7月12日、日曜日の昼、K’s CinemaのEaling Studios特集で見ました。この特集で見た最後の1本となった。
邦題は『ラベンダー・モブ・ヒル』。1999年にBFIが実施した20世紀の偉大な英国フィルムのアンケートでは17位になっているそう。
原作はEaling Studioで多くの脚本を書いたT. E. B. Clarke、監督はCharles Crichton、音楽はGeorges Auric。
Henry "Dutch" Holland (Alec Guinness)がリオデジャネイロの豪華なリゾートホテルで豪勢におらおらって振るまっていて – なにしろAudrey Hepburn(カメオ)が挨拶にくる - イギリス人相手にいかにして自分はここまで来たのか、を得意げに語り始める…
ここから1年前、Dutchは真面目な銀行員で、昇進の話も頑なに拒むくらい毎日毎日金塊を積んだ車の輸送業務を担当して、銀行とLavender Hillの下宿屋との間を行ったり来たり、これを20年間ずっと続けてきて、でもあまりに頑なすぎたところで、金塊を盗むことができたら、みたいなことを考え始めたら止まらなくなり、そこに、新たな下宿人として、土産品を卸したり売ったりしているPendlebury (Stanley Holloway)が現れて、盗んだ金塊をお土産で売っているエッフェル塔のペーパーウェイトの形に鋳造してパリに輸送すれば足がつかないじゃん、て思いついて、ふたりで計画を立てて、そしたらDutchの異動の話が出てきてしまったので、少し早めに、強奪の実行時にはさらにふたりのちんぴらを雇い入れて実行して、Dutchは強盗にやられた被害者、ということになる。
全編を通して、なにかが計画通りにきっちり実行されることはなくて、必ず横から変な、想定していなかった邪魔や障害が入って当事者が(静かに)「きゃーー」って顔をゆがめて絶叫しそうになり、しかしその邪魔も、極めて英国的な合理/不合理によって処理され流されて、結果はどうにかなってしまって、全員が普通の平顔に戻る、というのを延々とやっている。(その反復にかける律儀な執念深さもまた、英国なのである)
とにかくふたりでフェイクのエッフェル塔を受けとるべくパリに行ったら、土産物屋のおばちゃんが、女子小学生に6個売ってしまったことがわかったふたりはきゃーって飛びあがり、女子小学生を追いかけてリアルエッフェル塔の天辺から一気に駆け下りて(ここのカメラがたのし)、彼女たちがカレーの港から英国に戻る船に乗り込もうとするのだが、出国手続きでいらつく(他人事とは…)ところもおかしい。
英国に戻った彼らは小学生ひとりひとりを追っかけて順番にエッフェル塔を取り戻していくのだが、ひとりだけ仲のよい警察官への贈り物にするから嫌だ、って拒否した娘がいて、そのブツはよりによって警察学校で開催されている展示会に持ちこまれて捜査方法の紹介で化学分析にかけられるところで…
あっと驚くような仕掛けもどんでんもないけど、偶然と成り行きばかりで転がっていって止まらない軽めの犯罪コメディで、動機もそこに込められた念にも深いところはなくて、すべてがまるで他人事のように(非情に)推移して、結果も誰もどうすることができず、だからどうした? になりがちなところなのに、こんなもんなんだよ、って軽く言って超然としている、それが戦後の、爆撃された瓦礫があちこちに残る町で起こるのがとっても趣深い。
底に流れる悪意、とまでは言わないどろどろ凝り固まった何か、みたいなのは“Kind Hearts and Coronets” (1949)とか”The Ladykillers” (1955) - 『マダムと泥棒』の方が渦を巻いていた気がして、Alec Guinnessはそっちの方ではないか、と思う。 この調子で自分が消えた後に、Lukeにもずっと、うるさいくらいにべらべら喋り続ければよかったのに。
7.21.2026
[film] The Lavender Hill Mob (1951)
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