7.09.2025

[film] The Swimmer (1968)

7月2日、水曜日の晩、BFI Southbankで見ました。
“Big Screen Classics” - クラシックを大画面で見よう、といういつものやつで、7月のテーマは「プール」だそう。

最初にJean Vigoの短編”Taris” (1931)が上映される。水泳チャンピオンのJean Tarisの泳ぐ姿、水中の姿を撮ったもので、Taris本人よりも水の動きや揺らめきの不思議、その音にフォーカスしているような。

監督は先月に”Last Summer” (1969)がBFIで異様な熱狂と共にフィルム上映されたFrank Perry、脚本はパートナーのEleanor Perry。原作はNew Yorker誌に掲載されたJohn Cheeverの同名短編で、Cheeverはカメオで出演もしている。 撮影終了後にリテイク/差し替えられた部分の監督はノンクレジットでSydney Pollackが担当し、差し替えされたパートにはBarbara Lodenが出演していたそう。邦題は『泳ぐひと』。 

アメリカ東部のコネチカット州 - お金持ちが暮らす州 – の森のなかの邸宅、日曜日のホームパーティーを開こうとしているプールがある一軒家の庭先に、どこからか水泳パンツいっちょうのNed Merrill (Burt Lancaster)が現れて、迎えた側もみんな彼を知っているようで歓待して、二日酔いが酷いけど一緒に飲もうよ、などと誘うのだが、彼はこの近辺の家にあるプールを全部泳いで渡っていけば自分の家に帰れるはずなのでそれをやってみたい、って一人で決めて意気込んで、そこのプールにざぶん、て飛び込むと、困惑する友人たちを置いてすたすたと次の家に向かう。

その行動を通して、Nedはその近辺のコミュニティに顔と名がそれなりに知られた人であることがわかってくるものの、彼がどこから、どこで水着一枚になって、そもそも何をするためにそこに現れたのかはわからないし、彼のアイデアも、なんでプールなのかも、何が起点や動機になっているのかも一切わからず、映画は彼の明るく屈託のない「アメリカン」の笑顔と年齢にしてはそんなにたるんでいないボディをアップでCMのようにとらえつつ追っていく。

庭には囲いや柵がない(囲う必要のない広さと安全がある)ので、彼はすたすた誰かの庭に入っていくと、彼を知っている人のなかにはよい顔をしない人もいるし、道端でひとりレモネードを売っている少年に会って、水のないプールで泳ぎを教えてあげたり、かつて彼の娘のベビーシッターをしていたJulie (Janet Landgard)と会って彼女がかつてNedに憧れを抱いていたと聞くと、一緒に行こう、って誘うのだが怖くなったJulieに逃げられたり、すっ裸の老夫婦がいたり、かつて愛人だった女優Shirley(Janice Rule - Barbara Lodenから替わった)の庭先でやっぱり冷たく(←すごい温度差で)追い払われたり、公営プールでいじわるされたり、足を怪我して寒いし、心身共にぼろぼろになっていく。

展開があまりに唐突だったり変だったり、だんだん彼への当たりがきつくなっていくにつれ、これが寓話のようなものだとわかってきて、ラストでやっぱり、となるのだが、それ以上にアメリカの階級や富裕層の当時の空っぽな(に見える)ありようがプールを介したランドスケープとして芋づるでずるずる連なってくるのがおもしろい。 David Hockneyはこの映画を見たのかしら?

アメリカでは普通の一戸建てでも庭にプールがあったりしてなんでだろう?と思っていたが、人種差別・偏見の煽りでパブリックのプールには入りたくない層をうまく取り込んでこのスタイルが広がっていった(というのがイントロで説明された)とか、Nedは白人なのであんな恰好で庭に入っていっても笑って手を振れば許されるのだろうとか、そういうことも思う。そんな特権的な”The Swimmer”(の終わり)。

そしてここに”Wanda” (1970)の真逆の、ネガティブであてのない彷徨いを重ねてみることは可能だろうか。可能なのではないか、とか。

それにしても、最後(は崩れてしまうが)までアメリカの笑顔と態度を維持しつつ半裸で歩き通したBurt Lancasterの力強さ、刻印するパワーのようなものにはすごいな、しかない。本人はすごく気に入っていた作品だというし。

そして、Frank Perryの映画としては(間にTV作品はあるみたい)、この後に” Last Summer”が来る、というのがなんとも。 そして、この後の映画”Trilogy” (1969)は未見なのだが、こないだ古本でこれの原作?本を見つけた。Truman Capote, Eleanor + Frank Perryの共著で、”An Experiment in Multimedia”とあって、Capoteの3つの短編 – “A Christmas Memory”, “Miriam”, “Among the Paths to Eden”の原作小説(by Capote)とScript(by Eleanor Perry + Capote)とFilmのスチールとクレジット、翻案にあたってのNote(by Eleanor)がセットになっているの。 まずは映画を見たい。
 

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