9月29日、日曜日の午後、Barbican Cinemaで見ました。
英国の天気予報を見ていると、スコットランドの北の端の方って、いつも気温が低いし天気が荒れてて悪そうだし、でもそこで暮らしている人たちもいるんだよねえ、っていつも想像して感心してをするのだが、タイトルの”The Outrun”はスコットランドのOrkney islandsの海沿いの農地のことを指す、のだそう。
原作はベストセラーになったAmy Liptrotの同名のメモワール(2016)で、彼女は脚本にも参加している。監督は(つい最近日本でも公開された、ときいた)”System Crasher” (2019)のNora Fingscheidt。ドイツとイギリスの共同制作。 主演のSaoirse Ronanと夫のJack Lowdenもプロデュースに加わっている。
物語はRona (Saoirse Ronan)の語りに沿って、時間軸はランダムに行き来していく。冒頭はOrkney islandsの寒そうな海の描写で、海で死んだ漁師はアザラシになる、という伝説 – などが紹介され、やややつれた顔と格好でその海岸沿いを歩いていくRonaが父親の農場を手伝って羊の世話をしたり、別居している(後で父の双極性障害が原因とわかる)信心深い母親と会ったり、そこからロンドンで生物学の大学院の生徒だった頃の彼女に替わり、パーティ三昧と乱れた生活でアル中と鬱病になり、面倒を起こすたびにやさしいBFのDaynin(Paapa Essiedu)がケアしてくれていたのだが、彼もそのうち愛想がつきていなくなり、それで更にやけになって襲われそうになって、これは自分でも相当やばいと思ってリハビリ施設のセラピーセッションに参加したりの姿が描かれる。
Orkneyに戻って手伝いとかをしていって、でもそのうちロンドンに戻る、という計画もたてるのだが、フェリーの船中で酒に手をだしたくなって、これはだめだ、って船を飛びだして島に戻り、諸島のなかでも更に僻地のPapa Westrayという島で、RSPB (Royal Society for the Protection of Birds)のボランティアとして、corncrake(和名:ウズラクイナ – 鶉食いな?)っていう絶滅危惧鳥の保護活動をしつつ、島の人たちのなかに入っていったり。
要約すればセルフ・リハビリの記録で、だめになった環境から自分をひっぺがして僻地でひとりになった、その過程で近しい人たちもみんな傷ついたり過去にいろいろあったことを知っていく、というだけの話なのだが、彼女がひとりで海辺を歩いて風に吹かれているところ、粗末なコテージでひとりになったところ、ひとりであるのってこういうことなんだ、と彼女が思い知るその描写と、その反対側でパーティで酒浸りの日々の荒れっぷり - ”System Crasher”の監督なので容赦なくぶちかましてすごい – があり、全体としては傷だらけのSaoirse Ronanのひとり舞台で、おそるべし、しかないのだった。 Ian McEwan原作の”On Chesil Beach” (2017)などでも、海を歩いていく姿が絵になるひと。
ただ、全体として絵になっていることは確かなのだが、酔っ払って暴発する癇癪とかエモと、この状態は絶対よくないのでなんとかしないと、という焦りにまみれたエモと、こんななんもない田舎だけど、アザラシしか応えてくれないけど、いいや、っていうエモがうまくひとつの像に繋がっていかなくて、それを力技で絵にしてしまうのはSaoirse Ronanの演技の力(と背景のOrkneyの海)でしかないのがー。
最後に姿は見えないものの、そのカエルみたいな変な鳴き声を聞くことができるcorncrakeとか、吠えると吠え返してくる(ほんとかな?)アザラシとか、Orkney islands行きたい、になる。いつがよいのか? 冬だと厳しすぎるか、でも夏だとつまんないか… とか。
で、ウズラクイナの声とRonaの笑い声であーよかったねえ、になったところで、The Theの”This is the Day”がエンドロール中にフルで流れるの。 前日の”Megalopolis”のエンディングに続いてだし、翌々日に彼らのライブを控えていたところだったので、なんだこれは? ってひとり勝手に。
10.09.2024
[film] The Outrun (2024)
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