10.03.2024

[music] The The

10月1日、O2 Academy Brixtonで見ました。
2018年、Royal Albert Hallでの”The Comeback Special”以来のThe Theのライブ。

これの前、9月28日のAlexandra Palaceでのライブは場所が地下鉄とバスを乗り継いでいく山の上の、昔のエムザ有明みたいなとこなので諦めた。

2018年のがそれまでのキャリアを総括する網羅的 – であるが故の力強さをもつ内容だったのに対して、今回のは新譜 - まだ聴いてないや - “Ensoulment”を全曲披露する’listening' setと過去のレパートリーを束ねた‘dancing' setの二部構成 - 間に15分間の休憩、となっている。

戻ってきた(くる)のでよろしく、と改めての自己紹介をした前回に対して、それから5年後、現在の自分はこうです、と今の状態と地点について語り、その地点から改めて過去を俯瞰してみようとする。後半のセットでは、曲紹介の都度80年代、90年代(の作品であること)を強調していたが、年を重ねること、そこで語られたことを今ここで語ること、その意味を踏みしめながら歌っているようだった。 そしてこれはあくまでThe Theとしての文脈でしかなくて、今世紀に入って活動を止めて以降も、ドキュメンタリー映画”The Inertia Variations” (2017)やRadio Cinéola Trilogyのボックスセットやバイオグラフィーのリリースなど、Matt Johnson自身はずっと手は休めていなかったのですごいわ、しかない。

ばしゃばしゃの酷い雨と地下鉄で遅れて会場に着いたのが20:10で、20:15きっかりに始まるとあったのに会場のまわりをぐるーっと一周回されて中に入れた時には始まっていた。ばかばかばか。

“Ensoulment”からの曲は重心の重いミドルテンポのブルースで、魂 - ソウルを獲得すること、というテーマに沿った12曲はそれ丸ごとで1曲になっているような、ここ数年間で身近な肉親の死を見てきた彼がその境界も含め丸ごと何かをこちら側に手繰り寄せるような磁場と強さに満ちたものだった。改めてちゃんと聴かないと。

ところで、今回ヨーロッパ・ツアーの途中でドラムスがEarl HarvinからChris Whittenに替わった。つまり、今回のリズム隊はJames Eller - Chris Whittenという、Julian Copeの”Saint Julian” (1987)の時のふたりで、これの来日公演の時にも見ているはずで、要は80年代の手数が多くエッジがきいてばしん、とくるリズムをやらせたらこのふたりはすごいの。 "The Whole of the Moon"のあのドラムスもこの人ね。

ライティングは、モザイク状のぼんやりした影と光の粒が人影やダンサーや星条旗を形づくっては流れて消えていく。派手さはないものの”Ensoulment”というテーマには見事に嵌っている。

第二部は”Infected” (1986)から始まる。 自分のThe Theとの出会いもここからで、当時Peter Barakanさんがすばらしい才能が現れました、って興奮気味に語りながらPVを紹介したのを思いだす。

選曲は先に書いたように80’s、90’sの時代や枠を意識しつつ、自分でマイクを握って前の方にでて一緒に歌おう、をずっとやっていた。”The Comeback Special”の時の静かな大波で圧してなぎ倒していくかんじではなく、押しては引いてを繰り返し、引きずりこんでいくような。 個人的には”Dusk” (1993)からの曲 - ”Love is Stronger than Death”や”Slow Emotion Replay”がとてもしみた。”Dusk”と”Ensoulment”の視座や質感は、どこか似ている気もする。

バンドの音も見事によくて、”Uncertain Smile”でのDC Collardのソロなんて、BowieにとってのMike Garsonくらいの位置にあるのではないか。それに絡みついて離れていかないBarrie Cadoganのギターと。

今やスタンダードになってしまった感のある“This is the Day”も”Lonely Planet” - 前世紀末にこれらの曲がこんなふうに迎えられるなんて誰が想像しただろう? - は言うまでもないのだが、アンコールの最後に演奏された”GIANT”の暴力的と言ってよいくらいのカラフルな奔放さが見事だった。こんな曲だったのかー、って。 この辺から次に繋がっていくのだろうか。

あとはー、"Sweet Bird of Truth" – 1986年アメリカのリビア爆撃を材に、湾岸戦争を予言していたこのテーマが未だに生々しく響いてくることの真っ暗な絶望ときたら… もう本当にやめて。


それにしても、抗生物質のばかやろうー

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