10月11日、土曜日の昼、West EndのVueっていうシネコンの一部を借りて上映しているLondon Film Festival (LFF)で見ました。
LFFって自分のような一般の参加者にとってはそんなに、ぜんぜん楽しいイベントではなくて、チケットは取れないし、ガラのチケットは高い(£30)し、ふだんだらだら過ごしているBFIのロビーが人でいっぱいになってうるさいし、新作はすぐシアターでかかるものも多いので、目的はスターを見たり会ったり、になるのだろうが、もうそんなに見たい人なんていないし。 はやく通常営業&特集の普段の暮らしに戻らないかなー、ばかり思っている。
監督はIra Sachs、出てくるのはPeter Hujarを演じるBen Whishawと彼にインタビューするLinda Rosenkrantzを演じるRebecca Hallのふたりだけ。76分。
1974年の12月18日、マンハッタンの94thにあるLinda Rosenkrantzのアパートを訪ねた写真家のPeter Hujarは彼女から一日インタビューを受けて、そのテープはどこかに消えたと思われていたのだが、原稿は出てきて、2019年に同タイトルの本として出版された。これを元にIra Sachsが16mmフィルムのこじんまりして暖かい質感でもって撮影した - 撮ったのはデジタルだと思うが。
彼の写真を見たのは10年代にNYのどこかのギャラリーで、写真集も買って、2019年にパリのJeu de Paumeの展覧会にも行って、イギリスに来てからもいくつかのギャラリーの展示に行った。肖像写真が多くて、対象となった人の本質を深い陰影のなかに捉える、というよりも乾いた画面上にぺたりと、ただの影と輪郭として貼っていくイメージがある。Robert Mapplethorpeの(狙ったわけではないだろうが)反対側にいるような。
このフィルムでの彼もそんなふうで、ありきたりの世間話 - お金のこと(お金ない)、健康のこと(まだエイズ禍前なので平穏)、睡眠不足の心配、New York TimesのためにAllen Ginsbergの写真を撮りに行った時のこと、Fran Lebowitzのこと、などを独り言のようにとりとめなく喋っていて、合間にお茶を淹れたりレコードをかけたり、ダンスをしたり、ずっとタバコを吸ってて、ふたりで屋上に行って喋ったり、服はふたりとも何回か替えたりしていた? そんなふうに流れていったある一日のこと。
ふたりが屋上に行った時の風景はロウワ―マンハッタンのようで、でも後の方ではハドソン川に向かう風景もあって微妙に一貫していないのだが、室内の撮影はLinda Rosenkrantzが暮らすアパートをそのまま使ったらしく、インテリアなどはさすが、だった。
そうやってちょっと不思議な彼と一緒にいた時間、ある一日の濃くも薄くもない、でもこんなふうに刻まれた一日がありました、って。
あと、エピソードとして出てくるNYにいた頃のAllen Ginsbergの奇行、変人ぶりって、むかしHal Willnerからも聞いたけど、ほんとひどいな(褒めてる)。
上映後に寝起きみたいに髪ぼさぼさのBen Whinshawのトークがあって、Peter Hujarの動くフッテージがないので – たしかに見たことないかも - 彼がどんなふうに動いたり喋ったりするのかは自分で考えた、と。ものすごく自然に見えて、本当にあんなふうだったのではないか。
Dry Leaf (2025)
10月11日、土曜日の午後、↑のに続けて同じシアターで見ました。
ジョージア・ドイツ合作映画で、ジョージア語にすると”ხმელი ფოთოლი”。
監督は”What Do We See When We Look at the Sky?”(2016)のAlexandre Koberidze。
ロカルノ映画祭でプレミアされてSpecial Mentionを受賞している。186分。
スポーツ写真家をしている娘Lisaが撮影でしばらく旅に出るが探さないでほしい、という謎の手紙を遺して消息を絶ってしまったので、父のIrakli (David Koberidze - 監督の実父)がLisaの仕事仲間のジャーナリストのLevani - 都合がわるいらしく透明人間になっているので声だけ - と共に車に乗って旅に出る、ミステリーぽい導入からのドキュメンタリーのようにも見えるロードムービーで、スタジアムのある辺り、サッカー場のある辺り、を村人とか通りすがりの人に聞きこんで、そこに着くとそこの人や子供にLisaの写真を見せて知らないか? って聞くけど知っている人も手ごたえもなくて、を延々と繰り返す。
映像は昔のVHSの画質 – つまりずっとボケボケで、その見通し、視界の悪さがIrakliのそれと重なって合わないメガネをかけた時のような不安と苛立ちをもたらす。ここには”What Do We See When We Look at the Sky?”にあったのと同じような「見晴らしのよさ」についての考察があり、ヒトだけでなくいろんな動物、牛馬豚ロバ、猫、鶏、などと共に、幽霊のような赤い影が映っていたりする(Apichatpong Weerasethakulぽいかも)。
最後も含めて、彼の旅は結局どうだったのか、ということよりも、生きていくってこんなようなことなのかも、って見えてきたところで枯れ葉(Dry Leaf)が。
10.18.2025
[film] Peter Hujar's Day (2025)
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