7月27日、日曜日がスイス滞在の、夏休みの最終日で、この日はBaselに行ってきた。
Zürichから電車で1時間くらい。この日も美術館が開く10時めがけていく。
Kunstmuseum Basel
バーゼル美術館。1671年に開設された世界最古の公共美術館だそうで、こんなのが「市立」?なんてありえないくらい常設展示が充実していてびっくりする。そして好き嫌いでいうと、ものすごく好きなのが並べられていて、こういうのを見て回るのは早い方なのだが、1時間半くらいかかった。足らなくて時間が許せばもっといたかった。
Hans Holbein der Jüngereの見事なひと揃えがあったり、宗教画と近代が中心でどこかが抜けている気がしないでもないのだが、Paula Modersohn-Beckerの少年と猫のとか、Franz Marcの「2匹の猫、青と黄色」とか、Oskar Kokoschkaの大きな”The Bride of the Wind” (1913)とか、Edvard Munchの白鼠を抱いた少女とかでっかい風景画とか、あまりのことにこれらがある小部屋で絶叫しそうになった(常設のコレクションを見ているだけでそうなることってそんなにない)。他にもVallottonの歪んだ風景(?)画と裸踊り系と、Arnold Böcklinの”Die Pest” (1898) – すごくこわい – とか。 一週間くらいここに閉じこめられて暮らしたいと思った。
Medardo Rosso: Inventing Modern Sculpture
この展示、昨年12月ウィーンのmumok(近代美術館)でも見ていたのだが、すばらしかったのでもう一回見る。
イタリアの彫刻家Medardo Rosso (1858-1928)の回顧展で、Rodinの同時代人であり一時期親友でもあった彼の主要作品だけでなく、輪郭がぐずぐずと崩れたり溶けたりしていくような頭部の彫刻~オブジェに共振するかのように歪みや溶解を見せるモダン~ポストモダンのアーティストたち - Francis Bacon, Louise Bourgeois, Alberto Giacometti, Robert Gober, Yayoi Kusama, Marisa Merz(前日のBernでレトロスペクティブを見た), Bruce Nauman, Richard Serra, Georges Seurat, Andy Warhol, Francesca Woodmanなどの彫刻、オブジェ、写真、絵画などが並べられ、そしてBaselではウィーンの展示に加えてGiorgio de Chirico, Marcel Duchamp, Peter Fischli / David Weiss, Henry Moore, Odilon Redon なども加わっている – これ、結局なんでもありじゃねえの? - とか。
例えば印象派以降 or 起源のようなテーマではなく、「近代彫刻の発明」の起点にいた彫刻家の作品群から人や顔や体のイメージがどう変容、伝染していったのかを追っていく、それは直接間接の影響を受けていた、ということよりも地表の温暖化でまるごと溶けていくとか、そういうのに近い伝播、変容のしかただったのではないか、とか。
ウィーンではカタログの分厚さにひるんで買わなくて、ずっと後悔していたので、今回は負けないで買う。
Fondation Beyeler
ここからトラムを乗り継いでバイエラー財団に向かう。原美術館と根津美術館を合わせてよりモダンにお金持ちにしたかんじ。
Vija Celmins
ラトヴィアに生まれてNYに暮らす造型作家Vija Celmins(1938-)のレトロスペクティブ。ヨーロッパでは20年ぶりのソロ作品展になるそう。
60年代の銃や戦闘機をモチーフにした作品たちが海面とか砂漠とか蜘蛛の巣に移り、やがて散る雪とか星空に至る。一通り流してふーん、てなって最後の部屋で”Vija” (2025)っていうこの展示のために撮ったという32分のドキュメンタリーを上映していて、ちょっとだけ見ようと思って見始めたら止まらなくなって最後まで見てしまった。
VijaがNYの旧アトリエでどうやって描いていくのか、昔はどうやっていたのかを説明したりするのと、Hamptonsのアトリエに彼女自身の運転 - 結構なスピードでぶっとばす - で移動して、移動先でも話を続ける。すごく饒舌に語るのではなく、ゆっくりとラトヴィアから終戦直後のベルリンを経てNYに来て絵を描きはじめた頃の話とか、車のなかで照れながらラトヴィアの歌を歌ってくれたりとか、アトリエ猫のRaymondとか、創作の秘密とか動機なんてもちろん明かさず、なんでこんなインタビューしなきゃいけないの?とかぶつぶつ言いながら、とにかく素敵なひとなの。
おもしろかったのは、あなたの絵に赤はないので、やはり赤い絵の具は持っていないのですね? と聞かれ、そんなことないわよ持ってるわよ、って引きだしを開けまくって、やはり赤はなくて、自分は赤の人ではないのだ、って居直るとか。
彼女が星空を描いていくところも、ものすごく細かなレースを地味に編んでいくようなことをやっていて、なんかすごい。
で、これを見て再び展示の最初から見ていったら結構印象が変わって、いかにいい加減に見ていることか、って。
この後にパーマネントコレクションを流して、Vijaのカタログも買ってしまったので結構重くなり、続けてDesign Museumにも行こうと思っていたのだが、そこに向かうバスが1時間に1本で、30分以上待つことになりそうだったので諦めた。また今度。
かわりに、ライン川沿いのスイス、ドイツ、フランスの三国の国境が交差する地点に行ってみる。動いているのかいないのか錆びれた貨物用の線路と橋がある夜にはなんかありそうな場所、雰囲気としては(そういうのが好きな人には)たまんないやつで、その場所もミサイルのようなモニュメントが立っているだけで、あたりにはなんもなくて、こんな国境なんてとっととなくなればよいのにな、って。
帰りは17時くらいにホテルに荷物を取りに戻ればよいので割と余裕で、でも事故ひとつ遅延いっぱつでアウトだから注意していたのだが、今回のスイスの鉄道は全体にものすごく優秀でびっくりだった。やはりドイツのDBが酷すぎるのよね。
この日、町中も駅もユニフォームを着て太鼓を叩いたりの人がいっぱいで騒がしくてなんだろ?と思っていたのだが、女子サッカーのEURO2025の決勝があったのだった。それを聞いて知ったのは戻りの飛行機のなかで、機内アナウンスで、結果をお知らせすると具合が悪くなる方がいらっしゃるかもしれないのでアナウンスは致しませんが、知りたい方は降機の際に添乗員のとこまで来てください、だって。
今回のスイスはだいたいこんなかんじ。
ローザンヌとかジュネーブとか、シルスマリアとか、行っていないところもいっぱいなので、またね。
7.31.2025
[log] Basel - July 27 2025
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