7.17.2025

[film] Il Grande Silenzio (1968)

7月6日、日曜日の昼、BFI SouthbankのMoviedrome特集で見ました。

監督はSergio Corbucciによるイタリア/フランス映画、スパゲティ西部劇。音楽はEnnio Morricone。
英語題は”The Great Silence”、邦題は『殺しが静かにやって来る』。

上映前にAlex Coxによるイントロがあった。
この作品はJean Louis Trintignantが主演で、彼もお気に入りの1本だというし、画面は美しくてイタリア西部劇の脂がないし、音楽もすばらしいし、でも英国では90年代にMoviedromeで放映されるまで、米国では2001年になるまで紹介されなかった。理由はこれを自分で映画化しようと思ったClint Eastwoodが映画化権を買って握っていたからで、でもそれは実現しないで、半端なかたちでJohn Sturges監督による”Joe Kidd”(1972) – 未見 – に適用されたのだそう。

19世紀末のイタリア北部の雪まみれの一帯で、吹雪で困窮した住民が生き残るために盗みを働くようになり、それを取り締まるために盗賊がやってきて、住民たちを守るために別の盗賊もやってきて、ほぼ全員が騙しあい奪いあいみたいなことをして、という無法地帯のど真ん中に幼い頃に賞金稼ぎに両親を殺され口封じで喉を切られて言葉を発することのできなくなったSilenzio/Silence (Jean Louis Trintignant)と呼ばれるガンマンが現れて、その反対側に悪漢のTigrero (Klaus Kinski) - 緑の目 - も現れて、にらみ合いつつ近寄っていって… 

白い雪のなか、みんな着だるまで、主人公が喋れないのでどこの誰がどちら側に立っているのか等、顔つきとか挙動で判断するしかないのだが、それでも善玉と悪玉はなんとなくわかって、ようやくそのコントラストが見えてきた頃に主人公はあっさりやられてしまって後にはなにも。中東域での公開はハッピーエンディングが条件なので、後でオルタナ・バージョンも用意されたそうだが、Silenzioの名と共に雪のなかに消えてしまうその潔さというか白い雪の静けさしか残らないかんじはなんかよかった。

Jean Louis TrintignantもKlaus Kinskiも、Great Silenceのなか、ほぼ目だけでにらみ合って殺し合う、それだけなのだが、切り返して殺しあう絵として出来あがっていて、雪に埋もれた集落で起こったかもしれないドラマとして底冷えする寒さが吹いてくる。

ヒロインPaulineを演じたVonetta McGeeにほれてしまったAlex Coxは”Repo Man” (1984)で彼女をキャスティングしたのだそう。


Sweet Smell of Success (1957)

7月6日、日曜日の夕方、BFI Southbankの同じ特集で見ました。ここでもAlex Cox氏が登場してイントロをしてくれたのだが、昼の回からちゃんと装いを変えてきたので、すごくおしゃれな人なんだー、と思った。

邦題は『成功の甘き香り』。結構メジャーな作品の印象があったのだがノワールのカルトとして認知されていたのか、というのと、実際に見たら相当に変な作品だと思った(原作はCosmopolitan誌に掲載されたErnest Lehmanによる短編)。今回の特集では本編に入る前に、TV放映時に流されたホストによる当時の紹介コメントも上映されているのだが、この作品を紹介している映像がどうしても見つからない、誰かVTRで録っている人がいたら(絶対いるはず)送ってほしい、と呼びかけていた。

撮影はJames Wong Howe、ばりばりの黒白のコントラストが見事な35mmプリントでの上映だった。

監督はAlexander Mackendrick。ずっと英国の人だと思っていたが、生まれはボストンでグラスゴーで育って、Ealing Studiosで名作をいっぱい撮ったあと、アメリカに戻った。これは彼がアメリカで撮った第一作だそう。

マンハッタンでプレスエージェントをしているSidney Falco (Tony Curtis)がいて、人気コラムの影響力でメディアを牛耳っているコラムニストJ.J. Hunsecker (Burt Lancaster)に取り入って成りあがりたいのだが、J.J.の19歳の妹Susan (Susan Harrison)が入れ込んでいるジャズバンドのギタリストSteve (Martin Milner)との縁を断ち切ってくれたら、というので、バンド関係者、ライブハウスのタバコ売りの娘から政治家から警察までいろんな糸を張り巡らせて走り回ってどうにかするのだが、さいごはあーあー、になる。

別にだれかが死んだり殺されたりはない、狭いサークルでのなにが楽しいのか、ほんとにそんなことやりたいのか? の刺しあいで、(単純に比べることはできないけど)今ならインフルエンサーに取り入って貰うためにあらゆるハラスメントにでっちあげ、違法ぎりぎりのいろんなことをしていく話で、外野から見たらよくやるよ、しかないのだが、内側にいる人は-これを書いた人も含めて- 気持ち悪いくらい必死で、そのいびつな、よくわからない必死さにカメラはぴったり張りついて、21 Clubを中心とした夜の町をうつろっていく。

こないだ見た“The Swimmer” (1968)と並んで怖くて変なひとBurt Lancasterのイメージが固定されてしまった。”The Swimmer”の壊れた主人公も広告業界にいた人だったので、どこかで繋がっていてもおかしくない。

21 Clubのハンバーガー、食べたいなー、あんなおいしいのなかったな、って思い始めたら止まらなくなった。

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