9月26日、土曜日の昼、シネマヴェーラで新しく始まった特集 『『映画を輝かせるために -蓮實重彦 山田宏一 山根貞男 映画談義集成』刊行記念特集』で見ました。
サイン本も欲しかったので早めに行って並んで、しょうもない雨であんま外に出たくないし特にすることもないし夕方にはトークもあったし、この日はここで4本見た。やっぱりつかれた。
今回の特集は、本の刊行記念 - 出たばかりの本に絡んで特集されたものなのだが、読んでいないからといって見るのを躊躇するかというともちろんそんなことはない、その逆で、「映画を輝かせるために」あらゆる言葉、映画史の知見を駆使してきた3人によって世にでた本、それに因んだ特集のために選ばれた作品なんて問答無用で輝いているに決まっているので、端から見ていくしかない。 実際にどれを見たってすごいし、時間も1時間半くらいのが殆どなので、平日の仕事帰りに引っかけるのに丁度よいの。
邦題は『スパイクス・ギャング』、これのスチールが今回の特集のカバーになっている。
原作はGiles Tippette による”The Bank Robber”、監督はRichard Fleischer。カラーの西部劇。
今回の特集のどれもが、みんなが知っているクラシックというより、半端でお金かけてなさそうなB級ばかりで、原作とか撮影とか音楽とかは知らない人ばかり、知らなくたってこんなにもすごいのかー、この勢いはなに? ばっかり。めちゃくちゃうまい3ピースバンドの3分間の演奏にぶっとばされる、そんなのばっかり。
Harry Spikes (Lee Marvin)は西部開拓時代の終わりを生きる老いた銀行強盗で、名は知られているががたがたで、冒頭に血まみれで死にかけているところを3人の小僧 – Wil (Gary Grimes), Les (Ron Howard – あのRon Howardね), Todd (Charles Martin Smith) – に助けられ治療をしてもらって食べ物ももらって、3人は謝礼とか受けとらなくて、Harryはこの恩は忘れねえ、と言って彼方に消える。
やがてWilは粗暴な父親からの暴力に耐えられなくなって家を出ると、あとの2人も彼についてきてみんなで放浪の旅に出て、お金がなくなったので見よう見まねで銀行強盗をしたらTodが人を殺してしまい、Lesはお金を落として、殺した相手が州の上院議員だったので全員が重めのお尋ね者になってしまうのだが、とにかくメキシコに流れ着く。
メキシコでも不器用で警察にしょっぴかれて、そこにたまたま通りかかったSpikeに助けてもらって、この時はそれだけで、まっとうな生活に戻ろうとするのだが、次にまたSpikeと会うと、自分とこのギャングにならないか、と言ってくる。
で、予行練習のような銀行強盗でも失敗して、Todが背中を撃たれて、Spikeは彼を捨てて逃げろ、というのだが2人は拒んで動かないのでSpikeは呆れて彼らから離れて、亡くなったTodの埋葬をしているところをまた襲われて、とにかくまったくついてなくて、そのうち改めてSpikeとも対峙するのだが、結局みんな…
そもそもがろくでなしのSpikes Gang – よれよれの年寄りと3人のガキ、が鈍かったり未熟だったりで全員散ってしまうしょうもないお話なのだが、印象はとても爽やかな青春劇のように瑞々しく、あまりにさらさら風となって消えてしまうのでなんだったのだろう、って3人とじじいの像がずっと残る。果たしてこんなの「西部劇」と呼ぶことが許されるのか、任侠モノのようにべったりしていなくて、女っけゼロで、そこらの道端に転がっていそうで、誰もあとで思いださないまま風に消える。 でも映画ったら、こんなふうにー。
The Rise and Fall of Legs Diamond (1960)
9月26日、↑のに続けて見ました。この2本はどういう事情か知らないけど特別料金設定(1600円)。
邦題は『暗黒街の帝王レッグス・ダイヤモンド』、監督はBudd Boetticher。
こちらは西部劇ではなくて都会のギャングもの。1920年代のNYで、チンピラ小悪党のJack Diamond (Ray Danton)は宝石店からネックレスを盗むためにそこにいたダンス教師のAlice (Karen Steele)に近づいて、しょっぴかれたりするものの、ちっとも懲りなくて、戻ってから口八丁手八丁でギャングの用心棒になって、密造酒、麻薬、賭博といったあらゆる利権を自分の好きなようにすべく動き回って、親分が亡くなった後は勝手に引き継いで大股でやりたい放題を始めるのだが、当然敵もわらわら湧いてきて…
これも↑の西部劇と同様、暗いところがちっともない、でも陽気でバカなわけでもない、最後にAliceが彼について語る「彼は多くの人に愛されたけれど、誰のことも愛さなかった」姿そのもの、その空っぽさ、穴の輪郭が鮮やかに残るの。 ”The Spikes Gang”とはあらゆるところで対照的な。
10.05.2026
[film] The Spikes Gang (1974)
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