10月14日、火曜日の晩、Young Vicで見ました。
原作はJohn Ortonの同名戯曲 (1964)で彼の最初の長編劇、演出は、こないだ見た映画”Brides” (2025) を監督していたNadia Fall。
9月のBFIの特集でも1968年に制作されたこれのTVドラマ版を見て、とてもおもしろかったし。
舞台は客席が囲む形の円形(デザインはPeter McKintosh)で、ベッドがある普通のリビングだが、黒で塗られたいろんな椅子、鳥カゴ、乳母車、ベビーベッド、カートなど、実物大のそれらがオブジェのように天井に向かって吊るされ撚りあげられている。古いフラットのリビングで妄想も含めて浮かんでは壊されたり棄てられたりしてきた遺物たちが燻されて吹きあがっている。
そんなややホラー設定のフラットに若いMr Sloane (Jordan Stephens - hip-hop duo Rizzle Kicksの片割れのひと) が家探しで颯爽と現れて、女主人のKath (Tamzin Outhwaite)は、そんな彼を嬉々として迎えてご機嫌取りをいっぱいして、彼がそこを借りることを決めると、嬉しくてたまらなくなり、早速彼の上にまたがって…
今であれば、家主の立場を利用したセクハラ&パワハラにできそうな話なのかもだが、何も考えていないふうのSloane本人はそれをそのまま受け入れて、Kathを自分の都合いいように利用していくので、今で言うならWin-winなのかもしれないが、そこにKathの兄で背広を着た堅気のEd (Daniel Cerqueira)と、いつも小言を呟いて徘徊している老父Kemp (Christopher Fairbank)が絡んできて、それぞれが自分のやりたいように振る舞い、言いたいことを言っていく。
セックスでどうとでもできると考えているKathがいて、地位や仕事でどうとでもできると考えているEdがいて、過去にSloanを見たことがあるEdはひたすら彼のことを嫌って、その中心にいるSloaneは、無表情に、自分の欲望の赴くままに好き勝手に振舞っていって、結果Kathは妊娠して、Kempに対しては暴力ふるって殺しちゃって、という非情で成りゆきまかせの世界が暗闇の、どぅどぅ響くリズムのなかで展開していく。
設定としてはやや古いのだろうが、狭く閉ざされた檻のなかで欲望と脅し、服従によってじっとり動物化していく老人から若者までを描く、という点において十分に生々しく、異様なリアリティがあると思った。
The Lady from the Sea
10月15日、水曜日の晩、Bridge Theatreで見ました。
原作はHenrik Ibsenの同名戯曲(1888) - 『海の夫人』、これをSimon Stoneが翻案して演出している。原作に登場するHilde Wangelは、後に”The Master Builder” (1892)にも出てくる。今年5月にWest Endで見たこれの翻案 - “My Master Builder”ではElizabeth DebickiがMathilde/Hildeを演じていたが、ここではAlicia VikanderがEllida(名前を少し変えて)を演じている。
三方から囲む形の舞台はまぶしい白で、プールサイドにある長椅子があって、白くモダンなテーブルがある夏の日のお金持ちの家、後半は、ここの中心に水が溜められてプールになったり、よりダークになって激しい雨が降り注いだりする。
裕福な神経科医のEdward (Andrew Lincoln)がいて、Ellidaは彼の2人目の妻で、家にはEdwardの自殺した先妻との間にふたりの娘 - Hilda (Isobel Akuwudike) とAsa (Gracie Oddie-James)がいて、他にEdwardの患者で余命がないことを告げられるHeath (Joe Alwyn)とか、いろんな立場の登場人物たちがそれぞれに勝手なことを言ってぶつかり合って賑やかなのだが、全体としては僕らお金持ちで生活に余裕あるし(なんて言わないけど)、という態度で強くふてぶてしく暮らしている(ように見える)。
そこにEllidaの過去に深く刺さっているらしい中年のFinn (Brendan Cowell)が現れて、はっとなるところで1幕目が終わる。
2幕目はEllidaの過去を巡って復縁を迫ってくる環境活動家のFinnとEllidaの泥まみれの愛憎劇がどしゃ降りの中で展開されて、どうなる? ってなったところで出会った当時、Ellidaは15歳でFinnは30代だったことが明かされ、それって… で何かが解けたような。
Ibsenの原作まで遡る必要があるのか、はわからないけど、”Master Builder”もこれも、現代で裕福な地位を築いた男たちが、過去を引き摺った運命の女性に揺り動かされ、”Master Builder”の場合は(Ewan McGregorを)破滅まで追いこんでしまう。ベースには再会し過去の自分との出会いによって何かに目覚めた女性がいて、この舞台の場合、いろいろあったけど/これからもあるけど、というアンサンブルとして終わって、各自が抱えたものすごくいろんな要素が絡みあった変な劇で、でもみんなそこらにいそうでありそうなかんじがよかったかも。
10.24.2025
[theatre] Entertaining Mr Sloane
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