10.25.2024

[film] Silent Sherlock

10月16日、水曜日の晩、Alexandra Palace Theatreで見ました。

今年のLondon Film Festivalの(個人的には)ヤマ、1922年に公開されたサイレントのSherlock Holmesの短編3本をリストア後初めて大きなスクリーンで公開する。

会場はロンドンの中心部から離れた丘の上、公園とか大きめのライブをやるイベント会場があるAlexandra Palaceで、なんでこんなところで、とぶつぶつ言いながら着いてみると、そこにある修復された古いシアターで上映されるのだった。ブリキ板で仕切られたプロジェクション用のブースもあり、大昔にはここで映画の上映もしていたという。雰囲気としては確かにすばらしい。

世界に誇る(←だいぶ洗脳されていると自分でも)BFI National ArchiveがSherlock Holmesものの全45エピソードと2つの長編を入手したのが1938年、それ以来オリジナルの保存と並行していろんな修復をしつつ2002年に一部が正式なプロジェクトとして立ちあがり、その成果をようやくお披露目できるようになった、と。伴奏もピアノだけじゃなくてRoyal Academy of Musicの11名のアンサンブルがライブでついて、伴奏曲もエピソード毎に3人の作曲家 – Joseph Havlat, Neil Brand, Joanna MacGregorに委託して作らせて、上映前に配られる解説ペーパーもいつものペラ紙ではない、より厚くて写真も入っていて少し豪華で、だから多少場所が遠いくらいでぶつぶつ言うんじゃない、と。

上映されるエピソードは3つ- “A Scandal in Bohemia”(1921) -『ボヘミアの醜聞』、”The Golden Prince-Nez” (1922) - 『黄金の鼻眼鏡』、”The Final Problem”(1923) - 『最後の事件』で、ホームズものは子供の頃に新潮文庫から出ていた翻訳のをぜんぶ読んでいたのでどれもまだ覚えている。「醜聞」てなに? って辞書で引いたりした - あまりよくわからなかったことも。

今回上映されるシリーズは映画会社のStoll Picturesが原作者のSir Arthur Conan Doyle自身から直接映画化権を買ったもので、Sherlock Holmesを演じる舞台俳優EilleNorwoodについてもDoyleは”the embodiment of the popular idea of Sherlock Holmes both in face and body”と絶賛していて、原作者がそう言って惚れこんでいるのだから間違いない、としか言いようがない。

個別には書きませんが、各エピソードはどれも25分くらい、監督はすべてMaurice Elvey - 英国映画史上、最も多作な監督のひとりだそう – で、原作を読んでいなくても、ホームズが何者か知らなくてもシリーズとしての繋がりを知らなくてもわかるように丁寧に作ってある。

そして、Eille Norwood演じるホームズはパーフェクトとしか言いようがなく、ガウンを羽織って気だるそうにバイオリンを弾いたり、真面目なワトソン(Hubert Willis)をびっくりおろおろさせて無表情にふん、て澄ましているとことか、彼がやがて「あの女」と呼ぶことになる「醜聞」のIrene Adler (Joan Beverley)に対する態度もミソジニストとしか言いようのない高慢ちきなそれだし、身近にいたら絶対やな奴臭ぷんぷんであろうが、自分がホームズに見ていたものがぜんぶそこにあるのだった。あとあるとしたら彼の声、どんなだったのだろう? 聞いてみたかったな。

あとは『最後の事件』に出てくるモリアティ教授(Percy Standing)の空っぽな表情の怖さ。ドイツ表現主義の映画のよう - というくらい陰影が見事に出ている。取っ組み合いから崖から落ちるシーンの、あっ… というかんじも。

他のエピソードもできれば配信じゃない形で見たいんだけど、公開してくれないかなあ。

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