5.01.2025

[film] Sinners (2025)

4月27日、日曜日の午後、BFI IMAXで見ました。

この作品を70mm IMAXでヨーロッパで上映しているのはここだけらしいのだが、Mark Cousinsさんも言っていたようにこの映画での70mm IMAXの迫力はとんでもなかった。 画面アスペクト比がころころ変わったりするのだが、横いっぱいに広がった時の目の前に広がる景色のぞくぞくくる気持ちよさときたら。

Black Panther (2018)のRyan Cooglerによる時代劇で、予告を見た時はどういうものなのかちっともわからなかったが、吸血鬼、というよりはゾンビホラーであり、でも中心にくるのは音楽 – Bluesなのだった。BFI IMAXでは、上映前にポスターなどがプロジェクションされるのだが、主要登場人物の名前のところには”We Are All “Sinners””とあって、そういう”Sinners”である、と。

1932年のミシシッピで、Sammie (Miles Caton)が傷だらけの血まみれになって父である教会の牧師(Saul Williams)のところに倒れこんできて、そこまでに何があったのかが、綴られていく。

その前の日、双子のSmoke (Michael B Jordan)とStack (Michael B Jordan)のふたりが車で教会の前にやってきて、クラブでひと晩のライブイベント - Juke jointをやるから、とSammieを誘い、牧師はBluesはいかんぞ… って警告するのだが、彼は無視して車に飛び乗って、畑を抜けていく道中で、ピアニストとか、歌手とか、料理人とか、食料品店の中国人夫婦とか知り合いを中心にリクルートしていくのだが、そこではSmokeの別居中の妻Annie (Wunmi Mosaku)とか亡くなった子供のこと、Stackの元カノのMary (Hailee Steinfeld)などが浮かびあがったり現れたり、みんなそれぞれいろんなものを背負っていることがわかる。

さらにその途中で、アイリッシュの吸血鬼、としか思えない目をしたRemmick (Jack O’Connell)が出てきて、傍にいた夫婦を吸血鬼にしてしまったり、その背後にはKKKがいるのが見えたり。

彼らを吸血鬼だよ、って察したAnnieは吸血鬼対策としてガーリックとかいろいろ準備して、Juke jointが始まってSammieがギターを弾きだすと過去から未来までの音楽とダンス – Bootyみたいなラメラメのギター弾きとかヒップホップから京劇まで - が天地を貫いて炸裂してどんちゃん騒ぎになるのだが、その騒ぎに引き寄せられるようにアイルランド民謡を踏み鳴らして盛りあがる吸血鬼の群れが家を囲んでいて、封をしても見張りを立ててもどうしても入りこんできて、ひとりまたひとりと..

パーティで騒いでいる一軒家に夜、邪悪なものが寄っていって囲い込んで、というのはホラーでお決まりの設定と展開で、今回はそこにMichael B Jordanがふたりもいるので、マッチョな肉弾戦になるのかというと、終わりの方でアクションはそれっぽくなるもののそっちの方には余り行かない。アジア系、ブラック、ホワイト、passingの人、いろいろな人たちの坩堝を圧し潰してひとつの属性 - 吸血鬼だかゾンビといった伝染化け物に変えてしまう魔力が取り憑いた時、そこにおいて音楽は、ギターはどんなパワーを持ちうるのか、と大真面目に問う。やはりRobert Johnsonを持ち出してくるしかないのか。

B級といえばパリパリのB級で、Quentin TarantinoやRobert Rodriguezの路線をやりたかったのかも知れないがやや盛り込み過ぎだし、この人が自作で追ってきた「継承」のようなテーマもないし。でも代わりにあるのは怒り - いまのアメリカが「多様性」に対して仕掛けようとしているのってこれら(アイルランド系)ゾンビの振る舞いと大して変わらない、B級〜とか言っているうちにしゃれではなくなって、噛まれてからではもう遅い、そういうあれこれに対する、或いは自分自身に対する怒りも。30年代が舞台の話とは思えない。 となったところであんなエンドロールが。

批評家ウケはあんまよくないみたいだが、いま見るべき映画だと思った。ところどころすごく好き。

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