6月27日、土曜日の昼、K’s Cinemaの特集 - 『英国イーリング・コメディの黄金時代』で見ました。 邦題は『白衣の男』。
この作品、英国にいた間に、もちろん見たことはあったのだが、「イーリング・コメディ」という括りでの特集ではなかった気がする。英国の戦前~戦後の映画って、Ealingだけじゃなくて、Alexander KordaのLondon FilmsとかRank OrganizationとかABPCとかMichael PowellのThe ArchersとかHammerとかGainsboroughとか、ハリウッドに対抗すべく国策でやっていたのでめちゃくちゃいろんなプロダクションがあって、どれを見たって – 少なくともいまの時代に生き残って再映されるようなやつについては – 外れがないの。
そういうのをアーカイブから引っ張り出して単発だけど35mmフィルムで上映してくれる火曜日のBFIの”Projecting the Archive”のシリーズとか、毎回痺れるおもしろさでいつも満員になって… 何が言いたいのかというと国立映画アーカイブのあれは、国策としてもぜんぜんだめで愚かで、ふざけんな、しかない、ということ。
そんななか日本で「イーリング・コメディ」がうける(結構お客入っているらしい)のは、デパートの英国展でスコーンやフィッシュアンドチップスに群がるのと同じようなものなのではないかしら。確かにとても英国らしい風味が効いてておいしいけど、英国のおいしいのってそんなんで終わるもんではぜんぜんないのよ。
イギリスの地方の繊維工場の片隅で怪しげな機械がピコぽこ変な音をたててずっと稼働していて、これ誰のものだ? ってざわざわしてようやく捕まったのがケンブリッジ出のSidney Stratton (Alec Guinness)で、彼は決して摩耗しないし汚れも一瞬で落ちる真っ白で強力な繊維の開発を続けていて、それなりのお金をかけたりしてようやく成功すると、彼はイノベーター、パイオニア、って持ちあげられるのだが、経営幹部と工場の労働者たちはこれができちゃうとやっぱり困るかも、って言いだして、追いかけっこが始まって…
最初からほーらこんなおかしいでしょ、って笑わせるのを狙っている、というよりは、自分の信ずるところに愚直に邁進していって、周囲もそれにきちんと応えているのに、なんでか全体として変な方に捩れていって、結局どうしようもなくなって、なんとも言えない気まずさが残る。そういう気まずさとかやりきれない「にがにが」をどうにかするために、パブ、っていう施設が発展したのね。
白いスーツを着て飄々と逃げ回るAlec Guinnessの姿はEP4でデス・スターの中をすり抜けていくObi-Wan Kenobiに重なっていく。この頃からああなることを予見していたのだとしか言いようがないの。
Vesna na Zarechnoy ulitse (1956)
↑のに続けて、Morc阿佐ヶ谷という行ったことのない映画館に行って、そこの『ソビエト映画特集』で見ました。
昔の映画をやってくれる館が昔より増えたのはよいこと、と思いつつ、洋画の新作はブロックバスターかジャンク系のホラーか、各国の映画祭でかかるような「佳作」ばかりで、見れていないのはほんと多いよねえ…
邦題は『ザレチナヤ通りの春』、英語題は”Spring on Zarechnaya Street”。
監督はFeliks MironerとMarlen Khutsievの共同によるソビエト映画で、ぜんぜん知らなかったがとても有名な作品らしく、ウクライナ映画ベスト100の45位になっているそう。
大学を出たばかりのTatyana Levchenko (Nina Ivanova – ちょっとAmy Adamsに似ている)が駅前で車を拾って、工場の方に向かう。ご機嫌で愛想のいい運転手は前の教師が来て帰っていったことを知っていて、車代は帰る時でいいよ、とかいう。
工場地帯に入って、そのなかにある労働者向け(?)の学校のロシア語、ロシア文学の教師として赴任してきた彼女に知り合いが下宿を調達してくれて、工場勤務をしている生徒たちを含めていろんな人たちが彼女の前に現れて、みんなの人気者Sasha (Nikolai Rybnikov)も寄ってきてちょっかいを出してくるのだが…
そびえ立つ広大な工場地帯、そこでの労働者たちの活気–すぐ歌がでる、 新任教師としての意気、そんな中でやっぱり芽をだしてくる恋への期待と立ちはだかる壁と行ったり来たりの宙ぶらりん状態が、厳しい冬から春への移り変わりと共に綴られていって、最後はやっぱり。 意外な要素も、見ていて恥ずかしくなるようなやり取りもなく、それらが気持ちよいくらいに各トラックにのってはまってアンサンブルを奏でていって、いつまでもずっと見ていても飽きない、70年前の作品であることを感じさせない王道のrom-com。なんでこんなふうにできてしまうのだろう? しかない。
この映画の殆どが撮られたウクライナのザポリージャ、この映画から70年で相当いろいろあった(今も…)のだろうなー、というのを(あまりに眩かったりするので)思ってちょっとしんみりした。
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