5.13.2025

[music] The Pogues

5月3日、土曜日の晩、O2 Academy Brixtonで見ました。

彼らの2nd “Rum Sodomy & the Lash” (1985)のリリース40周年に合わせてフルで演奏するライブで、2024年の”Red Roses for Me” (1984)の40周年記念ライブに続くシリーズなのか。

2023年のShane MacGowanの死と共にThe Poguesというバンドは無くなったのだ、と誰もが思っている。 ShaneもPhilip ChevronもDarryl Huntも亡くなり、Terry WoodsもAndrew Rankenもいない。残っているのはSpider StacyとJem FinerとJames Fearnleyの3人だけで、ゲストをいくら加えたからといってそんなのThe Poguesとは名乗れないのではないか、と。

でも、アイリッシュトラッドの野卑な獰猛さをパンクに結び付けて、それを一揆の音楽として練りあげていった彼らのスタイルはバンドがなくなったからといって塵にしてしまうのは惜しいし、それにShaneなんて生きている時から(90年代以降はずっと)ステージ上では死んでたようなもんなのだから、こういうのもありなのではないか、と。しかも会場はAcademy Brixtonなのだし。

などと思ってチケットを探そうとしたらとっくに売り切れていて、たまにリセールでフロアのスタンディングのが出てくる程度。あの会場で、Poguesのスタンディングで揉まれたら体が八つ裂きにされてしまうと思って、2階席のを追っていたらどうにか一番前のが釣れた。

直前まで映画を見ていて、開演に間に合わないかと思ったが、Brixtonの駅の近くから"Dirty Old Town"を肩を組んで歌いながら会場に向かう酔っ払いの群れを見て少し安心する。着いたのは9時少し前、そこから5分くらいで始まる。フロアを見下ろすと、既に“Rum Sodomy & the Lash”のジャケット - ジェリコーの『メデューズ号の筏』 (1818)みたいな状態のぐじゃぐじゃで。 病みあがりだったので、あそこに入っていったら簡単に死ねるな、とか。しかし40周年であるのでモッシュでべちゃべちゃになっているのって老人ばかりなのよ。

さて、”Rum Sodomy & the Lash”というアルバムは、この後の”If I Should Fall from Grace with God” (1988)でそのスタイルを完成させて世界的に成功するひとつ手前、バンドのラインナップが固まって、でもレーベルはStiffでプロデュースはElvis Costelloで、粗削りのライブの勢いをそのままもちこんで、でもトラッドもいっぱいあって、危なっかしいけどひたすら前のめりで、”If I Should Fall from...”よりも生き生きと跳ねまわっていて、よいの。

ステージ上にはアイリッシュハープもあるし、でっかい太鼓もあるし、バグパイプもある。曲によって替わる女性ヴォーカルは3人、ホーンもいるし、多いときで13人くらいがステージ上にいる。Spiderがご機嫌に客を煽って、つるっぱげのJames Fearnleyがそれに乗っかり、Jem Finerはいつものように学校の先生で、それ以外はミュージシャンみたいなミュージシャンたちが椅子に座ったりして演奏する。でも結局リズムがどんどこで、ぎゃーって雄叫びがあがったら突撃するしかないのだろうな(かわいそうに..)。

一曲目の"The Sick Bed of Cúchulainn"はスタンディングの前方からばしゃーんとかびしゃーんみたいな水が炸裂する音(要はビールの)がいっぱい聞こえて、そういう盛りあがりとは別に、音の方は細かったり荒縄いっぽんだったところが重ねられたり補強されたり、よい意味での大船になっていた。これなら旗を立てても帆をはっても飛ばされることはあるまい。音をきちんと重ねてもその勢いが削がれることはなく、客はどっちにしても幸せに突っ走っていくので、なんの不満があろうか、って何度も頷く。

曲順はアルバム通りではなくて、やはり盛りあがりを考えているのか、本編の最後は女性3人が横並びで"London Girl" – エムザ有明での初来日公演のアンコールがこの曲だったなあ、鼻からビールをぶわーってやったShaneの笑顔が忘れられないなー、とか。 アンコールの最初は“The Irish Rovers”、エンディングは”Sally MacLennane”だった。

それにしてもさー、40年だよ。「ラム酒と淫行と鞭打ちしかない」(by チャーチル)が40年って、なんで? も含めて、なんでこんなことに?/こんなふうになっているなんてー、しかない。狂っていなかったらとてもやってらんないよね。

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