10.11.2024

[theatre] A Face in the Crowd

10月5日、土曜日のマチネのをYoung Vicで見ました。

Elvis Costelloが音楽(詞も)を担当しているミュージカルで、こないだの彼のライブでも若者たちががんばっているので、見にいってくれよな、と言って主題歌を歌ってくれたので見る。タイトルの一曲だけじゃなくて、ミュージカルで流れるいろんな音楽 - 広告のジングルみたいのまで - を全部彼が書いているのだとしたらすごい、って思った。ステージ右端のバンドは菅を含めて6名。

おおもとは1957年のElia Kazanによる同名映画 – 邦題『群衆の中の一つの顔』で、その原作は脚本を書いたBudd Schulbergの短編"Your Arkansas Traveler"。 舞台の脚本はSarah Ruhl、演出はKwame Kwei-Armah。

アーカンソーのローカルラジオ局でレポーターをしているMarcia (Anoushka Lucas)は町にネタ探しにいった時に拘置所の前で寝ていたLarry “Lonesome” Rhodes (Ramin Karimloo)に出会って、彼の喋りとその場で歌ってくれたのをおもしろいと思ったので、自分の番組に呼んで好きに語らせてみたら、リスナーから「よく言ってくれた!」~「ありがとう!」のような反響がすごくて、あっという間に人気番組の人気者となり、やがてシカゴのTV局から声が掛かる。

それなら行ってみようか、とシカゴに赴いたMarciaとLarryの前にはTV局が用意したライターやスポンサー達がみっしりいて、ふたりで好きにやっていた頃とは遠くて制約だらけでおかしい、と思った時には遅くて、でも人の好いLarry “Lonesome” Rhodesはうまく機転をきかせたりして、お茶の間のヒーローになっていく。

Elvis Costelloの主題歌は、君が疲弊して”only a face in the crowd”だと思っていても、ぼくは傍にいるし助けるし、”You're more than a face in the crowd”なんだ、と歌って、更に、君は強くなれるしプライドも立て直すこともできる ~ 僕の手をとって、もし君が”more than a face in the crowd”だと信じさえすればー♪ と歌う。歌詞としては”I Wanna Be Loved”の反対側にあるような曲で、Costelloとしてはあんまり”らしく”ない曲で、ちょっと曲のかんじも含めて弱いかなあ。

やがてLarryの大衆のこころを鷲掴む力に目をつけたスポンサーの薬屋が精力剤”Vitajex”の宣伝に引っぱりだし、更に政治家が自分の選挙のキャンペーンに彼をもちだして、そのキャンペーンガールのBetty (Emily Florence)と結婚する - これもまた宣伝戦略 - ことになったり、それに伴いぐいぐい良くなっていく自分の待遇にテングになっていく彼と、反対に自分ひとりではどうすることもできなくなったMarciaは彼から離れることにして。

このミュージカルのなかの主題歌の使われ方を見ると、政治家にいいように使われているLarryの、薄っぺらいキャンペーンソングにしか聞こえなくなるのと、Marciaに去られた後の彼が最後にどうなってしまうのか、あまりにわかりやすく単純化されていて先が見え見えで、これが50年代の映画ならわかるけど、トランプの時代にこんなの見せられてもどうしろというのか。(一部の観客には小さい星条旗が配られてて、選挙キャンペーンのシーンの盛りあがりを示すのに振るように煽られたので振った。旗振ったの初めて)

SNSやYouTubeの時代のメッセージとしては”A Face in the Crowd”みたいなわかりやすいメッセージには気をつけろ、しかないと思うのだが、その部分がまったくないので、Larryも根はよい人なんだけどねえ … で終わってしまう。それは極右の差別主義者に話がおもしろくてよい人だから、って近づいていくのと同じでだめなんだよ - ってCostello先生だったらここで”Watch Your Step”をー。

“A Face in the Crowd”がLarryと大衆の間ではなく主演のふたりの間で啓示のように鳴り渡る瞬間があれば.. とも思ったけどそれもなく。でもふたり - Anoushka LucasとRamin Karimloo - は歌もうまくて一緒にいる姿がとても素敵だったのでよいかー、と。

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