4日、土曜日の昼間、Curzon Home Cinemaで見ました。今年はVirtualで開催されることになったEdinburgh International Film Festivalの作品が数日間だけCurzonに来ていて、ふーん、てよく見たらMarco Bellocchioの新作だったので慌てて。他にRon Howardのドキュメンタリーもあったのだが油断していたら消えてしまった。英語題は”The Traitor”。
実在したシシリアンマフィアのボス - Tommaso Buscetta (Pierfrancesco Favino)の評伝ドラマ。
1980年の9月、パレルモのSaint Rosaliaのお祭りでマフィアのファミリーが親戚家族も含めて集合していて、そこには旧い勢力と新しい勢力がいるのだ、という説明があって、その冬にTommasoがリオに滞在している時、イタリアで彼の身内が何者か - 言うまでもなく同じパレルモのマフィア - に次々と殺されていく様子が描かれる。
84年にドラッグ密輸容疑でブラジル当局に拘束され、冗談みたいにありえない拷問を経てイタリアに送還されてからはローマの監獄で判事Giovanni Falcone (Fausto Russo Alesi)の前でファミリー - Cosa Nostraの組織、関係者、お仕事そのもの - をバラしていって、これがマフィアの大規模拘束~裁判の果てに判事暗殺まで拡がり、やがては366人のマフィアの逮捕に繋がるマフィアとの/マフィア間の戦い。 後半に延々続く裁判の反対尋問でかつての仕事仲間と対峙して背後の牢屋にいる連中から「裏切り者!」って野次を飛ばされながらもこれは裏切りじゃない、Cosa Nostraはかつての掟と結束を失った全く別の組織になってしまったからだ、ってひとり強く揺るがないTommasoの孤独な闘い。
ローマでの判事とTommasoの出会いがターニングポイントであることは確かなのだが、司法警察 vs. マフィアの抗争活劇ではなく、ファミリーの中で引き裂かれたり沸騰したり後ろから刺されたり怒りと涙を噛みしめたり、そういうドラマなの。Tommasoの家族は身の安全のため米国で暮らしていて、彼も一時は滞在したりするものの、魂はイタリアで自分を裏切った連中への怨念にひとり燃えていていつ刺客がやってくるかもしれないのに戻る。
古典的なやくざの組織内抗争劇 – でも暗殺や殺しのアクションが出てくるのは最初の方だけで、ほぼ沈黙と怒り、対話に口論が動かしていく1980年から2000年までの物語。伝統や掟を重んじつつも組織を存続させるために新たな仕事や領土に手を出し始めた新勢力が、そんな不可避で不可視の裏切りの螺旋が結果的に内部を瓦解させていく - 組織への忠誠か新たな金ヅルか – そんな中、Tommasoは組織に殉じるのではなく自ら組織を潰して過去に遡り永久凍土に自らを埋めようとする。
歴史の内側にどっしりと座りめらめらと燃えたぎってその熱で自分も込みで焼け焦げていく主人公はBellocchio映画のそれとしか言いようがない。彼らは罪人ではあるが決して狂気に取り憑かれているわけではなく、どこまでも(自身にとっての)正気を貫こうと、強い意志で、静かにこちらを見つめてきて、それに向かい合うのは結構体力がいるのだがいつものように窯のなかに引きずりこまれる。で、あとでその熱をどこに持っていけばいいのか困ったり。
パレルモのマフィアと社会について市民の目から追ったドキュメンタリー映画に“Shooting the Mafia” (2019)があって、地元の女性ジャーナリスト/写真家の目を通してマフィアの暴力 - 子供も容赦なく殺されるようになっていく恐怖 - を追ったこの映画の後半にはここに出てくる裁判の顛末も含めて結構詳しく描かれているので一緒に見るとよいかも。
BFI Southbankから”We’ve missed you!” っていうメールが来て、あたしもだよ! って開いたら、9/1に再オープンだって。 9月なんてもう秋じゃん.. なのだがあとほんの1ヶ月半先だということに気づいて下向いて黙った。 今年はほんとにもう。
7.09.2020
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