5月18日、日曜日の昼、BFI Southbankで見ました。
大きいスクリーンでクラシックを見よう、の枠で、BFI所蔵のArchive 35mm Printでの上映。
アメリカの50年代の映画がなにを見てもそんなに外れないのはイギリスの50年代についても同じで、有名なEaling Stidioのは勿論、他のヨーロッパの国々に負けないように国の威信をかけた産業としてやっていたのと、演劇の伝統もあるのでよい脚本と俳優がいくらでもあったとか、とにかくおもしろいんだって。
犯罪巻き込まれすっとぼけコメディで、監督はRobert Day、ノンクレジットでBasil Deardenがサポートしている。元は舞台劇 - “Meet a Body”を元にしたもの。
Harry Hawkins (Alastair Sim)は爆弾を使っていろんな殺しを請け負ってきたプロの殺し屋で、でももう老いたので次ので終わりにしようとしている。今回依頼を受けたターゲットはSirの称号をもつビジネスマンで、まずその秘書の女性にアプローチして彼がタイピストの女性を連れて週末に海辺のホテル”The Green Man” - なんでこれがホテルの名前なの? - に滞在することを知ると、自分の棲家に戻って爆弾の製造と準備を始める - のだが嫉妬に狂った秘書がHarryの家まで乗りこんで来て様子を見られたので始末したら、それをたまたま隣にやってきた掃除機のセールスマンWilliam Blake (George Cole)とその家に新婚で暮らす予定だったAnn (Jill Adams)が何かを察知して、彼らの勘違いも込みでの大騒ぎの追いかけっこが始まるの。
誰も事態を正しく把握しないまま大変だぁ、ってそれぞれ勝手に騒いだら、それが延焼して手がつけられなくなって、パニック起こして目を瞑って大振りしたらたまたま当たっちゃった、みたいに転がっていく痛快捕物劇、そんなに悪玉に見えない犯人(とその助手)はほんとついてなくてざんねーん、みたいな、昔の赤塚不二夫の漫画みたいなオチの。
要領が悪くて融通が利かない困った英国人たちをそのまま野に放って好きなように振るまわせると暗殺の企てすらこんなおかしく捩れてなんでこんなことに… ?になって、でもそれがあまり変なふうに見えない、どこが変なのかきちんと指摘できない、という底意地の悪いおかしさ - これも、掘ればなんでおかしいんだろう? ってなりそう - が底にあってとても納得する。
終わってみんな思わず拍手してしまうのだったが、どこが? と問われたらなんか固まってしまいそうなー。
The Man Who Finally Died (1963)
5月17日、土曜日の夕方、BFI SouthbankのMai Zetterling特集で見ました。
Mai Zetterlingが女優として出演した(でもそんなに出てこない)イギリス映画で、監督はQuentin Lawrence。1959年にTV放映されたドラマのリメイクだそう。これもBFIのアーカイブプリントでの上映。
ドイツ移民でイギリスに暮らしていたJoe (Stanley Baker)はずっと昔に死んだと思っていた父が亡くなった、というドイツからの知らせを受け、首を傾げつつ現地に向かうと、どこか胡散臭そうなvon Brecht博士(Peter Cushing)や 父と結婚していたというLisa (Mai Zetterling)が現れて、でも彼らに父の最期の様子を尋ねても普通の病死だった、としか言わないし、警察は煙たがるようにとっととイギリスに帰れ、とそればっかりだし、怪しげな保険屋は現れるし、カトリックなのにプロテスタントで葬儀が行われているとか、葬儀にLisaらが参列していなかったことまでわかると、父はまだ死んでいないか何かの事件に巻き込まれたのではないか、と疑い始めて止まらなくなっていく。
どことなくMorrisseyを思わせる風貌のStanley Bakerのエネルギッシュな動きと固い表情がすべてで、とにかく諦めないで父の墓まで掘り返してしまう強さと頑迷さが、戦後のドイツとイギリスのそれぞれのありようまで示しているような。
最後はあんなところまで転がっていくとは思わなかった。戦争で生き残ってしまった人々は、自分はどこでどうやって死ぬ・消えるべきなのか - “Finally Died” - までを常に考えていたということなのか、というのと、敵国だった国に戦後移民として渡っていった人々、自国に留まった人々それぞれの思いとか。
5.27.2025
[film] The Green Man (1956)
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