10月15日、木曜日の晩、SUPER DOMMUNEに行って見て聞きました。
発売になったばかりのFall本『ザ・フォールの素晴らしき世界』の刊行記念で著者の上村彰子さんと司会の鈴木喜之さん他ゲストによるトークとミニライブとDJ。
7月にイギリスから船便が着いて、オーディオ機器の前に箱が積まれて家で音楽を聴けない状態になってしまった(箱を開けてお片付けをすればよいだけなのになぜそれができない?)ので、ライブ以外で音楽を聴くのはこういう機会とか場所に出かけるしかない、という情けないことになっている。
The Fallについては、2022年8月のRock Cafe Loftでのトークにも行って、轟音で楽曲を視聴する〜浸る、というよりこれってなんなの?へんなの~ のような与太話と共に珍奇なものを眺めたり流したりしていくのがなんだかとても気持ちよかったので。(なぜちっとも明るくないのに、気持ちよくないのに気持ちよいのか問題)
あと、14日の夜に映画『審判』を見て、Josef KからThe Fallへ。カフカからカミュであり、自分が最初にThe Fallと出会った日本編集オムニバス盤『Clear Cut』のA面1曲目(Josef K “It's Kinda Funny”)~2曲目(The Fall “City Hobgoblins”)の流れそのままなので、なんだかうれしい。
中心にあるThe Fall本については、まだ読んでいる最中だが、The Fallの全体像ってディスコグラフィやバンドの変遷を追うだけでは捕捉できないのだ、ということを言うために現地側と日本側双方で見えた聴こえたものをぜんぶきちんと追った上で、音楽史におけるマンチェスターの位置づけや、曖昧に片づけられがちな「ポストパンク」の時間的、概念的な広がりについて触れ、それを語るためにそもそものパンク(遺物ではなく現在の)とは、まで踏みこんだ後、そんな文脈やストーリーから離れて「ぞっとするもの」がひしめく彼の詞の世界に至る。で、結果的にThe Fall抜きでは成りたたないような(実際そうなのだが)形で70年代からの英国音楽を俯瞰・総括してしまっている。あんな隅っこにいた、入れ歯がたがたのマイナーなバンドでそれができてしまう、それがThe Fallだとできてしまうのだ、それがThe Fall(のThe Wonderful and Frightening World)の淵なのだ、と。 イギリスには当然のように大量のThe Fall本があって、それらはThe Fallが有史以前からあるようなものとして書かれているのに対して、ここでの書きよう、丁寧な網羅ぶりはすばらしい。
特に日本でのリリースまできちんと追っているのはえらいなー、だった。Rough Tradeの日本盤は第一弾リリースの時だけ、あとはきちんと売ろうとしているとは思えない宣伝コピーとかライナーもムダとしか思えず輸入盤のみ、にシフトしてしまったので、日本でもそれなりに追うことで受容史のようなものは見えてくるものなのか、とか。
トークの最後の方、締めくくりのように語られた、端からきちんきちんと追って聴かなくても流しておいて、お!ってなればよい、というのはThe Fallを聴く正しい態度で、彼らの音楽そのものが、集中して聞きこむような態度を拒むようなバラック、パルプ感(→ Mark Fisher)に溢れている、というか、田舎道を壊れた車で走っていく感覚(Simon "Ding" Archerのでげでんでげでんベース)があり、流れていく景色をちゃんと見つめたら気持ち悪くなる、止まらないけど、そのうち勝手に、簡単に壊れる – くらいの距離感で聞いていくやつー。
Mark E Smithのあの湧いた端から吐きだすようなポエトリー手前の雑言をどうトラックに乗せるのか、どう乗っかるか、それらのせめぎ合いの気持ちよさ、がThe Fall的な音楽のベースとしてあるような気がしていて、あれは言っていること・言われていることを含めて、たぶんイギリス的に気持ちよい形式なのだと思う。
あと、なんでMark E SmithやThe Fall(だけ)があんなふうに出てきたのだろうか、って思うとき、アメリカのクリーブランド、David ThomasのPere Ubu(←Alfred Jarry起源) - どちらも一時期Rough Tradeにいた – のアヴァン・ガレージ、砂漠の広がりを補助線として引いてみたい(のだが、オーディオが..)。どちらもよれよれになっても、最後までステージの上で歌う – がなるように呻くように歌って吠えることをやめなかった犬じじい共。
あと、本のなかの、MarkのリストにあったPeter Hammillも(ずっと聴いてきているので)宿題で。
10.22.2026
[music]「The Wonderful and Frightening World of The Fall」 ~ザ・フォールの深遠な世界
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