10.22.2025

[film] Die My Love (2025)

10月18日、土曜日の昼、LFFのRoyal Festival Hallで見ました。
前日の晩がGalaだったのでゲスト等はなし。

監督はLynne Ramsay、原作はAriana Harwiczの同名小説(2012)、脚色はAlice Birch、Enda Walsh、Lynne Ramsayの共同(すごい強力)、撮影はSeamus McGarvey、プロデュースにはMartin Scorseseの名がある。今年のカンヌではPalme d'Orにノミネートされた。画面はスタンダードサイズ。

Grace (Jennifer Lawrence)とJackson (Robert Pattinson)の夫婦が隣家のない、原っぱのなかに建つぼろめの一軒家にここでいいよね、というかんじでやってきて、しばらくはふたりで犬のようにやりたい放題、原っぱを転げまわってキスしてセックスして燃えあがる森を駆け抜けて、でもそのうち子供ができて、育児をはじめるとJacksonは家のなかにいないことが多くなり、産後鬱もあるのかGraceにおかしな行動が出てくるようになる。彼女はもとは作家だったのだが、特に育児を始めてからは書けなくなっている。書く努力をするとかそれ以前のところで止まっていて、でも引きこもるわけでもなく、絶えずどこかに出かけて徘徊して、でも何かが見つからないふう。

近くにはJacksonの母のPam (Sissy Spacek)がいて、彼女も認知症の夫のHarry (Nick Nolte)の介護でちょっとおかしくなっていつも銃を持ち歩いていたりする状態なので、Graceが訪ねていってもあまり(お互いにとって)助けにはならず、そのうちJacksonが家に犬を連れてくるのだが(Graceは猫~ っていったのに)、こいつがずーっと昼も夜もばうばう吠えているのでまったくの逆効果で、買い物に行っても、友人宅のパーティに行っても、車に乗っていても、Graceがなにをやらかすかわからず、見ている方の金縛りはものすごくなっていく。

GraceとJacksonの関係、その緊張が最大になるのはふたりが車に乗っているところ、ずっと起こりうる惨劇を待っている密室のようになっていて、でも、“Die My Love”とか言いながらこのふたりは相当にしぶとくて簡単に殺されたり死んだりしないであろうこともなんだか見えてくる。”Hunger Games”で生き残った人だし、The Twilight Sagaと”Micky 17”の人だし。 車のなかでJohn Prine & Iris Dementの”In Spite of Ourselves”がほのぼのと流れると、赤ん坊を挟んだ産後鬱の話というより、愛と憎しみでぐじゃぐじゃにまみれた、狂ったラブストーリーとしか言いようがないものが浮かびあがってくる。

惨劇に向かわない神経戦のようなところだと、やはりJohn Cassavetesの"A Woman Under the Influence" (1974) - 『こわれゆく女』のGena Rowlandsが浮かんでくる。この映画でGena Rowlandsが周囲にso-called「迷惑」をかけたり傷つけたり傷ついたりすればするほど異様に輝いていくのと同様、Jennifer Lawrenceがひと暴れすればするほど不敵なその艶は磨かれていって手をつけられなくなる、そんな女性映画として見るのがよいのか。

あるいは、Lynne Ramsayのデビュー作 - ”Ratcatcher”(1999)の頃からずっとある、呪われた家 – とどまるべきではない場所としての、牢獄としての家の延長として見ることもできるかも。Graceが原っぱや森を抜けていくシーン、彼女が見上げる空の鮮烈さは”Ratcatcher”の少年のそれに重なるような。

とにかくJennifer Lawrenceのとてつもなさに尽きる映画で、彼女の立ち姿、這いつくばったり寝っ転がったりの姿ばかりがずっと残る。目の前のLoveを呪って叩き潰し、それでもそれらしき何かを求め続ける彼女に”Love is a stream, it’s continuous, it doesn’t stop”と言い続けたGena Rowlandsが重なる。

そして最後に“Love Will Tear Us Apart”のカバーが流れる。歌っているのは監督のLynne Ramsayで、原曲よりゆっくりで、これがすごくよいの。 未確認だが、冒頭に流れるギターの鳴りがかっこよい曲を歌っているのも彼女なのかしら?


今日(10/22)はCabaret Voltaireの再結成ライブがある、と思って支度をしてて、でもチケットが来ていないのはどうして? と思ってよく見たら2026年の10月22日なのだった… (1年後なんて生きてるかどうかわかんないじゃん)
あまりについていないので、”Good Fortune” (2025) ていう映画を見にいった。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。