしまうことを発見し、自らMrs. Edwina Hyde(Martine Beswick)と名乗り、最初は隠そうとしていたのだがいろいろやめられなくなって、変身するために自分で夜の街に出て女性殺しを始めるようになり…

ここにDr.Jekyllにプレッシャーを与え続ける年長の教授とか、下宿の上階に暮らしてJekyllとHydeそれぞれに恋をしてしまう姉妹とかが絡んできておもしろいの。

Burke & Hareは感想を書いていないけど同じ特集で見た”The Flesh and the Fiends” (1960) – 邦題『死体解剖記』に出てくる連中だし、舞台はWhitechapelで明らかにJack the Ripperを参照しているし、ドリアン・グレイもあると思うし、フィクションも含めてあの時代のロンドンで起こりえた老いと美と死に対する憧れや畏怖を巧みに放り込んで見事な絵巻物にしていると思った。ファッションも素敵だし。

今だったら男と女の性がどう切り替わるのかをクローネンバーグからこないだの”The Substance”まで、ボディホラーふうに見せる方に寄ってしまうのかも知れないが、それなしでも十分おもしろくできるねえ。

上映後のQ&AはBrian Clemensがどれほど真摯にこれに取り組んでいたか – 細かい資料が遺されているそう - と、あとMartine Beswickさんはすごくチャーミングな方だった。

Whitechapelって、もろ今住んでいるとこの近所なので生々しいったらない。


今回の特集、70年代の選択に所謂B級ホラーっぽい作品が並んだのは、彼ら(Martin Scorsese & Edgar Wright)の映画人としての目覚めや立ちあがりとも関係あったりするのだろうか?

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