10月12日、土曜日の晩、Prince Charles Cinemaで見ました。 なぜかドキュメンタリーばかりを見ているLFFの3本め。
Pauline Blackと彼女がヴォーカルをとっていたThe Selecterと、彼らがいた2-Toneレーベルのお話し。Pauline Black本人がWriterとして関わっている。
この(どの?)周辺では、フィクション、ドキュメンタリー含めて結構いろいろ見てきた - “Babylon”(1980) - “Rudeboy: The Story of Trojan Records” (2018) - “Lovers Rock” (2020) - “Poly Styrene: I Am A Cliché”(2021) – もっとあったはずだけど出てこない.. – と思っていたが、まだこんなのが。そしてこれは、当初思っていた以上にとても重いやつだった。
1953年にエセックスで生まれて、生みの母親(白人)はそのまま彼女を手放したので、白人ユダヤ系の両親のもとで里子として育てられ、家庭内でも外でも肌の色による違い、差別や虐待と沢山の何故?をひとり内面に抱えこんで大きくなった彼女がコベントリーでSelecter/2-Toneと出会って、経済的成功と共に自分を受けいれ、解放する術を学んでいく - というか、あの時の自分に起こったのはこういうことだったのか、と気づいていく。彼女が音楽やバンドと出会わなかったら、成功しなかったら、等を考えるとものすごく残酷だし恐ろしい話だと思って、Ernest Coleのドキュメンタリーと併せて、あとどれだけこういうのが.. いや、ドキュメンタリーやルポルタージュを見なくたって読まなくたってまずあるのだし、いまだに苦しんでいる人たちはいくらでもいるのだし、それらに敏感にあらねば、と思う。
そして、これだけ過酷な幼年期を経ての、あの跳ね回るヴォーカルだったのか、と。
あと、80年にMichael Putlandによって撮られた有名なTea Party - Viv Albertine, Chrissie Hynde, Siouxsie Sioux,Poly StyreneとPauline Blackが一堂に会した写真、あそこでもPolyとPaulineだけは居心地の悪そうな表情、佇まいを隠せず、”Punk”としてカテゴライズされた女性たちの間であってもなお... とか。
そして最後の方で(調査の結果)明らかになる彼女の生みの父の正体とは…. なんだそれ.. になったり。
上映後のPauline BlackとのQ&A、すばらしい人だった。もうじき71歳になられるそうだが最初にThe Selecterを聴いたときに感じたしなやかな強さはそのままに。
どうでもよいことだけど、2-Toneはカラフルなニューロマンティックスに駆逐されたのだ、というのになるほどお!とか。(今更)
あと、今回のドキュメンタリー用にNeol DaviesとJerry Dammersにはインタビューを何度もオファーしたのに完全無視だったと。 「これだからオトコは...」ってさばさばしていたけど。
Dahomey (2024)
同じ10月12日、上の前にBFI Southbankで見ました。これもLFF(2つめ)の。
これもドキュメンタリー(一部フィクション要素あり)で、監督はMati Diop。今年のベルリンで金熊を受賞している。 68分しかないエッセイのような作品だがものすごく深い。
現在のベナン共和国がダホメ王国だった頃(1600–1904)、フランスの植民地支配時代(1872–1960)に持ち去られてフランスの博物館に収蔵されていた彫刻など26点が2021年、マクロン政権の施策で現地に返還されることになった。(同様の返還活動は英国でもあった)
フランス側で美術品が梱包され、ベナン側でそれが解かれる、そこに梱包される美術品 – 収蔵品番号26の低く深い声が略奪され長いこと陳列されていたモノの声 – 決して聞かれることがなかった者、かつては王だった者の声で帰還への思いを語り始める。 これは単に戻します – 戻りました – よかったね、で終わって許される話ではない、と。国のアイデンティティの根幹にあったシンボルが奪われ、それが戻される、それらが支配国によって為される。 これってどういうことなのか?なぜ今なのか?
戻った先のベナンでは返還の式典に合わせて学生たちによるディスカッションが行われている。今回の26点で全てではない、そしてベナンだけの話ではない、なぜ? いろんな疑問が湧いてくるが、美術品についての話だけではないのでは。 ヨーロッパでの移民の扱いや位置付けが変わったことやディアスポラの帰国の行動とリンクしたものではないのか、これが意味するところはいったい何? 結局宗主国側の都合なんじゃないの? など。
最後の方では、”Atlantique” (2019)にも出てきた、夢のなかのような夜の街と海の光景が現れる。
夜の海とモダンな建造物と、そのなかを夢のように幽霊のように彷徨って、Atlantiqueの海に出ていった人々。彼らも還ってきたのか、これから還ってくるのだろうか?
そして勿論、どうやったって昔とまったく同じ状態に戻ることはできない。ここから何が始まるのか? 力による搾取や支配はもうやめようよね。
10.18.2024
[film] Pauline Black: A 2-Tone Story (2024)
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