12.24.2024

[film] Queer (2024)

12月15日の午後、Curzon Bloomsburyで見ました。Wallace & Gromitのあとに「おかま」を見る。

監督はLuca Guadagnino、William S. Burroughsの同名小説(1985)をJustin Kuritzkes(”Challengers” (2024)の脚本もこの人)が脚色している。音楽も(”Challengers”と同様)Trent ReznorとAtticus Ross組。 英国では18禁指定。

やはり一番の話題はDaniel Craigが「おかま」のWilliam Leeをやる、ということで、でも本人がプロモーションのフロントに立っていろんなところに顔を出していたので、彼自身がやりたかった役なのだと思う。

1950年代 – 戦後のメキシコで、アメリカ人のWilliam Lee (Daniel Craig)がなにかの駐在員のようなふうで日々をふらふら過ごしていて、最初は彼の主に酒場とそこでの出会いを中心とした日々がどんなふうか、を追っていくだけ。

Daniel CraigがかつてJames Bondとして寄ってくるどんな敵でもどんな女でも落としてみせる(←前世紀の仕草) 強い男として、それがその人を輝かせる魅力となる時代を生きた人であることは誰もが知っていることだと思うのだが、ここでのBondじゃないLeeは好みの男Eugene (Drew Starkey)を見つける(狩る目の強さは変わらず)なり寄っていって、でも力強く仕留めるというよりは、見つめられたらあたふたおろおろシナをつくってしゃなりとお辞儀してしまう、テーブルで向かい合っても妄想(の腕が生えて)で相手の顔をなでなでするだけで精一杯、のようなそんな情けない男 – 80年代当時の表現では「おかま」野郎として日々をカゲロウのよう薄く生きていて、それでも構わないかんじ。

どうにかEugeneに顔と名前を憶えてもらって、一緒に飲んだり部屋に入ってもらったりキスとかできるようになるまでで喜ばしくてそれで充分かと思ったら、おどおどとテレパシーを可能にすると言われる植物yagéを探しに南米の方に一緒にいかないか、って誘ってみて、後半はふたりでジャングルの奥に分け入っていく「地獄の黙示録」展開になるかと思いきやそこに王国らしきものも植物もなくてものすごく怖い思いをして泣きながら帰るの。でも地が空っぽのへなへななのであんましこたえないの – ちょっと泣いたりしてみせるくらいで。

そんな彼と対照的なのが後半に登場するジャングルで原住民のように暮らす植物学者Dr. Cotter (Lesley Manville)の - 最初は誰だかわかんなかったわ - 強烈さ。山姥とか鬼婆とか、昔の邦画だったら千石規子あたりがやっていたようなものすごいあくの強い演技でしばらくぼーっと見てしまった。

でも全体のトーンは軽め粗めに仕あげてあって、”Challengers”のリズミカルにバトルに向かっていく軽快なトーンとはぜんぜん違うものになっているところがおもしろい。テレパシーを極めてずっと繋がっていたいと言いながら実はぜんぜん別のことをやっている/やってしまうウロボロスな変態の哀しい性みたいなのが滲んでくる。

あと、なんだかんだ言ってもやってもDaniel Craigが真ん中にくるDaniel Craigの映画なので、どうしてもここでのクィアは「Daniel Craigの」クィアネス、のようになってしまうのはしょうがないのか。もうちょっとあのおじいさんが言っていた変態性みたいのにフォーカスしてもよかったような。

音楽は担当ふたりの本領もろ、のようにがさごそじゃらじゃらしたオリジナル以上に挿入歌もよくて、最初にSinéad O’Connorによる”All Apologies”が流れ、Nirvanaの”Come as You Are”(他に”Marigold”も - Nirvana多用はCurt CobainとWilliam S. Burroughsの関係を意識しているのか)、New Orderの”Leave Me Alone”、Princeの”Musicology”とか。

あと、後で知ったのだが、オリジナルの”Vaster than Empires"ではTrent ReznorとCaetano Velosoの競演なんて、自分としてはとんでもないことが実現していたり…

あと、”Emilia Pérez” (2024)の時にも思ったけど、メキシコの描写の薄っぺらなかんじはあれでよいのか。
”The Sheltering Sky” (1990)みたいなのにならないかしら… って思ったのだが。

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