2日、木曜日の晩、Criterion Channelで見ました。なんとなくー。
邦題は『傷だらけの愛』 - 劇場未公開、TV放映のみ、だそう。原作はAlex Karmelの小説”Mary Ann”で、脚本は監督のJack GarfeinとAlex Karmelの共同。 86年のJonathan Demmeによる同名映画 – 傑作 - とは別もの。
NYインディペンデント映画の起源のように言われている作品なのだが、自分がイメージしているそれとは結構違う。低予算ぽいけどプロダクションは相当しっかりしている気がした。
冒頭のタイトルシークエンスでは、Aaron Coplandのスケールでっかい音楽にのって、Saul Bassが切り取った街の風景がクールに流れていく – ここまでだと都会の真ん中でダイナミックに展開するサスペンスかコメディか、って思う。
大学生のMary Ann Robinson (Carroll Baker)が夜中、帰宅する途中、家の近くで公園の繁みに連れ込まれて何者かにレイプされ、よろよろと立ちあがって家に帰り、放心状態で風呂に入ると着ていた服も下着もずたずたにハサミで切って捨てて、親にはバレないようにしたいらしい。
翌日、まだショックは続いていて大学に通う地下鉄のラッシュで人混みが気持ち悪くなり、帰り際にも卒倒して警察の世話になって家まで連れていって貰ったら心配性の母親はひたすらうざくてやかましいので、自分で週いくらの安アパートを見つけて、リテール雑貨屋のバイトも探してひとりで暮らし始める。のだが、バイト先の仕事仲間には馴染めず、アパートの隣の酔っ払いもこれ以上は絡まないで、になって、マンハッタン橋からきれいな川面を眺めて身を投げようとしたらそこにいた機械工のMike (Ralph Meeker)にとめられる。
Mikeは彼女を近所の自宅に連れて行ってミルクをあげて介抱してくれて、やさしそうな人のようだし少しここにいてみようか、と横になっていると、夜になって戻ってきた彼はぐでんぐでんに酔っ払って凶暴になっていて、寄ってきて怖いから蹴っとばしたら目に当たったようで翌日は眼帯して失明したみたいなのだが、本人はなんも覚えていないという。それはそれでやっぱり怖いので、もう帰りたい仕事もあるし、というとだめって鍵をポケットに入れて出してくれない。君の命を救ったのは自分だしずっと君を見ていたいんだ、って。その流れでふつうの顔でプロポーズしてきて、Mary Annは断固拒否して.. (ここからまだまだ驚愕の展開が)
レイプされて心身憔悴して身投げしようとして助けてもらったと思ったら監禁、ここまでずっと周囲にふつうに助けてくれるまともな人がひとりも出てこない – 確かにSomething Wildとしか言いようがない都会の闇が極めてリアルに具体的に描かれていて、ひとつひとつはそんなに違っていないかも。でもそれらが全部いっぺんに立て続けに来たり起こったりするのはホラーだし、そこからサマーソルトを決めてしまう結末はもっとびっくりかも。
そういえばCarroll BakerさんはTennessee Williams - Elia Kazanの”Baby Doll” (1956)でも20歳になるまで性的関係を持たない婚姻契約を結んだ歪んだ中年男の元で監視監禁されてしまう女性(のちに逃亡)の役だった。あれは大田舎が舞台で、こっちは大都会ので、ついてないとしかいいようがない。 (いちおうこの作品の監督はCarroll Bakerさんの旦那だという)
Aaron Coplandの音楽はすばらしく、ここでのピースは後程 - "Music for a Great City" (1964)として再編されるのだが、最初はMorton Feldmanに依頼が行ったのだそう。それはそれで聴いてみたかったかも。
いくつかの画面 - Mikeの部屋で放心状態になって座りこんでいるMary Annの姿 - はEdward Hopperのいくつかの絵画の構図そっくりだった。 ふたりいてもいっぱいいてもどこまでもひとり。
七夕なのに大雨で、しかもまだ火曜日とか散々なのだが、BBCでもEuronewsでも九州の水害の映像が繰り返し流れてきてそれどころではなさそう。ひとりでも多くの人が犬が猫が救われますように。ご無事でありますように。
7.07.2020
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