12日、日曜日の昼、BFI Playerで見ました。5月の終わりに始めた14時間のドライブもこれで終わり。
ここまでのPart1~4迄は各3時間だったが、最後のPart5だけ2時間で、Chapter35から40まで。紹介された映画は71本。ナレーションはDebra Wingerさん。かっこいい。 最後に近づくにつれて旅の終わりの寂しさ切なさが滲んでくるかんじで、それはそれでよいかも。 簡単なメモをー。
Chapter 35 Life Inside
小説家がHe thought.. She thought.. のように主人公の内面に入ったり描いたりしていくところをFilm Makerはどうやってきたのか。最初に”The Seashell and the Clergyman” (1928) by Germaine Dulac での主人公の口を隠して頭のなかをオーバーレイで見せる古典的な手法から、迷路のような廊下の描写、見送った後に一人でぽつんと立っている - "The Future” (2011) by Miranda Julyとか、キスした瞬間のライトアップとか、 やりとりの中で沸騰してブチ切れるまで - Mikey and Nicky (1976) by Elaine May - とか、こないだ見た”An Angel at My Table” (1990)で、主人公が彼とキスして別れた後で広がる不安とか、最後に”La zerda ou Les chants de l'oubli” (1983) by Assia Djebbar で、植民地時代の古い写真を通して撮影者に向けられた強い目線と撮られて見られる者の内面を照らしだす。
Chapter 36 The Meaning of Life
内面の方はわかった、ではLife Itselfは?
“Together” (1956) by Lorenza Mazzetti や”Mermaid” (2007) by Anna Melikyanで描かれる障害者の知覚感覚を通してなぞられる生、いなくなってしまった兄弟についての会話と沈黙、夢を語ること、”Les rendez-vous d'Anna” (1978) by Chantal Akerman での、Anaの移動ショットを通して描かれる彼女の孤独(すばらしい)、”Betoniyö” (2013) by Pirjo Honkasalo でスタイリッシュに描かれる絶望、最後に”What Else Is New?” (1992) by Tahmineh Milani で生きることの意味、或いは意味のなさに対する率直な問いが突きつけられる。
Chapter 37 Love
そしてそれはやっぱり愛でしょ、と。
“Sacrificed Youth” (1986) by Nuanxing Zhang の暗闇のやりとりとか、”The Girls” (1978) by Sumitra Peries での手を繋ぐこと、”Me and You and Everyone We Know” (2005) by Miranda Julyでの歩道を歩くこと、における物理的な距離による表現、”On Body and Soul” (2017) by Ildikó Enyediでの夢の中の鹿の件も含めた不思議な出会いのこと、”The Piano” (1993) by Jane Campionでの靴下の穴からの愛が始まる瞬間とか、”The Intruder” (2004) by Claire Denis の手持ちカメラで男と赤ん坊を映すところとか、”An Education” (2009) by Lone Scherfig での超定番ぴっかぴかのパリのデートシーン、”Mustang” (2015) by Deniz Gamze Ergüvenで髪を結ってもらう少女たちが見世物として行進をさせられる哀しいシーン、未亡人が語る娘への愛、看病を通しての愛、そして最後に来るのは”Heart of a Dog” (2015) by Laurie Anderson での”Did you ever really… Love me?”という問いから、母の愛を見出す瞬間とそこからBuddhist的な愛の境地に向かう。
Chapter 38 Death
こんなふうに映画は愛で溢れている。では死は?
最初が田中絹代の『乳房よ永遠なれ』(1955)の病院の廊下を彷徨うシーンから入り、”The East is Red” (1965) by Ping Wang の資本家 vs 労働者の戦いの果てにタペストリーのように描かれる死、”The Attached Balloon” (1967) by Binka Zhelyazkov で軍に殺されてしまう飛行船のこと、”Le Lit” (1982) by Marion Hänsel の死んでいく男の最後の吐息、”Hateship Loveship” (2013) by Liza Johnson でKristen Wiigの介護者と亡くなってしまう老女のやりとり、El Camino (1963) by Ana Mariscal や”Sworn Virgin” (2015) by Laura Bispuri でのお葬式のシーン、”Tonio” (2016) by Paula van der Oest でのアフターショックまで。いろんな愛と死が映画のそこらじゅうに溢れているねえ。
Chapter 39 Ending
最初のChapterがOpeningだったので、Endingも。
”Hotel Very Welcome” (2007) by Sonja Heiss でのずるずる終われない、終わらないEndingから入って、”The Girls” (1978) by Sumitra Peries の”?”で終わるEnding、同様にHappyなのかSadなのか、の『恋文』(1953)のEndingとか、”Hard, Fast and Beautiful!” (1951) by Ida Lupino の最後、母に残されたトロフィーひとつ、などなど。
Chapter 40 Song and Dance
〆は歌って踊ってお別れしましょう、と。派手なの華やかなのおもしろいのいっぱい。
“Woman Demon Human” (1987) by Shuqin Huang の京劇の喝采、”Boris Godunov” (1954) by Vera Stroyeva のオペラの豪華絢爛。”John MacFadyen” (1970) by Margaret Taitの躍動する楽しさ、”Le Lit” (1982) by Marion Hänsel や”Elena” (2012) by Petra Costaの抽象的だったり浮かんでいたりする動きとイメージ、かっこよさが印象に残っている”Girlhood” (2014)のホテルの部屋でのパーティシーン、楽しかった”Crossing Delancey” (1988) by Joan Micklin Silver のPapayaでみんなが歌う”Never Let Him Go”とか、”The Connection” (1961) by Shirley Clarke での撮影シーンの壊しながら作っていくかんじとか、”Le Bonheur” (1965) by Agnès Varda のふたりがぐるぐる回って相手の女性だけ次々変わっていくとこ、同じくAgnèsの”One Sings, the Other Doesn't” (1977)のボートで歌う女性たちの連帯、”Attenberg” (2010) by Athina Rachel Tsangariでしんみり終わるかと思ったら最後はこれしかないよね、って”Beyoncé: Lemonade” (2016)で、BeyoncéがGene Kellyばりにステップを決めつつ車をどかどかぶっ壊していって、最後にこっち(カメラ)に向かって…
そしてほんとうに最後に、車を降りたカメラは静かに墓地に入っていって始まりのあのひとのところに。
Endingに流れるFlorence PriceのViolin Concerto No. 1がしみた。
Part 1から5まで、紹介された映画は延べで534本、重複を除いたら310本(このうち、日本で公開されたものは何本あるだろう?)。 紹介された女性映画作家の数は201人だった。 数を集めればいいってもんじゃない、のかも知れないがこれはこれでとても勉強になったし、2019年にこのようなドキュメンタリーが作られる必要があった/作られた、ということはしっかり記憶されるべき。作品の選定やChapterの置き方についてはいろんな議論や異なる視点があってよいと思うし(ちょっと英国人視点かなあ、というのは思った。例えばアジアの女性作家が選んだらどんなものが、とか)。
数年おきに地図が改訂されていくように、新たなルートが出来たり新たに舗装されたりしていくように、数年おきに増補改訂されていってほしいな。
あと、見ていなくて、見なきゃいけないのが山ほど、っていうのはいつも通り。ガイド本を読んだからといって旅したことにならないのと同じで、これを見て見たことにしちゃうのはだめだから。映画は見ないと。
あと、「日本人なら」田中絹代監督作品は見ておかないとな、って。
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