7.12.2025

[film] Walker (1987)

7月5日、土曜日の午後、BFI Southbankで見ました。
7月から8月の2ヶ月間を使った特集 – “Moviedrome: Bringing the Cult TV Series to the Big Screen”からの1本で、でもそもそもこれってなに? になる。
 
“Moviedrome”というのは1988年から2000年までBBC2で放映された「カルト」とカテゴライズされた(されがちな)映画を放映していくプログラムで、88年から94年までAlex Coxが、97年から00年まではMark Cousinsがホストとなり、全207本が放映されて、今BFIに通ってきているような50代の中高年たちはこのプログラムに脳をやられてしまった連中が多いのではないか、と。 で、この特集はここで放映・紹介された当時カルト呼ばわりされていた古今東西の変てこ映画たちを上映していくのだそう。ちなみに特集の初回は放映の初回とおなじ”The Wicker Man (Final Cut)” (1973)。

興味がある人はWikiの”Moviedrome”の項に放映された映画のリストがあるので見てみてほしい。こんなのが不定期とはいえ国営放送でじゃんじゃか流れていたなんてうらやましいったらない。
 
で、Alex Coxが1987年に監督してAlex Coxのホストにより1992年に放映された映画を、Alex Coxの紹介つきで見る。
 
配られた紹介ノートにはAlex Coxが当時番組内でカルトについて語った言葉がある。
 
『カルト映画とはなにか?カルト映画とは、熱狂的なファンがいるものの、万人受けするわけではない映画のことです。カルト映画だからといって、必ずしも質が高いとは限りません。ひどいカルト映画もあれば、非常に優れたカルト映画もあります。興行的に当たった映画もあれば、全くスカスカだった映画もあります。質の高い映画とされるものもあれば、ぼったくりのような映画もあります』 - カルト映画の定義というよりはこんなもんです、くらいのー。
 
登場したAlex Cox氏は、パンクで荒んで怖いイメージかと思ったら全然ちがう、スマートでおしゃれで朗らかに喋る人だった(ちょっとJohn Watersぽい)。
 
ニカラグアで撮影されたアメリカ映画で、原作は”Two-Lane Blacktop” (1971)や”Pat Garrett and Billy the Kid” (1973)を書いたRudy Wurlitzer。
 
1853年、戦地で弾も当たらないし向かうところ敵なし(と思いこんでいる)の傭兵William Walker (Ed Harris)が太平洋と大西洋を結ぶ陸路の権益を狙う富豪のVanderbiltに焚きつけられて内戦状態のニカラグアをどうにかすべく自ら「大統領」を名乗って兵を寄せ集めて進軍を開始するのだが簡単に自滅する、という話を無駄なエモ(婚約者のEllenが亡くなるところ以外)抜きで直線で描いて、いまのニカラグアと同様、誰にも顧みられず放っておかれるばかり、というひどい話。
 
目の前で何が起こっても壊れてしまったかのようにちっとも動じない、そしてそのままあっさり消えていくWalker = Ed Harrisがすばらしく、”Apocalypse Now” (1979)のKilgore (Robert Duvall)のよう、と思ったが、上映後のQ&Aで二本立てを組むとしたら併映は?の問いに監督は『アギーレ/神の怒り』 (1972)と即答していたのでそっちの方なのか。
 
あとは(映像で少しだけ登場する)レーガンの時代のアメリカを、あの当時のあの国の傲慢さを反映したものでもあって、比べられるものではないけど、今の方がよりひどいのではないか、とか。
 
音楽は(出演もしている)Joe Strummerで、この頃の彼の取組みだったのか、ややトロピカルで能天気な音楽が戦場の悲惨さをまったく無視してさらさらと流れていって、これはこれでおもしろい。戦争の悲壮感や悲惨さから遠くあろうとする映画の距離感とうまく合っているような。

音楽関係で他に出演しているのはPoguesのSpider Staceyで、上映前にステージから「Spiderいるかー?」って監督が呼んでいたが、来ていなかったみたい。
 
映画のカルトはおもしろいし歓迎したいけど政党のあれは許されるものではない。ふざけてるんじゃないよ、って怒りを込めてあのしち面倒くさい在外投票に行ってきたりした。

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