10.05.2026

[music] ROUGH TRADE 50

イギリスのインディペンデント・レーベルRough Tradeの設立50周年を記念して、同レーベルに所属する最近のバンド2つのライブと創業者のGeoff Travis、Jeannette Leeが来日してレクチャーとDJをするというので行くしかないと思った。

10月2日、東京藝大でのレクチャーの冒頭で司会のおじいさんも語っていたが、1980年のThe Pop Group の”For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?”と翌81年に出た日本編集のオムニバス - “Clear Cut”は自分の物の見方とか世界への関わりかたをすっかり変えてしまった。当時はもちろん他にもいろいろあったが、Rough Tradeのとっ散らかった音がイギリスの、メジャーなわけではない、インディペンデントから来た、というのも大きくて、当時聴いていたPILとかSlitsとかと合わせて、当時の他のインディペンデント - Factory, Cherry Red, 4AD, Mute, Stiff, CRASS, なども含めて自分のイギリス熱を決定的なものにした(のはパンクよりもこちらの方だった)。

2人ともものすごくわかりやすい英語で、まずはGeoffのCity Lights Bookstoreの話は嬉しかった。あそこの地下フロアの哲学書と音楽本があるところが身悶えするくらい好きなの。

あと、まずディストリビューション(ネットワーク)から考えた、というところの正しさ。レーベルのカラーのようなのを前面に出す、というよりStep-ForwardとかPostcardとかPianoとか更に小さいところを繋いでいって、だから例えば、ポストパンクとは? と問われたら最初の”Clear Cut”の12曲を通しで聴いてみればよいのだし、今回の50thで復刻されている初期の7inchもその適度なばらけ具合がたまらない。

Jeannetteの子供の頃からMotownをずっと聴いていた、というところもすてき。一番聞きたかったのは講堂のスクリーンにもジャケット写真が大写しされたPILの”The Flowers of Romance” (1981)のどこにどう関わったのか、出かける前にこの時期に彼女がバンドの周辺を撮ったポラロイドの写真集 - “Private Image” (2017)を振り返っておこう、と思ったのだが、山の奥に埋もれていて出てきてくれなかった。

ただ、全体として、1時間半はあまりに時間なさすぎ。設立当初〜Jeannette加入時の話題からいきなりThe Smithsに飛んでしまうのはあまりにも。Young Marble Giants周辺、The Raincoats周辺、Scritti Politti周辺が当時のGeoffからどう見えていたのか、そこから彼の政治的な立ち位置がそれなりに見えて、それはそのままポストパンクをポストパンクたらしめた当時の視座、のようなものに繋がるはず、と思っていたのだが。あと3時間は語って欲しかったかも。

あと現在の主にロンドンにある、店舗としてのRough Tradeが今後どうなっていく/どうしたいのかも聞きたかった。マイナーなのとか重箱の隅系は年2回のRecord Store Dayと通販でどうにかなってしまっている昨今、イベントスペース提供とスタンダードな本とレコードを中心とした地元の発信地、のようなのでよいのか? - それでもあの居心地のよさは十分に素敵なのだけど。

10月1日、O-Eastのライブの合間のふたりのDJはリラックスした楽しいものだった。どうしても曲当てクイズみたいになりがちで、そういうとこも含めて。

ふたつのバンド、最初のMy New Band Believeも次のCarolineのライブ、SNSなどを見るとみんな大絶賛なのだが、自分にはあんま来なかったかも。

どちらも長めの、ストーリーを意識したような曲構成、フリージャズのような対話即興を交えつつ終盤に向けて盛りあがっていって、無邪気に真摯に音楽をとっても愛して取り組んでいることはわかるのだが、それならクラシックやジャズやプログレと同じで、自分にとってのRough Tradeの音は、そんな音楽、意識的なとこも含めたロックのありようとか態度とか愛とかに斜め左からばーか、ってやる音たちだったので。

あと、どちらの音にも、とにかく新しいなにか、得体の知れない、怪しいなにかがまるで感じられなかった。これは自分が鈍くなっているだけなのだろうが、むかしにGodspeed You! Black Emperorあたりで聴いたような壁の質感、最近のなんでもシューゲイザー(もどき)と同じような包み込んだもんがち、みたいなのしか。音楽が好きなんだようー なのはとてもよくわかったけど。

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