7月2日、木曜日の晩、Tohoシネマズ日比谷で見ました。
ところで、“Merrily We Go to Hell” (1932)っていうDorothy Arznerによる素敵な映画があるのだが、やっぱり関係はなかった。
George S. KaufmanとMoss Hartによる同名戯曲(1934)をStephen SondheimとGeorge Furthがミュージカル化、1981年にブロードウェイで初演されたこの舞台の2023年のリバイバル版で、ベースは2012年、ロンドンのMenier Chocolate Factory(すごく小さいけどすてきなシアター)で上演されたバージョンだという。 トニー賞でBest Revival of a Musicalを受賞している。演出はMaria Friedman。
映画版の制作も進行中で2019年にRichard Linklaterによって撮影が開始され、劇で流れていく20年をまるごとかけて(編集で逆回転するのか?)撮影中 - できる頃にはしんでる - で、Paul Mescal, Ben Platt, Beanie Feldsteinが出演予定、だそう。
上演している劇の舞台をそのまま撮ったものだが、National Theatre Liveとは違うプロダクション、撮影はSam Levyで、クローズアップも含めてきちんと撮っているので、これはフィルム枠になるのだと思った。演劇のステージを撮る場合って、あまり寄らず動かずに全体を俯瞰できるようにしてほしいんだけど…(個人的な好み)
1976年、映画プロデューサーのFrank Shepard (Jonathan Groff)の公開初日の成功を祝うパーティの場から始まる。大勢の関係者、知り合いでざわざわしていて、みんなFrankのことをすごい、って褒め称えて、本人も楽しそうでご満悦なのだが、古くからの友人であるらしいMary Flynn (Lindsay Mendez)は片隅で飲んだくれて燻っていて、妻のGussieもFrankがお気に入りの新人女優のことでぶちきれていて、元は作曲家だったFrankのかつての共作者Charley Kringas (Daniel Radcliffe) のことに話題が及ぶと顔を曇らせて… ここから1973 → 1968 → 1967 → 1964 → 1962 → 1960 → 1959/58 - 最後は1957まで、年を区切って逆順に遡り、中心の3人を追っていく、という構成で、ふつう人は年を重ねると人間関係も懐も豊かになっていくもの、と言われているし、主人公のFrankの成功も栄華もそんな典型的なアメリカの成功物語のように見えるし、実際そうなんだろうな、って思う。
なのだが、この逆回転劇は彼が年を経て獲得した輝かしいなにか、とか、なんで一部変な空気だったのか、の謎解きをするというより、成功と引き換えるように彼らが失っていったもの、にフォーカスして忘れ物を積みあげていく。 ので、見ていて楽しくなっていくものではない。あの時なんであんなこと言っちゃったんだろう/やってしまったんだろう/もう戻すことはできないのか… などなど。 後ろ向きにくよくよするのが好きな(ではない。けどついついやってしまう)人にとって、スケールこそ段違いに異なるものの、いろいろ思うところがあった。そしてそれを彩るミュージカル・ナンバーは、ミュージカル・ナンバーとしての華に溢れたりしていて、同じナンバーでも時代によって違う調子に聞こえてきたり、そこでそれが鳴るのか… って振り返る徒労感も重なったり。
最後の1957年、3人が下宿屋で出会うシーンの眩くて、何かが始まりそうで走りだしたくなる雰囲気、これがクライマックスに来るのはわかるのだが、でもそれはもう二度と戻ることのできない、取り返すことのできない場所と時間で、失われていてどうすることができようか?の状態にぽつんと取り残されて終わる。
そもそもは「若いパフォーマーのための舞台」として構想されたそうで、これを受け取る年齢によって印象が変わってくるのだろうが、年寄りには結構しんどいやつかも。 あーあー、で終わっちゃうのだが。
あと、忘れる、ということについて思い出したり。これらを忘れることでこれまでどうにかやってこれたのだな、って気づいた。
あと、キャストのトライアングルのすばらしさ。Jonathan Groffのつるっとした反省しないアメリカンの典型のような顔形と容姿と歌声、Daniel Radcliffeの簡単に壊れて潰れそうな、でもしぶとい不機嫌な神経系、Lindsay Mendezのぶっとい蹴りだしと重心。そのままバンドを組めそうな3人のケミストリーがあるの。
7.07.2026
[film] Merrily We Roll Along (2025)
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