6月27日、土曜日の昼にBFI Playerで見ました。
“Part 4”はChapter26から34まで。紹介された映画は98本。ナレーションはSharmila Tagore → Thandie Newton → Kerry Foxとリレーされた。Part3の最後で個別のジャンルに行って、その後の章立てはやや散文的になってきた気もする終盤。とにかくメモだけ。
Chapter 26 Melodorama
“Shoes” (1916) by Lois Weber の公園でひとりサンドウィッチを食べる女性の描写 – Powerlessness, 自分ではどうすることもできない痛みや被害者の感覚から入って、”Chekhov's Motifs” (2002) by Kira Muratova の会話の抑揚や感情の動きがテンションを生んで、それが火山の噴火(父の家出)に繋がっていくようなのとか、単に嗚咽や死で終わるだけではないメロの多様さ。最後はGreat Melodoramaとして田中絹代 -『恋文』(1953) のラストシーンが。
Chapter 27 Sci-Fi
最初はみんなが知ってる”The Matrix” (1999)のbullet-timeが新しいアクションの見方を紹介した、と。ところでこれ、公開当時は彼らWachowski Brothersじゃなかったっけ? - ま、いいか。同じく彼らの”Jupiter Ascending” (2015) のコレオグラフとか、”Tank Girl” (1995)のコミックにスリップするとことか、TV映画だけどどうしても出したかったんだと思う”The Handmaid's Tale” (2017)で女性が監督している”Offered”のパートとか、嬉しかったのが、”My Twentieth Century” (1989) で星が犬に話かけるところ。
Chapter 28 Hell and Horror
ここはいっぱい、19本も。最初に”Huis-clos” (1954) by Jacqueline Audry でサルトルの”Hell is Other People”が導入されて、”Earth” (1998) by Deepa Mehta のホームに来た列車に死体がいっぱいになっているリアル・ライフ・ホラーとか、監禁とか拷問とか。Abuse, Murder, Torture, War, HomelessnessのいろんなHellといろんなHellの複合がやってくる”The Babadock” (2014) - その対極にあるstaticな家族のHell – “Archipelago” (2010) by Joanna Hogg とか。地獄は逃げることができないから地獄なのだ、というのとそれは結局Other Peopleだから .. というヘルなケースがいっぱいで、この辺のヘル観は作り手のジェンダーによって結構異なるのではないかしら。
Chapter 29 Tension
まずはリアル・ライフ・テンションとして”Demon Lover Diary” (1980) by Joel DeMott のドキュメンタリー撮影現場、”Dreams of a Life” (2011) by Carol Morley のドキュメンタリーが露わにする真実の瞬間とか。平穏であるはずのダイニングシーンに浮きあがってしまうテンション、追跡現場の、出産現場の、屠殺現場のテンション、テンションの高まりが怒りとなって暴発するシーン – “Selma” (2014)とか、そのカオスが渦を巻いて社会全体のテンションに拡がっていくとか。
Chapter 30 Stasis
テンションの反対側でそれを鎮める和らげる停留・滞留状態について。”Places in Cities” (1998) by Angela Schanelec の怒りのこもったSexの後に約2分間続く黒スクリーンとか”Brownian Movement” (2010) by Nanouk Leopold のSexの後、外で横になって考える時間、とか。横になって動かず、静かに眺めるとか、動きの少ない状態 - 寝る食べるとかカメラもFixで、でもそれだからといってこちらの考えも停止してはいいわけではなく、その状態でどれだけこちらの認識や感覚を突っついて動かせるか、と。その点では”Marlina the Murderer in Four Acts” (2017) by Mouly Surya のシメントリックな部屋の配置に首なしの体が運ばれてくるとこなんてなかなか。
Chapter 31 Leave Out
画面から見えない/見せないことで見せる・わからせるやり方あれこれ。 性的なあれこれ - レイプ、自慰等々をダイレクトに見せずに描く、もうひとつは宗教上の掟として”Wadjda” (2012) by Haifaa Al-Mansourや”The Sealed Soil” (1977) by Marva Nabili での顔を見せない、見せてはいけない女性たちの姿、”The Day I Will Never Forget” (2002) by Kim Longinotto の対話として描かれる割礼の話とか。物理的なOn-Screen – Off-Screenの例 – “Baxter, Vera Baxter “(1977) by Marguerite Duras とか、更には登場人物がこちらに語りかけたりすることで見えないカメラの存在を明らかにする”The Story of the Flaming Years” (1961) by Yuliya Solntseva とか。
Chapter 32 Reveal
物事の全貌や真相って画面の上ではどんなふうに明らかになったり暴かれたりするのか。カメラが引いていって様子がわかる – “Morvern Callar” (2002) by Lynne Ramsay の転がっている彼の死体とか、”The Story of the Flaming Years” でクレーンがあがって男の死体がわかるとか。Plot reveals, Death reveals, Love reveals, God reveals、等。”Lourdes” (2009) での神の顕現とか、そうそうこれがあった、の”Stories We Tell” (2012) by Sarah Polley での会話のピンボールによって明らかにされていくなにか。
Chapter 33 Memory
思い出や記憶はどんなふうに画面上で表現されるのか。”Elena” (2012) by Petra Costa で死者について語ることで記憶がそこにあること、”Pet Sematary” (1989) で、墓場から蘇ることで形を表わす生前の記憶、とか、歌が呼び覚ます、双眼鏡で覗きこむことで現れる過去の映像、とか。”The Enchanted Desna” (1964) by Yuliya Solntseva で子供が畑を走っていくシーンで個人ではない国としての記憶がフラッシュバックされるところとか。でもこればっかりは文学のが得意なのかもな、とか。どっちがすごいとか意味ないけど。
Chapter 34 Time
映画は時間を早めたり縮めたり自在にコントロールすることが得意なの。まずは古典の”Falling Leaves” (1912) by Alice Guy-Blaché の落ち葉を止めたり遅らせたりするのから入り、”Les rendez-vous d'Anna” (1978) by Chantal Akerman - 冒頭のなんの加工もないリアルなタイムイメージを示して、”My Twentieth Century” でのふたつの列車の間で見つめ合いつつ共有される時間 - 世紀が変わった瞬間とか。 時間の経過を表わす暗転の使い方、タイトルに合わせて現在にジャンプする、或いはタイムマシーンとしてのいろいろすっとばしていくカメラ等、早送りされる時間。その逆に引き延ばしたり早回しされたりフラッシュバックの中でフラッシュバックしたり、”The Future” (2011) by Miranda July の中で彼女の時間が止まるシーン(その間なんでもできる)。そしてもちろん忘れてはいけない”Orlando” (1992) の時を駆けていく自由。最後は”The Day I Became a Woman” (2000) でのGirlhoodの終わりを告げる時間表現 - 素敵。
これ、9月からアメリカのTCMでも放映されるって。
英国でのPart5までをChapterをもう少し細かく切って14夜にして12/1までの毎週火曜日から水曜日の朝まで。本編の後、Chapterに関連した女性監督による作品群(本編内で紹介されていないのも含まれているみたい)も放映される。 これ、企画するの楽しいだろうなー。見たいなー。
https://womenmakefilm.tcm.com/
最後に映画館で映画を見たのが3月18日、少し立ち止まってうーって考えたのちオンラインで映画を見始めたのが3月28日で、そこからずっと平日1日1本は見て、週末土日は2本以上見て、4月1日から見た映画の感想を1日1本ポストする、っていうのをやってきた。飽きたらやめようと思って始めたのだがこれがなんとなく続いてきて、でももう100本超えたし、いろいろ再オープンして週末には出掛けられそうな場所も機会も増えてきたので、書くペースを以前のペースに戻そうか、って。 べつに誰に頼まれたわけでもなんかの誓いを立てたわけでもないのだけど、自分にいちおう言っておく。 見る方は変わらずやめない。
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