10.14.2026

[theatre] チャリング・クロス街84番地

10月8日、木曜日の晩、東池袋のあうるすぽっとで見ました。 劇団昴による公演。演出は菊池准。

原作はHelene Hanffの“84, Charing Cross Road” (1970)、邦訳は江藤淳による『チャリング・クロス街84番地』(中公文庫の)で、自分もここから入って、サンリオ文庫から出ていた『ニューヨーク、ニューヨーク ニューヨークっ子のN.Y.案内』は自分がNYに行く前から最良のNYガイド本だったし、ロンドンに行ってからは”84”の英国版のハードカバーの第二版とか、彼女の別の小説のサイン本なども手に入れた。(まだどこかの箱から出てきてくれない)

映画版は、David Jones監督による英国映画 - ”84 Charing Cross Road” (1987)という、Anne BancroftとAnthony Hopkinsの主演(他にDoelの妻役でJudi Dench)のがあり、よい映画だと思ったけど自分のあたまの中で組みあげられたあの本のイメージたちとはちょっと違ったかも。

演劇版は、James Roose-Evans脚本・演出により1981年に初演されてWest Endまで行って、1990年まで英国をツアーして、その後2015年からも演じられていて、とにかくずーっと人気があるようで、今回の舞台版もそれをベースにしている。

NYのへレーンはマンハッタンの東の上の方の凍てつくアパートにいて、古書店Marks & Co.があった場所はいまではいつも混み混みのマクドナルドになっている。ここでは、Grand Big Macというのが出ていた時期があって、何度か懲りずに食べては吐きそう、を繰り返した記憶が。

原作はそんなアメリカとイギリスの2地点を行き来した往復書簡集で、手紙のやりとりなので時間にも場所にもギャップがある。

舞台の左手は高くなっていて、そこがNYのへレーン(一柳みる)の書斎で、右手が低くて、そこがドエル(金尾哲夫)たちの働く古書店Marks & Coの店内で、左側でへレーンが自分の手紙を読みあげると、それは右手のドエルに届いて(聞こえて)いて、ドエルが返事を読みあげるとへレーンにも直に届いていて、その返信には古本もついてくるので、わあってなる。 本を読んでいくときにはページめくりの時間差があって、それがよいのだが、舞台版のテニスのような卓球のような右左のやりとりも楽しくて、時間が進むにつれて近くて遠くて、どうしても届かない距離のもどかしさ、切なさがやってくる。手紙でしか知らない人が突然いなくなってしまうことのぽっかり空いた日々の隙間とか。

あとは、セシリーやメガンといった、書簡のやりとりでは少ししか出てこなかった彼女たちもそこにいて、それぞれの戦後を生きていて、大変だったんだろうな、って思うところとか。

本との違いでいうと、原作はふたりの書簡のやりとりも楽しいが、英国の古典への最良のガイドでもあったこと - 最良、というのは彼女の手紙を読むと、ああこれ読みたいかも!ってお腹が鳴ること。サミュエル・ピープスもジョン・ダンもラム随筆もウォルトンもクイラー・クーチも、翻訳があれば読んでみるようになったし、ロンドンの古書店や古ペンギンでもあると手に取るようになったし。(ここにシェイクスピアが出てこないのはなんで?アメリカでもふつうに手に入っていたから?)

夢に見た英国に行けなかったへレーン、直接出会うことが叶わなかったへレーンとドエル、でもこうして手元にやってきた古書たちを抱きしめ、わたしにとっての英国はここにあるのです! っていうくだりが本では大好きなのだが、舞台版でそこがないのはしょうがないか。

あとは実際にロンドンで古書店に通うと、そこの書店員の人たちって博識なのは当然として、メールのやりとりだけでもとにかくやさしくあれこれ教えてくれて、それも一軒二軒の話ではなかったので、そういう文化なのかも。日本の古書店もそうなのかもしれないけど、そういうところには巡りあっていない。

帰国してからはWebで注文したりするのだが、それでもオーダー確認の際に、こんなのもあるけど、まだWebには出していないけどこんなのどう? …など、機械ではなく教えてくれたりして、ありがたいの(除.お財布)。

あと、値段感とか。いつからはわからないけど、古典の古書って高いのはとんでもなく高くなってしまって、手に届かないのも多い。劇中でヴァージニア・ウルフの「一般読者」 - “The Common Reader”のことね – が2冊で$2とか言っていたが、これのちゃんとした2冊揃えなんて、いまなんて軽く£800超えるのよ。ウルフの初版本なんて、軽く£2000~4000くらい。誰に文句言ったらよいのやら。

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