BFI Southbankで先月からやっている特集 - “Echoes in Time: Korean Films of the Golden Age and New Cinema”からあれこれちょこちょこ見ているのだが、ちゃんと感想を書くことができていない。この特集、2023年にNYのLincoln Centerであった特集”Korean Cinema’s Golden Decade: The 1960s”- (ぜんぶ未見)と被っているのも多くあるのだが、そうでもないのもあって、NYのほうのリストにあった怪獣映画がないのがちょっとかなしい。
Goryeojang (1963)
12月2日、月曜日の晩に見ました。作・監督・制作はキム・ギヨン。邦題は『高麗葬』。リストア版。
貧しい山間の村に男の子を連れた女性が、その子を養うために後妻としてやってきて、でもそこには既に少年の異母兄たちが10人くらい – 太っているのもいるので本当に飢えていたのか? いっぱい群れてて、村の巫女がこの子は村を滅ぼすだろう、などと予言したので男の子は蛇に噛まれて足に障害を負うことになり、時が流れて彼が大人になっても彼らに対する吊るしあげと虐めの構図は変わらなくて、最後には雨乞いをすべく彼が老いた母を背負って山奥に捨てにいって... という悲惨な姨捨山の話 – 鳥に食べられちゃうの - と、それに続く息子の凄惨な復讐劇が展開されて、どこまでも底抜けに酷くて暗い。当時の政治状況を反映した寓話のようなものらしいが、ここまで... 擦れてぜんぶ廃品のようなモノクロの画面がゴヤの暗い版画みたいで。
Christmas in August (1998)
12月4日、水曜日の晩にBFI Southbankで見ました。
邦題は『八月のクリスマス』(これが『8月のクリスマス』になるとこれをリメイクした邦画作品 – があるなんてことすら知らなかったわ - になる、と)。
Preston Sturgesの名作コメディ”Christmas in July”(1940) - だいすき - に関係あるのかと思ったら、ぜーんぜんないのね。
監督はこれがデビュー作となるHur Jin-ho。
30代でひとり町中の小さな写真屋をやっている男 - Jung-won (Han Suk-kyu)がいて、持ちこまれたフィルムのプリントをする他に店内のスタジオで近隣の人の家族写真や肖像写真も撮ったりしていて、結婚はしておらず、結婚している姉か妹も含めた家族と一緒に特に問題なく暮らしているように見える。
彼のところにくるいろんな客とのやりとりと、なかでも駐車違反の車を取り締まる女性警官Da-rim (Shim Eun-ha)との日々ゆっくり縮まっていく距離をゆるやかに追っていく。
途中で彼が具合悪そうになったり入院したりする場面があって、難病モノなのか、って身構えてしまったりもするのだが涙の洪水や雪崩は起こらず(起こさず)、日々の瞬間を淡々と切り取って像にする写真屋の仕事とその周りの柔らかめのエピソードを重ねていって、なんでこんなことがぁー?という悲嘆で染め抜くようなことにはならない。
真ん中のふたりのやり取りもどこまで行っても小学生みたいな雨宿りとか彼が何も告げずに病院に入ってしまった後も店に手紙を落としておくくらいでじれったくてしょうがないのだが、そういう日々を通して彼が何を見て想っていたのかが最後、彼の遺した手紙で明かされるとああー って(みんな泣いてた)。
クリスマスのいつまでも待ちきれないかんじとやってきた時の歓喜とずっと行ってほしくないかんじ、それは縁側でスイカの種をぶーっとかやっている時の夏のだらだらとはぜんぜん違うやつだったねえ、って。
いわゆる難病モノが嫌なのは、残された/残される人のためにすべてがセットアップされている押し売りの貧しさ、なのだが、この映画は他人事のような、他人の写真を撮っているかのようなしらじらしさが底にあるようでよかったかも。
12.11.2024
[film] Christmas in August
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