8月16日、土曜日の午前、シネコンのVue West Endで見ました。
“Past Lives” (2023)のCeline Songの作・監督によるrom-com。とてもJane Austen的な普遍性をもったテーマを扱っていて、どれくらい普遍的かというと、冒頭から原始人(あんただれ?)が出てきて、お花を運んできた彼はちゃんと石器も一揃い持っていてえらいねえ.. というくらい。
舞台は現代のマンハッタンで、冒頭にCat Powerの”Manhattan”が流れたりするのだが、あまりNYぽい描写はないかも。
Lucy Mason(Dakota Johnson)はAdoreというハイクラス向けのマッチング会社の社員で、そこに所属するマッチメーカーのなかでも成功していて、冒頭にも9番目のケースを成功させて皆に祝福されて、実際に彼女がクライアントと話しながら条件を絞り込んで説得して(納得させて)いくところとか、結婚式直前に不安のあまり閉じこもってしまった花嫁を説き伏せるところとか、すごい技術だと思う。
Lucyによれば、結婚とはビジネス・ディールであってブレークもリスクもある、王子様なんていないし作れないし、そこに思いこみや過剰な期待を込めるのは危険である、とさばさばしていて、貧しい家庭で育ち女優としてのキャリアもうまくいかなかった彼女自身はずっと独身でいくことを決めていた。 のだが先の結婚式でヘッジファンドをやっている資産家、見るからに大金持ちのHarry Castillo (Pedro Pascal)に声を掛けられる。彼はそこに集まっていた女性たちに向けてマッチメイクの勧誘をしているLucyに惹かれて、彼女は彼を自分のクライアントにしようとするのだが、彼はLucyがいい、って指名してものすごく高級そうなレストランでデートを重ねていく。
そしてHarryがLucyに声をかけたその会場でウェイターをしていたのがex.彼のJohn Finch (Chris Evans)で、彼はバイトをしながら小劇場で役者をしつつ、彼と同様に薄汚れた友人たちとシェアしているアパートで汲々と暮らしていて、久々に再会したLucyとJohnは彼が彼女を車で送ったりするなか、昔のことも含めていろいろ話して、当然現在のふたりの格差やこれからについても確認しあい、互いにちょっと複雑になったりする。
その後もJohnの芝居をLucyとHarryが揃って見にきたり、3人が顔を合わせる場もある反対側で、LucyはHarryのトライベッカのペントハウスにずっと泊まるようになって、当然のようにHarryは指輪を用意してきてー。
最終的にはLucyの選択になって、その結論に至るまでには、Lucyのクライアントで、彼女が紹介した性の悪い男に粘着されて大変な目にあうのを助けたりがあったりして、結着そのものは”Past Lives”のラストと同様に極めてスムーズで異論はないものの、rom-comに不可欠な最終局面における破綻とか大喧嘩とかぜんぶおじゃん、がない、弱い。対象となる男ふたりのとてつもないギャップからすれば、そのどちらを選んでもカタストロフィックな展開になってもおかしくないと思うし、Madame WebがCaptain AmericaとMister Fantasticのどっちを選ぶのか、なんて地球の未来に関わることだと思うのに、ものすごく穏やかにかつスマートに決まってしまう。
この3人だし、全員が知的に、穏やかにコトを進めようとする人格者(という設定)なので、これはこれで十分わかる。しょうがない。 だけど、やっぱりHugh GrantとColin Firthがぼこぼこに殴りあったようなのをChris EvansとPedro Pascalにはやってほしかったし、見たかったし。
まあ”Materialists”というキャラクター設定そのものが夢とファンタジーを糧に爆発する(特に前世紀の)rom-comから程遠いもの、なのかもしれないが、それゆえの自爆、誤爆があったらもっと楽しくなったのになー。とか思いつつ、例えばSATCのCarrie Bradshawはmaterialistなのか? たぶんど真ん中だと思うがあのおもしろさはなんなのか? とかいろいろ考えて止まらない。
あと、LucyとJohnのやりとりから窺えるふたりのギャップって、やはりQueens vs. Brooklynのそれとしか言いようがないのだった。
音楽はCat Powerの他にSt. Vincentとか、Johnny Thundersとか、最後にJapanese Breakfastが聞こえてきて、とても趣味がよくて、よかった。
8.20.2025
[film] Materialists (2025)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。