9月27日、土曜日のマチネをNational TheatreのDorfman Theatreで見ました。
原作はDavid Lanの新作戯曲、演出は(映画監督としても知られた)Stephen Daldry。
Dorfman TheatreはPitをいろいろ加工リフォームできるのだが、今回は舞台をランウェイのように縦に長くぶちぬいて、突き当りに重そうな扉と、本棚とピアノ。反対側には扉と簡素なキッチン、現在のRuthが座る揺り椅子。ステージの下、客見えるところにも書類棚が沢山並んでいる。舞台に本棚があって本が詰まっていたり書類が積んであったりすると(自分が)嬉しくなることに気づいた。客席のA列とB列の間も兵士たちが通り抜ける狭い道になっていたりする。
第二次大戦の頃、ナチスがスラブ系の子供たちを家族から引き離して誘拐し、遺伝的要件を満たしていればドイツ人家庭に入れてドイツ人として育てる、というLebensborn計画(の後始末)を巡るドラマ。連れ去られた子供の数は数十万人、ヨーロッパ全土で1100万人に及んだ避難民が収容されていたキャンプからRuthのいたUNRRA(the United Nations Relief and Rehabilitation Administration)は本国送還などを支援して軍と一緒に欧州各地を転々としていた。
1990年のロンドン、戦後から45年経って、Thomas (Tom Wlaschiha)がRuth (Juliet Stevenson)の家を訪ねてきて、ピアノを弾いたり、昔話をしていく中、幼い頃のThomas (Artie Wilkinson-Hunt)のこと、そして戦後処理をする国連のUNRRAとしてやってきて、引き取られた子供たちをドイツ人家庭から再び引きはがして故郷に返す活動をしていたあの頃のRuthと子供たちのことが蘇ってくる。Thomasにとってはあの時の自分に何が起こったのかを知ること、Ruthにとっては、あの時の自分に何ができなかったのかを掘りさげること – どちらにとっても楽しく懐かしい振りかえりの旅ではない。
現代のRuthの部屋と当時に繋がる長い廊下を行ったり来たりしながら、戦時下の銃声が鳴り響く中での混乱、母たちの声と嘆き、子供たちからすれば引き離される不安と恐怖のなかに置かれた孤独、どれだけ手を尽くしても終わりの見えないRuthたちの疲弊、これらが縦長の舞台を目一杯使って延々描かれていって、客席の背後の闇からはThomasだけではない多くの子供たちの声や気配がずっとしている。
これらは勿論、いまの移民、難民政策にも繋がる話で、”The Land of the Living”とは何なのか、国境の右左だけでなく、家族が一緒に安心していられる・暮らせる場所ではないのか、ということを改めて。いまの時代であれば尚更に。
劇としてはメッセージも含めてものすごくいろんなことを詰め込み過ぎの印象があって、戦中と戦後を繋いで次から次へといろんなことが起こって、俳優陣もいくつかの役をかけ持ちしつつ舞台を代わる代わる駆け回って大変そうだったが、見ている方も咀嚼している暇がなくてちょっとしんどかったかも。これなら映画にした方が... とか。
Creditors
9月25日、木曜日の晩、Orange Tree Theatreで見ました。
原作はスウェーデンのAugust Strindberg(画家でもある)による同名戯曲 “Fordringsägare” - (1889) - 邦題だと『債権者』。英訳はHoward Brenton、演出はTom Littler。 休憩なしの約90分。
ホテルの一室に画家のAdolf (Nicholas Farrell)が療養のため長期滞在していて、そこに滞在している友人のGustav (Charles Dance)が訪ねてきて、Gustavに勧められてAdolfは粘土彫刻をやってみたが女性像はあまりうまくいかなかったり、ふたりでAdolfの妻で小説家のTekla (Geraldine James) – Gustavの元妻でもある – を待って彼女のことを話題にしながら、Teklaをどうしてやろうか – のようなことをそれぞれが考えているよう。やがてTeklaがやってきて、
“Creditors”は3人が互いのことを言う際に使ったりする言葉で、過去の関係においてそれぞれが何らかの負債のようなものを負ったり負われたりしつつ、自分が相手のことをそれぞれのやり方で上に立ってやりこめたりどうにかできるのではないかと踏んでいる、そんな三つ巴のやり取りが続いて最後には..
内に何かを秘めて煮込んだ一筋縄ではいかない初老の男女たちのドラマで、全員めちゃくちゃ自然のようで、でも裏があって怪しくてうまいのだが、やはりCharles Danceの老いた蛇のような佇まいがものすごい。実生活で絡まれたりしたら絶対にいやだと思うが、目の前3メートルくらいのところにいる彼の存在感は痺れるような強さがあったの。
10.06.2025
[theatre] The Land of the Living
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