10.15.2024

[film] Lee (2023)

10月6日、日曜日の夕方、Curzon Aldgateで見ました。写真家 Lee Millerの評伝ドラマ。

監督は撮影出身でこれが長編デビューとなるEllen Kuras、原作はAntony Penroseによる評伝”The Lives of Lee Miller” – こないだまで書店にサイン本が積んであった。

制作はSkyで、TVドラマのやや豪華版のようなのかと思っていたらゲストも何気にすごいし見応えもあるし。 音楽はAlexandre Desplat – 今回はやや弱いか。

Lee Millerって、昔はMan Rayの写真のモデル、くらいの認識しかなかったのだが、こちらに来てみると、写真家としての彼女の方がよく知られている。特に戦時下のロンドンを撮った写真集は新刊でも古本でも沢山でていて、それらの写真は未だに生々しくて、とても近い。

第二次大戦前夜、それまでVogueのモデルとして活躍して写真は少し、くらいのLee Miller (Kate Winslet)は、ボヘミアンとして南仏で友人たちと楽しく遊んでいた(飲んで、セックスして、写真を撮る日々)のだが、戦争になって、その頃知り合ったアーティストのRoland (Alexander Skarsgård)と恋におちて、その関わりのなか、なにかに追いたてられるように戦争をテーマに撮っていくことにする。

ずっとモデルとしていろんな写真を撮られてきて、撮られる側、見られる側の立場や弱さ危うさを十分にわかっている彼女が、戦争の悲惨や辛苦を前にしたりもろ被りしたりしている女性たちを見てなにかを感じとり、自分の目を通して撮って伝えるのだ、と前線に向かうのは十分な説得力があり、そのぶれない目線や記憶を補うかのように若いジャーナリストのような男(Josh O’Connor)- 最後に正体が明かされる - が晩年の彼女と一緒に当時の写真を見たりしながらインタビューしていく映像が挟まれていく。

まずは当時のUK Vogueの編集長Audrey Withers(Andrea Riseborough)に戦場に行って写真を撮ることをかけあって、横でそれを聞いてへらへら笑っているCecil Beaton (Samuel Barnett) – まああんなかんじだったんだろうなー - を無視して、でも前線に向かおうとしたら英国軍は女性カメラマンが赴くのを許していなくて、そうだわたしはアメリカのパスポートがあるんだった、ってアメリカ軍のジャーナリストとしてヨーロッパに渡り、Life誌のカメラマンDavid (Andy Samberg)と一緒に戦地を渡っていって危険な目にも遭う。 

Paul Éluard (Vincent Colombe)の詩 - “Liberte”を書いたビラが降ってきてパリ解放を知るが、戦争はまだ終わっていないという予感と人々が消えた..という噂を聞いて、ドイツの収容所の方に向かう。ここでの凄惨な写真たちは、Webにもあるだろうから見てほしいのだが、彼らはダッハウでの強制収容所の惨さを最初に目撃したジャーナリストたちで、彼女はまだ30代だった。

言葉を奪われてしまう経験、であることはよくわかるが、それ以上に彼女を激昂させたのが、前線で撮った写真を掲載しなかったUK Vogueの姿勢だったというのはなんとも(その後、US Vogueは掲載した)。戦場での扱い - 女はこんなところにくるな、も含めて充満する理不尽さに翻弄されつつもいろんな怒りを起爆剤に歩んでいった彼女の苛立ちと強さをKate Winsletは見事に表現していて(ポスターでこちらを真っ直ぐ見据える彼女を見よ)、くっきりとしたLee Millerの像を描き出すことに成功していると思った。

南仏時代の仲良しとしてFrench Vogueの編集者Solange d'AyenをMarion Cotillardが、Paul Éluardの妻Nusch ÉluardをNoémie Merlantが演じていて、この3人のやりとりをもっと見ていたかったかも。

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