7.19.2020

[film] John Lewis: Good Trouble (2020)

18日の土曜日の朝に目覚めたらLohn Lewisの訃報が届いていた。

これは13日の月曜日の晩、Film ForumのVirtual Cinemaで見て、アメリカって今はひどいけど(それも秋までな)、それでも司法の世界にはRBGがいて、政治の世界にはJohn Lewisがいるって、なんてうらやましいことだろう、って。 だってうちの国にはだーれもいないんだよ、全部悪の、不正義の手羽先(手羽先ごめん)みたいな腐れたじじい共しかいないんだよ。

“Selma” (2014)でも描かれていたアフリカン・アメリカンへの選挙権を求めるプロテスト - Edmund Pettus Bridgeの行進のその先頭で、武器を持って向かってくる警官隊に素手の無抵抗で立ち向かう、その先頭に立っていたのがJohn Lewisで、この映画でもそのフッテージが流れるのだが、彼は本当に先頭なのであっという間にやられて、本人もあーこれは死ぬ/死んだと思ったそうなのだが、彼は死ななくて、45回手錠かけられて40回逮捕されても懲りなくて負けなくて、ずっと政治家をやってきました、と。

アフリカン・アメリカンの公民権運動の生き証人というか、まだずっと続いているこの運動の突端で先端で土壌として最後の砦として非暴力の活動を貫いてきた、人と会って話して訴える活動そのものが、その全てが彼の思想として刻まれていて、見て聞けばわかるそのわかりやすさと、なぜそれが必要なのか、止めてはいけないのか、などなどがこの映画を見れば歴史も含めてあっという間に、簡単にわかる。

映画は彼の行動をMartin Luther King Jr.との出会いの頃から63年のオリジナル・フリーダムライダーとしてワシントンで演説をした時のこと、Selmaのマーチにこの前の中間選挙時からBeto O'Rourkeへの応援まで、彼の休まない行動と言動を繋いで、合間にAOCやクリントン夫妻のコメントを入れつつも、彼の思想を紹介することに徹している。 苦労話なんて入れようと思えばいくらでもあったろうに、そういうお涙系は一切ない。 癌とか体調のこともまったく出てこない。 とにかくシンプルで力強い。とても優れたコンサートフィルムのように、彼のパワーにダイレクトに触れたかんじになる。

タイトルは彼の口癖の”Get in Trouble, good trouble, necessary trouble”から来ていて、これの前にくるのは「もし君が正しくないもの、フェアじゃないものを見たりした時は、言葉にしろ、行動に起こせ」で、それはよいトラブルで、必要なトラブルなんだ、と。 両親からはずっと“Don’t get in trouble. This is the way it is.”と言われてきたことの反対で。

あと、Selmaを経験した後、死ぬことが怖くなくなったのだと。そしたらどんなことでもできるようになった、って。これって、やるときは死ぬ気でやれ死ぬまでやれ、っていうのとは違うからね。行動するときに死ぬかもしれない、ってことを計算したり判断の基準に入れないってことで、映画のヒーローみたいなことを平気な顔してやってきた。 確かにあのマーチの先頭に立つなんて、Captain Americaとしか思えない。

彼が尽力してきたのはずっと公正な投票権の獲得で、なぜならそれが国の行く末に対する唯一の意見と態度の表明であり、変える力に繋がるから。それが非暴力で行われる(はずの)民主主義の基礎となるから。 当たり前だけど、これはアメリカだけの話ではなくて、選挙っていうのはそれくらい大事なもので、その権利を獲得するまでにSuffragetteでも、Civil Rightsでも、多くの血が流されてきた。 だーかーらー選挙に行け、その権利を使えって言ってるんだよ日本のー(略)。

この点も含めて、この映画のテーマの及ぶところは差別や抑圧に慣れっこになってしまった日本のそれとも無関係ではない。ぜんぜんない。 職場や学校や家庭でトラブルを起こしてはいけません、上の言うことは聞きましょう、の事なかれでずっとやってきたあの国がいまどんなふうになってしまったか。 声はあげてよいの。 必要なトラブルは起こしていいの。
だから日本でも早く、緊急上映でもいいから上映されてほしい。大学のオンライン授業でがんがん流してほしい。

あとね、Selmaのマーチの武器を持たない彼らに襲いかかっていった警察の人たち、「彼ら」の子供たち孫たちは未だに同じことをし続けているよね。それがBLMにまで繋がっていることの重さ、終わらないかんじ。「教育」っていうのは簡単だけど、ちっとも簡単ではなかった/ないのだということ。

John Lewisは死を怖れていなかったので、実は自分が死んだことに気づいていなくて、あの表情であの歩き方で棺桶から出てきて演説を始める … っていう落語みたいなことが起こらないかなあ。

Rest In Power。 ありがとうございました。がんばる。

本編上映後、30分くらいJohn LewisとOprah Winfreyのビデオ対話も上映されてて、これもとてもほっこりするやつだった。

RBGも本当にお大事に。


今日は久々に町にでて、The Second Shelfに行って、SOHOをうろうろしてFoylesを見てからRough Trade Eastに行って、久々にあれこれいっぱい買った。
The Second Shelf、もう予約不要なので行けるひとは行ってあげて。 こないだあそこに入ったEmily Dickinsonの最初期の詩集 - 500部限定の - も見せて触らせてもらった。 宝石のように美しい。車とか買うより、モダンアートに投資するより安いよ。

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