6.23.2026

[film] Détruire, dit-elle (1969)

6月18日、木曜日の晩、日仏学院のマルグリット・デュラス特集で見ました。

英語題は”Destroy, She Said”、邦題は『破壊しに、と彼女は言う』。

“The Track” (1977)に続いて、自分にとってはここから今回のデュラス特集が始まったかんじなのだが、どれも震えるくらいおもしろい。ふつうに生きていそうな朗らかな人たちは出ていないし、全員なに考えているのかわかんないし、どんな設定なのかもよくわかんないし、彼らの会話はコミュニケーションとして成立しているように思えないし、でも何かが起こっている、進行していることだけはわかって、その何かとは何なのかを捕捉し追跡していくだけの時間。でも映画も小説も演劇も、アートってそもそもそういうものなのだ、という根幹に気付かされる。これがどれだけすごいことかー

デュラスの書いたものの2作目、書いたらそれを映画にする、を単独監督として実践した最初の作品。書きものの方は最初のパートナーだったDionys Mascoloに捧げられている。

テニスコートがある、広い庭もある、がらんとしたモダンなホテル - 療養院のようにもみえる – に4人のきちんとした身なりの男女がいて、出たり入ったり場所と組合せを変えたりしながらいろんなことを会話していく。

「ユダヤ人です」というStein (Michael Lonsdale)、謎めいたElisabeth (Catherine Sellers)、Max (Henri Garcin)とその妻Alissa (Nicole Hiss)、終わりのほうで、Elisabethの夫Bernard (Daniel Gélin)もやってくる。

彼らが普段なにをしているどんな人物で、なんのためにそこに滞在していて、誰となにをしたいのか、どこに向かうのか、彼らの会話はその周辺をずっと回覧板していて、互いを知るとか合意とか共感とか楽しむとか寛ぐとか、そういう姿とか志向はまったくなさそう。向こう1~2時間の暇つぶしとか、あしたあさってにどうするか、くらいしか頭にないし、近くにいる他人とどう過ごすか、夫婦であったとしても、これからなにをどうするとか、まるで表に出てこない。 ホテルというのはそういう場所だし、それのどこがいけないのか、とか。

かといって不条理劇のようなどん詰まり感や不明瞭な謎、目くらましもない。すべてはオープンで、それなりの説明はされているし、登場人物たちは意味不明のやりとりをするわけでもなく、焦ったり憎しみに燃えていたりすることもない。所謂「社会」を形づくるひとたちのように見える。

やがてAlissaが森に行きたい、と言っていた彼女はいなくなり、遠くから耳を塞ぐような轟音、爆撃のような音が… (原作では音楽だったような)

破壊しに、と言った彼女が?


La Musica (1966)

6月19日、金曜日の夕方、日仏学院で見ました。

Paul Sebanとの共同監督で、これが彼女の映画監督第一作。 前年にStudio des Champs-Elyséesで上演された同名の劇作品をベースにしている。

カフェのテラスでスーツを着て硬く不安げな表情で固まっている男Lui (Robert Hossein)に興味をもったのか、横にいた少女(Julie Dassin)が声をかけて、いろんな周辺の土地やこれからしていく旅など、あそこはいい、あれはどう、とかの会話をしていく。少女は彼と一緒にどこかに行きたいようで、男はウジェーヌ・ブーダンの絵に描かれたトゥルーヴィルの浜と彼の 『浜辺の女たち』について語ったりするが、そこから動く意思はなさそうだったのだが、この辺の行ったりきたりの会話の末に車で移動を始めて一軒のホテルに辿り着く。

そしてその途中、路上に姿を見せるElle (Delphine Seyrig)のシャープで漲った姿 – めちゃくちゃかっこいい - と、ホテルに舞台を移して離婚の話を進めようとしているらしい、LuiとElleの繋がっているのかいないのか、の異様な会話 – その段差とか間合いは『破壊しに、と彼女は言う』のそれにも通じるような。 その果てに「いったい何が起こっているんだ?」 って呻くLui...  確かに何かが、音楽のように生起していく何かがそこに。

ディスプレイに映る黒い獣の目とか、変なふうに映りこむボヘミアの城の絵とか、ここに掛かっていたブーダンの『浜辺の女たち』なども含めて、流れていくすべてがおもしろい。 これらを通してデュラスは映画のやり口、のようなものを掴んだのではないか。

ブーダンの『浜辺の女たち』、元の絵はどこにあるやつだか探してみたのだが、彼の浜辺の絵、多すぎ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。