9月27日、日曜日の昼、ル・シネマの7階で見ました。 4Kリストアされた『眺めのいい部屋』。
封切り時には当然シネマライズに並んで見た。今にして思えばバカみたいだが、誰もがStyle Councilの”Shout to the Top” (1984)の12inchの裏ジャケットの世界に繋げて夢と理想を見つめてうっとりしていた季節。 約40年後、これのリストア版を文化が隅々まで粉微塵に駆逐されてゴミそのものと化してしまったその同じ街の、家電量販店の上階なんかで見ることになろうとは。映画なんかよりも街をまるごとリストアしてくれないものか。
原作はE. M. Forsterによる同名小説 (1908)、監督はJames Ivory、製作はIsmail Merchant率いるMerchant Ivory Productions。このプロダクションについては、2024年のドキュメンタリー映画 - ”Merchant Ivory”で歴史も含めて詳しく綴られていて、裏側の事情などもすごくおもしろいので見る機会があったら是非。
この後の“Maurice” (1987)や“Howards End” (1992)といったもう少し文芸作っぽくなる映画よりもふわふわぼーっとしているかも。「眺めのいい部屋」では、窓の向こうに広がる眺めを楽しむべきなのか、そうして置かれた部屋そのものを楽しむべきなのか揺れてしまうのと同じように、主人公のLucy Honeychurch (Helena Bonham Carter)は、結局あんた、どこで、だれと、なにをしたいのよ ?! の山や谷間で揺れまくって、とにかく落ち着かない。親戚のおばちゃんになってそんな彼女を眺めているだけの約2時間。
1907年、Lucyは年長の従姉妹であるCharlotte Bartlett (Maggie Smith)と一緒にフィレンツェのペンションに滞在していて、ふたは当初約束されていたアルノ川を望む眺めのよい部屋でなかったことに落胆して、それでぶつぶつ騒いで呪っていたら、なにをして生きているのか不明なMr. Emerson (Denholm Elliott)とGeorge (Julian Sands)の父子が自分たちの部屋と交換してあげましょう、と言ってきてそんなのいいのどうするの?って揺れるのだが交換して、でもそんな翌日、広場の喧嘩で男が殺されるところを目撃して気を失ったLucyをGeorgeが助けてくれて、その後、小説家のEleanor Lavish (Judi Dench)を含むイギリス人一同の遠出で、GeorgeがLucyに情熱的なキスしているのを見てしまったCharlotteは、これは母親とかに言ってはいけません、旅もこれで終わり、ってイギリスに帰ってしまう。
イギリスのサリーに戻ったLucyは冷淡で尊大で身分以外に取り柄のなさそうなCecil Vyse (Daniel Day-Lewis)からプロポーズされて、お家も身上も安泰になるから、とあっさり受けて、一応これでめでたしになると思ったら、Cecilの嫌味でEmerson父子が近所のコテージに滞在することを知って…
誰が誰を見初めたくっついたはなれたを内なるエモの暴走と想定壁への激突と諦めの一人称のなかに楽しく描いていくJane Austenも楽しいが、ここでのLucyの「部屋」と「眺め」を巡る一筋縄ではいかない、外面からはあまり窺うことのできない呻きや爆発、などが見事で素敵で、この辺は公開時に見た時には(自分が未熟すぎて)見えていないところだったなあ、って。Helena Bonham Carterの自在に伸縮して溢れだす髪の毛の見事なこと。
彼女の内側に張られた糸が惑いながら解れて回りだすイタリア-フィレンツェの眺め、それはイギリスの都市や田園のそれとは違うものだった、というのは実際に行ってあの川とかドゥオモとかを見て思い知るようなことで、その眺めのよさって、単に内から外を眺めるだけのものではなかったのだなー、って。
あと、Maggie SmithとJudi DenchとHelena Bonham Carterの3人が同じ画面に入っている、ってなんだかたまんなかった。
あと、Julian SandsとDaniel Day-Lewisの殴り合いとか素裸の水浴とか、あってほしかったかも。(Bridget Jones以降の)
10.06.2026
[film] A Room with a View (1985)
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