12.03.2024

[film] The Brutalist (2024)

11月30日、土曜日の昼、BFI Southbankで見ました。

日本から戻った翌日で、チケットはずっとSold Outしてて、朝にオンラインで少しは出るかと思ったがぜんぜんその気配がないので、BFIで並ぶことにして、11時20分くらいに着いたらゲストリスト(previewだからか)とキャンセル待ちの列がものすごくて、開始の12時になっても列があまり動かなくて、ほぼ諦めたのだが、なんでか入れた。しかも3列目の真ん中くらいで。

監督、制作、共同脚本はBrady Corbet、なかなか見事にやかましい音楽はDaniel Blumberg - Yuckにいた人か。
3時間35分で、上映は70mmフィルム、途中で15分の休憩が入る。撮影はVistaVisionをフルで使って、アメリカ映画でこれをやったのは63年ぶり、とIMDBにはあった。

2部構成にプロローグとエピローグ。タイトルやエンドロール(←斜めに流れる)はどう見てもバウハウス仕様でかっこよい。ベネチアでプレミアされて、銀獅子を受賞している。

超大作のかんじはそんなになくて、印象としてはPTAのそれに近い - 陰影とかカメラへの執着とかも。 あと、70年代頃にスピルバーグやスコセッシが撮っていた「大作」のかんじも少しあるか。

1947年、ブタペストのLászló Tóth (Adrien Brody)がホロコーストを生き延びて戦後の混乱のなか船でどうにか海を渡ってアメリカ合衆国につく - そこで目に入ってきた倒立した自由の女神のイメージ。 そこからフィラデルフィアに渡って、家具屋をしている従兄弟のところに世話になっていると、富豪のVan Buren(Guy Pearce)の息子Harry(Joe Alwyn)から自邸の書斎のリフォームを任され、腕をふるってすごいのを作ったら – あああんな本棚があったらなあ!の世界 - Van Burenが勝手になんてことするんだ!って怒鳴りこんできて、材料代とか払わんから、て言われて従兄弟のところにはいられなくなる。 のだがVan Burenはあとで謝ってきて、彼の家に暮らして彼の依頼で建築の仕事をやっていくことになる – ここまできてLászlóがバウハウス - デッサウ出の建築家であることが明かされる。

第一部はこうして合衆国で後ろ盾を得て建築家として認められのしあがっていく - 反対側で酒やドラッグで擦り切れはじめるLászlóの姿が描かれて、第二部は冒頭で現地に置き去りにされていた妻Erzsébet (Felicity Jones) – 車椅子 - と姪のZsófia(Raffey Cassidy) – ほぼ喋らない - がやってきて一緒に暮らし始めるのだが、なんでか仕事でも社交でも社会的、文化的な衝突やそれに伴うパニックがあちこちで起こって、なにひとつ休まらないし、寧ろ混沌や困惑が飽和状態になっていって…

移民が現地民の求めに応じて自分の意匠で現地の建物を作っていく際に想定されそうな苦労や軋轢がぜんぶでてきて、それでもというかそれだからこそ、なのか彼の建築は自然に抗うBrutalな異物として強く根を張って屹立して、その威容がアメリカにどうやって浸透していくのか。いつものようにAdrien Brodyの演技がすごすぎるので苦労した(アメリカ人からすれば成功した)移民のお話しに見られてしまうかもだが、これはやはり「アメリカ」のお話しなのではないか。 アメリカの富豪や成金が何でできていて、どんなふうに戦後を渡って乗り越えてその結果として「野蛮な」アメリカのランドスケープを作っていったのか、についての。ブタペストもホロコーストも、そもそも割とどうでもよかったのではないか、とか。

3時間半はちっとも長く感じなくて、それは地を這っていく彼らの生がきちんとそこにあるから、というか。撮影のLol Crawleyがすごいのかも。

本棚とか書斎に興味があるひとは前半パートだけでも見るべし。

これ、Wes Andersonが取りあげてもおかしくなさそうな人とテーマだと思うのだが、彼が撮ったらどんなふうになったか、想像してみるのも楽しいかも。

あと、最後に”Dedicated to the memory of Scott Walker” って。もう一回見たくなった。

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