7月24日から27日まで、夏休みでスイスに行ってきた。 あまり深い理由はなくて、まだ行ったことない土地の候補から選ぶ、くらいで。
美術館がいっぱいあるので最初はそこを中心に計画を立てていくのだが、一日くらい山の方に行ってみたいかも、と思ってAIさんに相談を始めた。こういう、なにがなんでも、ほどの強さがないようなぼんやりした思いつきについて、そういうのを相談する友達もいない、旅行代理店には聞きたくない、Web検索もめんどい、という時にAIさんて便利だなー、って初めて思った。まあそうだよね、みたいな答えになりがちなのはしょうがないのか。
山を入れたので予定は3泊になり、チューリッヒ(英語だとズーリヒ)を中心に動いた方がよさそう、となって飛行機とホテルを取ったら現地に着くまでほぼなんもしなくて、飛行機離陸前からじたばたしてそんなこんなで当日にばたばたして旅の印象も余韻もくそもなくなる、というのを繰り返している。
加えて今回は天候がずっとよくなさそう、というのもあり、しょうがないけどなんか気がのらない。
とりあえず見たのをざっと、と書き始めたら長くなってきたので土地別にてきとーに切る。
Grossmünster
着いてホテルに荷物を置いて、雨の中まずここに。プロテスタントの教会。
ヨーロッパの町を旅するとき、その場所のランドマーク的な大聖堂に入ると、その町にとってその宗教がどんな位置や価値をもってそこにあったのか、雰囲気だけでも感じとることができて、その印象を抱きつつ見ていくと、短期間でもなにか得られるものがあるのではないか、と。
アウグスト・ジャコメッティ作のステンドグラスがあって、思っていたよりモダンなかんじだった。この、古くからあるけどモダンも躊躇なく入れていく、はスイスの他の土地でもあったような。
Kunsthaus Zürich
チューリッヒ美術館。ここはもう中央ヨーロッパの総本山のようなもんなので、Swiss Travel Passが効かなくても展示全部のせでいく。全部見せろ。
A Future for the Past
2010年にこちらの収蔵となったEmil Bührle Collectionを中心によくある西洋近代絵画のクラシックを現在の視点・目線で結ぶようなことをやっていて、入り口にルノワールの典型的な「美少女」がきらきらと置いてあるのだが、マネの「自殺」とか「梟」を含むいくつかがすばらしくて別にそんな小賢しいことしなくても。それより量を見せてほしい。
Monster Chetwynd
でっかいインスタレーションを含む彼女のレトロスペクティヴ(?) 本国英国ではやらないの?
古今東西のイマジナティブなのも含む怪獣/化け物/妖怪総図鑑のようで、小さなジオラマから巨大ぬいぬいまで、その生きている - 頭のなかでのたくって巣食って増殖してざわざわむずむず痒くなるかんじときたらTim BurtonやWes Andersonの比ではなくて、とにかくみんな生きている。その普遍性のようなもの - もちろんそんな簡単ではないのだが - っていったいどこから来るのだろうか? カタログ、欲しかったけど分厚すぎて諦める。
Kronenhalle
1924年創業のレストランで店内に近代画家の名品の本物が沢山飾られていることでも有名で、最近だと(旅行誌なんだかファッション誌なんだかはっきりしろの分厚さで復活した)雑誌Holidayのチューリッヒ特集号で3種類あるうちのひとつの表紙を飾っている。
昔から行きたくて、でもディナーは敷居が高いのでランチを予約して、これだけのためにジャケットとか革靴を持っていった。掛かっている絵はPierre Bonnard (5枚)、Braque (4枚)、Chagall (5枚)、Augusto Giacometti, Giovanni Giacometti, Ferdinand Hodler, Kandinsky, Klee, Matisse, Miró (5枚), Picasso (2枚), Rodin, Varlin (Willy Guggenheim), Vallotton, Vuillard, などなど。 これだけで美術館になりそうな、20世紀初のヨーロッパ近代絵画の見事な部分がひと揃えあって、壁じゅうに掛かっているのを端から見ていきたかったのだがもちろんそんな雰囲気の場所ではないのだった。
通された席に掛かっていた絵は、これってBonnard? と思って後で調べたらやっぱりそうだった - “Ferme à Vernon” (1932)。大失敗だと思って今だに後悔しているのは絵を背にしてしまったことで、向かい合って座ればよかった。でも食事が来るまでの間、背中ごし50cmくらいのとこでずっと絵に張りつくようにして眺めることができた。
メインは仔牛のヒレを薄く切ってクリームで煮たやつ - Zürcher Geschnetzeltesにポテトのパンケーキ Rösti、というスイス料理のクラシックど真ん中でいってみたのだがもちろん外れない。前菜は季節ものでアカザエビのタルタルに西瓜、でほんのり甘くて爽やかで。
お腹はじゅうぶんに膨れたのだがデザートを抑えることなんてできるはずがあろうか、とカラメルプディング - 所謂プリンをとったら固め正統どまんなかのやつで、そうこなくちゃね、と堪能した。
Museum Rietberg
登るのが大変な丘の上にある見事な庭園つきの洋館で、でも収蔵/展示品は非ヨーロッパ圏のアジア・アフリカのものが中心で、コレクション(年代、地域?)がよいのか並べかたがよいのか謎なのだが、すばらしい落ち着きと不思議な調和を見せる。他のところではよく、こんなふうに並べられちゃってごめんね、みたいな展示があったりするが、ここのは置かれたものたちも静かに余生を楽しんでいるように見えた。そう、展示物というよりまだ生きているみたいに。
そこから再びチューリッヒ美術館に戻って、ランチのために中断していた鑑賞の続きと、別館の特別展を。チケットはステッカーをどこかに貼っておけば一日有効。
Suzanne Duchamp Retrospective
マルセルデュシャンの妹であるSuzanne Duchampの初の回顧展だそう。ダダ方面での活動が知られている彼女だが、その前はキュビズム風だったりマティス風だったり結構揺れていておもしろい。兄のマルセルもそういうとこあるしな。(わたしはマルセル・デュシャンって相当軽くていい加減な詐欺師系の人だったと思っている)
Roman Signer. Landschaft
広いフロア全部使って、彼がやらかしてきたいろんなランドアートを動画もいっしょにぶちまけていて、バカじゃのー (褒)みたいのが多い。けど嫌いになれない。
美術館を出て川に向かう通り沿いにギャラリーが並んでいて、Mai 36 Galerie というところでThomas Ruffの小展示をやっていたので入る。写実系の写真というより即物的な光と影の実験系の作品たち。
行ったことのない町の美術館とか展示とか、事前に調べられるものはそうするのだが、実は街角とか駅に貼ってあるポスターにいちばんフレッシュに惹かれてしまうことが多くて、夕方17時くらいにまだ陽も照っているしまだなんか見たいんですけどー、という時にこれのポスターを見て、電車で30分くらいのところだった(この日の閉館は20:00)ので行ってみることにした。
Kunst Museum Winterthur
夏の夕暮れ、隣の公園でみんな涼んでいて気持ちよさそうだった。
Félix Vallotton: Illusions perdues
ヴァロットンは、丸の内でも見たしロンドンでも何度か見ているが、今回のはいろいろ新鮮で改めておもしろく。
デルヴォー風のエロ妄想に浸っているのとか、いきなり切なさ寂寥感をかき立てられるようなのとか、直情的に訴えてくるものが多いと思うのだがそのレンジがさらにIllusionのように無尽蔵に広がって、なんだこれ?(よい意味で)みたいのが多くあった。浜辺で男女が裸踊りとか、なんなの?
その他はここの収蔵品だったのが戻ってきたCaspar David Friedrichの”Chalk Cliffs on Rügen” (1818) とか、あとスイスの画家としてFerdinand HodlerとかArnold BöcklinとかGiovanni Giacomettiとか、どこの美術館でも割とふつうにクローズアップされていた。
夕食は抜いてもぜんぜんへーきだった。
7.29.2025
[log] Zürich - July 24 2025
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。