6月28日、土曜日、パリ日帰りをしてきました。
前回の日帰りが3月頭だったので、そろそろ再訪したくなってきたのと、現地で暑さが本格化して夏休みモードになってしまう前に、と思ったのだが、少し遅かった。ものすごく暑い日にあたってしまった。
朝6:31発のユーロスター(電車)を予約して5:30前には駅に入ったのだが、テクニカルなんたらでボーディングが遅れ、最初は20分遅れだったのが、(やっぱり)45分になり(あれよあれよと)1時間になり、車両を全とっかえしたので紙の(!)ボーディングパスを手で(!)配り直したりしてて、結果的にパリ着が1時間20分遅れて11:10になった。
ユーロスターの遅延はこれまでにも経験しているし、車両の老朽化によるもの、ってみんなが指摘しているのでどうにかして、しかないのだが、念のための時間指定で取っていた美術館などのチケットをどうするか、で予定を組み直したりが面倒くさい。若い人だったらAIさんにお願いしたりするのだろうな。
結果的には美術館いっこ諦めることになり、これは次回にする。直前まで行くか行くまいか悩んでいたFondation Louis Vuittonの”David Hockney 25”はやめておいてよかった。
パリ北駅に着いてから、地下鉄の④まで走ってNavigoカードにチャージしてホームに走りこむとこまでの手順は、お手のものになってきた。自慢するほどのもんでもないけど、ちょっとうれしい。 以下、見た順で。
Wolfgang Tillmans - Nothing could have prepared us – Everything could have prepared us @ Centre Pompidou
修繕のための館内一部クローズが始まっているCentre Pompidouでの展示。2階の情報図書館のスペースをぜんぶ使った規模のでっかいものだった。「何も用意できなかった - すべては用意できたはずなのに」。 回顧展としては2017年のTate Modernの以降、世界各地で単発でやってきたテーマ別の展示、人物、静物、生物、建物、風景、アブストラクト等を壁に貼ってテーブルに並べて、音のでるインスタレーションなども仕切り壁の向こうにいろいろぜんぶ寄せ集めて並べて、どう見ても写真(家)の展示ではない。写真でできること、できると思っていたが十分でなかったので別の形でやってみたこと、ぜんぶ並べて、結果として図書館的(全方位、百科全書的)な情報のありように近づこう/近づくためには何をどう? を考えている。 これって写真というメディアがそもそも可能にするはずだった何かではないのか? そうあるべきではないのか? と改めて問うているような。
Céleste Boursier- Mougenot – clinamen @ Bourse de Commerce
ポンビドゥから小走りして(暑いんだからやめとけ)Bourse de Commerceで、夏のインスタレーションを見に。
青の円形プールに白い陶器のお椀がたくさんぷかぷか浮いていて、これらはゆらゆら勝手にてんでばらばらに動いて陶器同士でぶつかってカラン〜 コロン~って気持ちよい音をたてて、その音たちが広い空間に響いていくそれだけで、これを「クリナメン」(小文字)って名付けたのはえらい。 プールの脇に座ってぼーっとしているだけで納涼で、気持ちよくて。 この上に日本の風鈴をいっぱいぶら下げたらもっと.. プールの脇でスイカとか売ってくれたらもっと、とか.. それくらい暑かったのだが、そういうのはテーマとは関係ない。
Gabriele Münter - Painting to the point @ Musée d’ArtModerne de Paris
Bourse de CommerceからMusée d’Art Moderne de Parisに向かうバス(72)の通るはずの道がプライドのパレードで閉鎖されて人で溢れていて、しょうがないので地下鉄①と小走りで、向かう。
Gabriele Münter は昨年のTate Modernでのすばらしい展示 - 5回くらい通った - ”Expressionists: Kandinsky, Münterand The Blue Rider”で彼女の撮影した旅の写真も一緒に展示されていて、そこでも展示されていた”Portrait de Marianne von Werefkin” (1909) をメインビジュアルにした回顧展。会場の入り口にKandinskyの描いた彼女の肖像画があって、それがものすごくちゃんとしたふつーの肖像画なのでびっくりするのだが、彼女自身の作品も、力を入れたきちんとしたものから落書きのようににラフで適当なものまでいろいろ並んでいて、ここに写真作品まで含めると、地に足のついた生活者~たまに旅をする、女性の像が浮かびあがってくる。彼女の文章や手紙を纏めたものがあったら読みたいかも。
Matisse and Marguerite - Through Her Father's Eyes @ Musée d’Art Moderne de Paris
同じところでやっていた展示。最初はベルギーの画家Magritteをぶつけるのかと、ずいぶん斬新な企画だなと思ったら、マティスの長女のMarguerite Duthuit-Matisse (1894–1982)のことで、彼女を描いた作品にフォーカスした展示だった。娘を見つめる目が画家マティスの創作にどのような影響を与えていったのかを娘の子供時代からずっと追っている。以前METでセザンヌの妻にフォーカスした展示があったが、あれよりも熱く、ものすごい数のデッサンを描いたりしていて、彼を絵画に向かわせる動機 – よりももっと深い理由の何かがあったのではないか、と思わせる。終わりの方にはMarguerite自身の描いた絵もあったり。
Agnès Varda’s Paris - from here to there @ MuséeCarnavalet
再び地下鉄で少し戻って、カルナヴァレ美術館に向かって、これを。
1年以上前にCinémathèque françaiseでの回顧展”Viva Varda !”を見たばかりの気がしたが、これは写真家としての彼女、特に彼女がとらえたパリの街と人々にフォーカスしている。
彼女は自身のドキュメンタリーの中でも写真について何度も語っているが、写真ではとらえきれない生のその先に近寄って触れたりするために映画に向かったのでは、と思えるくらい魅力的な被写体としての人々の写真が沢山あって、彼女がそれらに向かって写真スタジオでカメラを構えていて、その外に映画やそれをとらえる別の写真家(JRとか)がいて、という幸せな循環のなかに自らを置いて表現をしていったのだな、というのがよくわかる展示。Frank Horvat等によるパリの素敵な写真もあって、とうぜん猫のもあって、ずっといたくなる展示だったが時間が。カタログがまたすばらしくて、ずっとページをめくってても飽きないの。
ここから少し離れたMémorial de la Shoahでは”Toute unenuit avec Chantal Akerman”というChantal Akermanの写真展もやっていて、でも土曜日、ここは休館なのだった(そしてもう展示も終わっちゃった..)。
Chantalもまたフレーム内に自分が写りこんだ「写真」を撮るひとであったが、Agnèsよりもクールにばっさりとこちら側とあちら側を切ってしまう、どこかのなにかに醒めて、諦めている感があるような。
そしてここからCinémathèque françaiseに向かって、15:00から上映されるJohn M. Stahlの”Father Was a Fullback”(1949)を見た。どうしてもこの作品を見たかった、というよりはCinémathèque française「で」映画を見る、というのをやりたかった、というのが正しい。映画もよかったのだが、それはまたあとで。
ここでのWes Anderson展も盛況のようだったが、あんな細かいのを見てまわるパワーは既になく、館内の本屋にだけ寄った。
この後はできればPetit Palaisの方にも行きたかったのだが、結構バテていたので、いつも行っている本屋 – Yvon Lambertにだけ寄って、あとは諦める。次に来るときは、”Yves Saint Laurent and photography”の展示と一緒に。
ロンドンへの戻りの電車に乗る前は、よろよろの仕上げとして、La Grande Épicerie de Parisで食材などを買って、もうこれ以上持つの無理、になったところで店の前のキオスクで雑誌などを買って、④の駅まで歩いて帰るのがいつもの恒例だったのだが、4月に衝撃の告知があって - 『個人使用目的でのEU全土からの牛、羊、山羊、豚の肉および乳製品のグレート・ブリテン(英国:北アイルランドを除く)への持ち込みが禁止』になってしまい、つまり、ヨーグルトもミルク(ボトルで買って帰ったことある)もハムもチーズも、帰りの電車で食べるサンドイッチも、パリ行きの愉しみの半分が潰されてしまったのだった。こんな悲しいことがあってよいものか。
しょうがないので、レイニアのチェリーとでっかいイチジクと、同様にでっかいアプリコットをやけくそで紙袋に(自分で)つっこむしかなくて、途中で買ったカタログ等大きめの本3つとあわせていつも通りのよろよろにはなったのだが、なんだか納得がいかず、そうやってパリ北駅に戻ると、まーたしてもユーロスターが遅れていやがって、さすがにいい加減にしてほしい、になった。 のだが車内にきて動きだすといつものように意識を失って、気がつけばロンドン、なのだった。
次はぜったいに一泊で行くから。
7.01.2025
[log] Paris June 28th
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。