10月4日、土曜日の昼、BFI Southbankで見ました。
新作で、監督はドイツのJan-Ole Gerster。
Tom (Sam Riley)はカナリア諸島のホテルリゾートで専属のテニスコーチをしていて、昼は滞在客の子供や老人相手にレッスンをして、夜は地元のクラブに出かけて踊って酔っぱらってビーチで目覚める、みたいなことを繰り返している。
ある日、泊まりにきたイギリス人の裕福そうな夫婦のAnne (Stacy Martin)とDave (Jack Farthing)から彼らの息子の個人レッスンを頼まれて、ついでに彼らの部屋を裏でアップグレードしてあげたりしたことから親しくなって、一緒に食事をしたり観光したりラクダに乗ったりするようになる。 AnneとDaveは二人目の子供ができないことでちょっとぎすぎすしていて、互いの話を聞いてあげたりして、TomがDaveをクラブに連れていって呑んで騒いだ翌朝、Daveが消えてしまったことを知る。最初は酔っぱらってどこかに、と思っていたのだが現れないので警察に届けて本格的な捜査が始まって、そうしてAnneとTomは一緒にいるうちに親密になっていって、Daveのほうはぜんぜん出てこないのでどこかでもう亡くなっているに違いないし、それでもいいか、と思っていると…
捜査中に浮かびあがるAnneの怪しい挙動とか、ちょっとミステリーぽいところもあるのだが、そこにTomの日差しは強いのにいつまでもどんより投げやりの日々 - Daveと同じようにいつ消えてもおかしくない、むしろ消えちゃえって思っているTomの澱んだ姿に、何を予知しているのか飼育場からの脱走を繰り返す観光用ラクダの姿が重なっていく。Daveの捜索で、海からこのラクダの死体があがるシーンはなかなか素敵。
全体に70年代のアントニオーニみたいな、ブルジョアの腐っていく世界に漂う焦燥と倦怠がゆったりとクールに描かれていて、ちょっと長いけどそのリズムも含めて悪くなかったかも。Sam Rileyがすばらしくよいし。
Brides (2025)
10月3日、金曜日の晩、BFI Southbankで見ました。
これも新作で、監督はNadia Fall - ずっと演劇畑でやってきた人で、National TheatreでNicholas HytnerのADをしていたり、今はYoung Vicで上演中の”Entertaining Mr Sloane”の演出をしている - の長編映画デビュー作。 予告にイスタンブールと猫が出てきたので見た。
2015年、15歳で家出してシリアのISに入隊したShamima Begumの事件を元にしたドラマ。
同じ学校に通うDoe (Ebada Hassan)とMuna (Safiyya Ingar)の親友同士がいて、冒頭はふたりがばたばたと電車で空港に向かい、出国審査を済ませて飛行機に乗ってイスタンブールに向かうところから。ここまではふたりの冒険が始まるどきどきがあるのだが、トルコの空港に着くと、来ているはずの迎えはいないし来ないし、とりあえずバスで国境近くまで行くしかないか、って、まずイスタンブールに向かうのだが、そこでDoeはパスポートなど一式を失くして…
無口で内気なDoeと強くて奔放なMunaのコンビは素敵で無敵のようなのだが、旅の途中で英国での彼らの家族や学校での辛くしんどくうんざりの日々が重ねられて、旅先での困難を支えるのはもう二度とあそこには戻りたくない、って家を出た強い意思、というその部分は普遍的に伝わってくるものだが、そこから彼女たちがどこに向かって何をしようとしているのか、は伏せられている。困っている彼らを助けて親切に泊めてくれたバスターミナルの女性とその家族を裏切るようなことまでしたり、最後に車に乗せてくれたパパと娘たちの幸せそうな姿を置いても、ずっとママから電話とメッセージがくるDoeのスマホを壊してまで彼女たちの国境を超えようという決意は揺るがず、絶望の深さが知れて、それはもうほとんど自殺のようなものに見えるのだが、最後に描かれるDoeとMunaの最初の出会いのシーンを見ると、それしかなかったのだろうな、って。後からいくらでも言うことはできる、というー
女の子ふたりの友情、を甘く切なく描くようなやり方ではなく、特に真面目なDoeの苦悶の表情を見るとどこかにたどり着いたから決着するものでもないのだろうな、って思えて、ふたりの女性の映画として成立させようとしているように見えて、そうするとタイトルの”Brides”が。
10.11.2025
[film] Islands (2025)
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