7月8日、水曜日の晩、シネマヴェーラのRobert Wise特集で見ました。この特集での最後の2本。
邦題は『月下の銃声』。 ゴスメタル系のアルバムタイトルにありそうな。
原作はLuke Shortによる小説”Gunman's Chance” (1941)をLillie Haywardが脚色している。
放浪のカウボーイJim Garry (Robert Mitchum)が友人のTate Riling (Robert Preston)に会いに行く途中で牛の大群に襲われて、近くの牧場主John Lufton (Tom Tully)のところに寄ったら彼の家族への手紙を託され、持って行ったらそこの娘2人に敵意をむきだしにされて、なんでだろう? と思っていたらRilingはインディアンの代理人と組んでLuftonの牛を買い叩いて土地から追い出そうとしている謀略が背後にあることを知る。
どうもLuftonが善玉でRilingが悪玉らしいのだが、Luftonの娘のうちひとりはRilingと繋がっていたり、全体に薄暗い照明や夜明かりのなか、主人公Garryと同じようにどっちが敵でどっちが味方なのか、誰がどうしようとしているのか明確に把握できず、主人公の思惑も含めて簡単には見えてこなくて、GarryはRilingの仲間であることをチラつかせたりしたせいで脅されたり刺されたりぼろぼろになりながら、威勢のよいLuftonの娘Amy (Barbara Bel Geddes)と一緒に戦っていくことになる。
最初に登場した頃のRobert Mitchumは無精ひげの胡散臭い風体で、狙われたり真相を知ったりするなかで、ひげはきれいになってて、でも何が正しくてどっちがどうなのか、などは薄暗くて(彼も察知しているのかどうか)見えてこなくて、謀略とか思惑に巻き込まれ、裏切りに夜討ちの連続で、これを「西部劇ノワール」と呼ぶのであればそうなのだろうな、としか言いようがない暗さと徒労感がずっと渦を巻いてつきまとい、拳銃早撃ちとか馬駆けとかで悪党をやっつけていく爽快感なんてまるでないのだが、ぼそぼそ喋って地面に転がってばかりのRobert Mitchumの重さと地味な暗さ、天井の低さのどん詰まり感がなかなかよくて、とても見ごたえがあった。
いまやっている時代劇ノワール『黒牢城』よりも、こっちかも、とか。
All That Money Can Buy (1941)
上のに続けて、シネマヴェーラで見ました。 邦題は『悪魔の金』。
監督はWilliam Dieterle、編集がRobert Wise、音楽はこれでオスカーを受賞したBernard Herrmann。 原作はStephen Vincent Benétによる短編小説"The Devil and Daniel Webster" (1936)を戯曲化したもの (1938)で、当初は同名のタイトルでリリースされる予定だったが、”The Devil and Miss Jones”っていう似た名前の映画があったので、”All That …”の方に変更された、と。 最近だと“All the Money in the World” (2017)っていうRidley Scottの映画もあったよね。あんま関係ないけど。
1840年のニューハンプシャーにJabez Stone (James Craig)という真面目な農夫が妻のMary (Anne Shirley)と敬虔な母(Jane Darwell)と一緒に暮らしていて、子供も生まれそうなのについてない、お先真っ暗なことばかりで途方に暮れていたら悪魔- Mr. Scratch (Walter Huston)が現れて、自分と契約したら楽になるよ、って金貨をちらつかせて、契約したら確かに生活は楽になって大きな家も建つのだが、Jabezの性格はどんどん嫌な方に変わってあれこれ手が付けられなくなっていく。
そこに以前から地元の貧しい者の味方として慕われていた議員で弁護士で弁のたつDaniel Webster (Edward Arnold)が現れて、Mr. Scratchは彼にも大統領にしてあげるよ、って誘惑しようとするのだがー。
監督のWilliam Dieterleにとっては『ノートルダムの傴僂男』 (1939) – これも編集はRobert Wise – に続く作品で、古くからある御伽噺ふう – というかふつうのファウスト伝説の悪魔がやってくるのをやっていて、そんなに怖くはないけど、見てすぐわかるキャラクターたち – 特にWalter Hustonうますぎ - とか舞台劇のようなセリフ回しとか、楽しいし、ヨーロッパの民話がこんなにも19世紀の腐り始めたアメリカにはまってしまうことにびっくり。
悪魔と戦う政治家、というと、そういえばゾンビと戦うリンカーンもいたし、アメリカだとやはりそうなるのか。いま、その伝統の線上に立って、政治家本人がしょうもない悪魔になってしまったら誰がどうするのか、が問われている。べつに問わなくてもいいからだれかどうにかしろあの腐れでぶを。
あと、William Dieterleと言えば大好きな“Portrait of Jennie” (1948)とか“September Affair” (1950)なのだが、あのちょっと不思議で独特なストーリーの運び、テンポは、既にあるような。
7.14.2026
[film] Blood on the Moon (1948)
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