10月12日、土曜日のマチネをNational TheatreのLyttelton theatreで見ました。
作・演出はAlexander Zeldin、”Antigone”を下敷きにした新作。 休憩なし、とてつもない緊張感に貫かれた約80分。
リフォームしたばかりのChris (Tobias Menzies)の家のぴかぴかのリビングが舞台で、Chrisの他に優しそうな妻Erica (Nina Sosanya)とティーンくらいの息子がいる。あとなにかとあがりこんでいろんなことに顔を突っ込んでくるうざい隣人のTerry (Jerry Killick)とか。リビングの大きな吹き抜けバルコニーから外の庭に出ることができて、そこに一緒に暮らしているChrisの姪Issy (Alison Oliver)がおとなしくお行儀よく、でもやや居心地が悪く落ち着きなさそうにしていると、彼女の待っていたらしい電話がきて、連絡がとれずに放浪していた姉のAnnie (Emma D’Arcy)が漸くやってくるという。それを受けたChrisたち一家はざわざわし始める。
彼女が現れるとChrisの一家は気遣いまみれのぎこちない挨拶〜やりとりをして、放浪して音信不通だったAnnieの言動、挙動、それを受けとめる家族側の反応を通して彼女は精神を病んでいる/病んでいた - その原因がこの家、この(or 彼女の)家族の過去に起こったことに起因している、というのが会話の端々からわかってくる。
謎解きものではないので書いてしまうと、Annieの父はこの家の庭にあった木で首を吊って自殺した - 家を継いだ弟のChrisは家をリフォームして、兄の遺品 - ベランダの脇に纏めて積んである - を処分してやり直そうとしている。
そこに戻ってきたAnnieは父の遺灰を撒いて一連の過去を終わらせようとするChrisに対峙し、なんでそんな勝手なことをするのか/自分たちにとっては父なのに、と怒りをぶつけ、Chrisはこの件で自分たちはもう十分悩んで苦しんできた、これで終わりにして再出発しなければ、というのだがー。
それだけならば/それだけがChrisとAnnieの確執の根にあるのであればそんな拗れるほどのことでもないのでは、と思うのだが、これはアンティゴネーの、オイディプースの娘の話なので環境をリセットしたくらいで簡単には終わらせてくれない。関係を断ち切るためにはどうすればよいのか? それを可能にする”The Other Place”なんてどこにどうやったらありうるというのかー?
古典を現代劇として甦らせるには、というよりも、(例えば)現代の家族のありようにもこういう形で根を張らせることができる(張ってしまっている)のが古典の古典たる由来なのだろうな、と。それがどうしても特定の父性や男性性を浮きあがらせる方に傾いてしまうのはしょうがないことなのだろうか。
そう、AnnieだけでなくあまりクローズアップされないIssyもEricaも犠牲者として柔らかく首を絞められたり巻かれたり、陰で苦しんだり泣いたりしている姿が描かれるし想像できるし。
というか、古典云々なしでもこんな話、そこらじゅうに転がっていそうで、モダンな外装に包まれて見えなくなっていそうなそっちの方が十分に怖いかも。ギリシャ神話どころか日本の郊外や田舎にもふつうにありそうな話だし。
あと、短めの演目とは言え毎日これをあのテンションで演じている役者さん達もすごい。プログラムを見るとIntimacy Coordinatorもアサインされていた。
10.20.2024
[theatre] The Other Place
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