10.05.2024

[film] Yield to the Night (1956)

9月28日、土曜日の午後、BFI Southbankの”Martin Scorsese Selects…”の特集で見ました。

こちらを見つめるDiana Dorsのスチールが1995年のThe Smiths “Singles”のジャケットに使われている。(どこかでだれかThe Smiths/Morrisseyのジャケットに使われた映画特集、をやらないだろうか)

監督はJ. Lee Thompson。原作は1954年のJoan Henryによる同名小説で、彼女は後にJ. Lee Thompsonと結婚している。USでの公開タイトルは” Blonde Sinner”、日本では公開されていない?

冒頭、女性がトラファルガー広場からベルグレービアの方に歩いていって、ある家の前で止まって、そこにやってきた女性に銃を向けて何発も撃って、という場面から刑務所のようなところに勾留されている主人公のMaryHilton (Diana Dors)の日々の描写に移って、ひとり牢屋に入れられているのではなく常に彼女を監視してタバコや食事や休憩時の面倒を見たり相手をする女性が複数いて、なんで彼女がそのような特別扱いをされているのかというと、カレンダーに付けられたマークから彼女が極刑を受ける可能性のある囚人だから、というのがわかる。

この監視下、最終審判が下されるのを待っている時間と並行して、香水屋(デパートの香水コーナーか)の店員だった彼女が、客としてやってきたピアノ弾きのJim (Michael Craig)と仲良くなって彼とずっと一緒にいたいと願ったのに彼は別の裕福な女性のところにばかり行って振り回されるようになって、やがてその女性への殺意が生まれて、という経緯が語られるのと、彼女のところに訪ねてくる元夫のFred (Harry Locke)とか、母と弟とか、でもどれだけ周囲が近寄ってきて構ってもらっても彼女の内側の虚無は消えず変わらず、所長らしき女性が執行を言い渡しに来た時も特に反応しなくて、カミュの「異邦人」のような不条理劇のようにも見える。

Maryが獄中で誰とも語らずに見ている壁や読んでいる本、黙って一点を見つめる目、監視人たちのトランプや聞こえてくる無駄話、そうやって静かに過ぎていく時間と無表情の描写/対比が見事で、刑の執行が確定した時の静かな揺れも。

当時実在して死刑(英国で最後の女性の死刑執行)となったRuth Ellisのケースとの類似が指摘されるが脚本が書かれたのはこの件の前だったそう。

あと、タイトルはホメロスのイーリアスにある”But night is already at hand: it is well to yield to the night”からきている、と。


The Pumpkin Eater (1964)

9月27日、金曜日の晩、上と同じ特集で見ました。
前回駐在した時にも見ていたがもう一回見たくて。

監督はJack Clayton、原作はPenelope Mortimerの62年の同名小説、脚本はHarold Pinter、音楽はGeorges Delerue。邦題は『女が愛情に渇くとき』 - オトコが考えたクソ邦題。

これも↑と同様、男性によってなにかを壊されてしまった女性の話。

Jo (Anne Bancroft) は家にひとりで佇んでいて、車で出かける夫にもうわの空で、そうして壊れてしまった彼女の姿や行動と、既に子供が沢山いる状態で自宅に遊びにきた脚本家のJake (Peter Finch)に近寄られて結婚し、賑やかな家庭を.. と思ったらそんな環境がまるごと彼女を苦しめていったこと、特に望んでいなかった妊娠やJakeの浮気の兆候 - 家族の友人だったBob (James Mason)から彼の妻をとられたと騒がれたりの経緯が交互に順番にフラッシュバックされていく。

彼女の張りついたような表情、機械のように見える動作、無邪気な、でも時折心配そうになる子供たち、態度と表情を二転三転させる夫(たち - 過去のも含めて)、なにが彼女をそんなふうにしてしまったのか? いつも賑やかで騒がしい市場のような家、誰もいないがらんとした家、丘の上の風車小屋の描写 - Jack Claytonはこういうランドスケープ的な怖さを撮らせたらほんとすごい - も含めて、なにが彼女をあんなふうにしてしまったのか、簡単にはわからない。けど彼女がひとり勝手におかしくなってしまったわけではない、そこに欺瞞のような気持ちよくない何かがあることはわかる。その描出のしかたは - このテーマに関しては例えばベルイマンよりもすごいと思う。

Anne Bancroftがとにかくすばらしいからー。


夕方BFIに行こうと思っていたのに会議で潰されて、もともと体調ひどくて難しかったとはいえしょんぼりしていたのだが、23時からBBC FourでThe Undertonesの83年のライブをやっていて少し元気がでた。Feargal Sharkey、あんな歌い方をする人だったのかー。よいなー。

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