6月9日、火曜日の晩、丸の内ピカデリー Dolby CinemaのDolby Atmosで見ました。
英国での公開時(2月末)、BFI IMAXで数回上映があって、それを逃したのでいいやー、って思ってしまったまま見ていなかったやつ。邦題は『シラート』。 カンヌで審査員賞を共同受賞している。監督はスペインのOliver Laxe。
日本では当たるんだろうなー、と思ったら、やっぱりすごい評判で、みんな絶賛なんだって。ふうん。
「シラート」とは、楽園と地獄の間をつなぐ細く狭く危険な道を意味するアラビア語、と冒頭の字幕にでる。
最初に砂漠にでっかいスピーカー一式が組み上げられていって、続けてそこでレイヴして踊ったり恍惚としたりしている人々 - 今作の登場人物たちもその中に – が映し出される。 たぶんこの絵、数シーンで、この映画に没入できるかそうでないか、が分かれるのかもしれない。 野外のフェスやライブで、轟音を浴びて痺れたことは何度かあるが、レイヴの、あのどぅんどぅん(びかびか)て脳に直に響いて延々続いていく、そこに煙とアルコールが流れこんでくる世界に地獄の責め苦&偏頭痛の山脈しか感じない者にとって、異世界の人たちのお話かー、になってしまう。
そこに明らかに場違いなナリの中年男Luis (Sergi López)と小学生くらいの息子のEsteban (Bruno Núñez Arjona)と子犬のPipaが現れて、5カ月前から消息を絶っていて、ここのレイヴに来ている可能性のある10代の娘の写真を手に消息の聞き込みをしていくのだが、とうぜん誰もしらない、という- レイヴなんてそんな世のしがらみから離れて恍惚とする目的で来るものなので、尋ね人をすること自体おかしい気がするが、それくらい必死なのだろう。
やがて軍が現れて場所を接収して踊る人々をどかし始めて、Luisたちは別のレイヴ会場に向かうというヒッピーふうの男女たち - 手が欠けていたり足がなかったり – に一緒に連れていってくれ、と頼む。彼らはその車だと危険だからやめたほうがいい、って強く拒むのだが、Luisは必死に頼みこんで、結局彼らの車2台の後についていくことになる。
自らの意思で姿を消した可能性もある娘を追って、小さい息子(&子犬)を伴って軍が出てくるような政治状況下で、多重に危険な砂漠を抜けていく旅を強行する。この時点でLuisは状況判断ができず頭がおかしくなっていると思うのだが、そういう描き方はしないで、子供思いの父親がレイヴの彼方に消えてしまったかもしれない娘を追う、そういうストーリーになって、でも周囲が指摘した通りそんな簡単にいくわけがなくて、道路や岩場が厄介なのは勿論、ほぼ人はいないし最後の方では地雷まで出てきて大変な目にあって、みんな死んだ目をして天を見あげてしまうの。それだけなの。
ここに描かれたぎりぎりの生のありようをレイヴの血流の刹那と絡めて宗教的な境地のようなところにまで結び付けて語る(→だからレイヴ万歳!)のは勝手だけど、ただの意味なしB級バカ映画 - 地雷でびっくりどーん!とかで十分な気がした。どうせ死ぬまで踊っていたいのだろうしー、くらい。(音がよいシアターだと本当にびっくりするかも。でもそれだけだよ)
そして、すでにいろんな人が指摘しているように、荒廃した台地で人がばたばた死んでいく極限状態とノイズのありよう(毒なのか薬なのか)を考察した映画としては『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』 (2005)があったの。自分にとってはあれが決定版で、あれでもう済んでいるんだけど、って。
しかしこれがカンヌの審査員賞なのかー なにをどう審査したんだろうねー
6.15.2026
[film] Sirāt (2025)
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