8月2日、土曜日の昼、BFI Southbankで見ました。
ここの8月の特集は”In Character: The Films of Peter Sellers”というPeter Sellersの特集(もうひとつの特集はSophia Loren)で、ピンクパンサーとHal Ashbyの”Being There” (1979)くらいしか知らないので、見て勉強していきたい。
あと、この人にはキャリアの初期から短編がいっぱいあるらしく、どの長編でも、おまけのように本編の前に短編が上映される。
この作品はEaling Studiosのクラシックで、さすがに見たことあった。原作はWilliam Rose、監督はAlexander Mackendrick。2004年にJoel and Ethan Coen監督、Tom Hanks主演でリメイクされている(未見)。 邦題は『マダムと泥棒』。
上映前に、”The Ladykillers Audio Recording”(1955)という本編の宣伝用につくったものらしいが、Peter Sellersがスチール写真にあわせて出演者や監督の真似をしている7分くらいのおまけが流れた。
ロンドンのKings Cross駅に入っていくトンネルの入り口の上に建っているMrs. Wilberforce (Katie Johnson)の家があって、冒頭は彼女が町に買い物に出て警察に寄って帰ってくるまで、典型的な英国のおばあちゃん、じゃないマダムで、警察にはいろいろ夢みたいなことを言うのだがいつものことらしく向こうは相手にしない。そんな彼女がオウムと一緒に暮らしている家に下宿させてほしい、と見るからに怪しげなProfessor Marcus (Alec Guinness)がやってきて、彼がそこに暮らし始めると、彼の指導しているという弦楽五重奏団のメンバー(Peter Sellersはこのうちのひとり)が楽器ケースを抱えて次々に現れる。全員どうみても怪しげなギャングで、楽器を演奏するようには見えないのだが、リハーサルをする、うるさくなるけど邪魔しないでほしい、とマダムには伝え、レコードをかけて騒がしくしている裏で作戦を練っていく。
それでもマダムはお構いなしにお茶を運んできたりちょっかいを出してきて、でもとにかく彼らの現金強奪は成功して、フェイク荷物としての現金の受け取りもマダムを利用してうまくいくのだが、チェロケースに移し替えた現金を運びだすところで失敗して札束がばらまかれて見られて、これじゃもう彼女を殺すしかないな、って全員でクジをひくのだが…
ここから先、ギャングがひとりまたひとりと勝手に間抜けに踏み外すように自滅していくところ、そんななかひとり変わらず悠然としているマダムがすごい。
すべてが「そんなバカな」みたいな小咄なのだが、キャラクター全員が妙にリアルでそこらにいそうなかんじなので、笑いが上滑りせずに、あーあ、ってちゃんと終わる。見事に箱庭的な、Wes Andersonのような完成度。こっちに来てからだが、わたしにとってのAlec Guinnessはオビ・ワンではなく、こういう英国のコメディで変人をやる人になってしまった。
The Smallest Show on Earth (1957)
8月2日、土曜日の夕方、間にSophia Lorenのを挟んで見たPeter Sellers特集からの1本。
監督はBasil Dearden、原作は上のと同じWilliam Rose。アメリカでの公開タイトルは”Big Time Operators”、日本ではDVDリリースのみ? 35mmフィルムでの上映だった。
お金がない、って嘆いている若い作家のMatt (Bill Travers)とJean (Virginia McKenna)の夫婦が亡くなった大叔父から地方の町の映画館が相続された、という連絡を受けて、これだ! って現地に行ってみたら、線路脇の廃墟のようになった映画館 - “Bijou Kinema”で、しかもずっと勤務している老いた従業員が3人いて(Peter Sellersはそのうちのひとり、気難しい映写技師)、すべてがあまりにぼろぼろなのでどうする...? になるのだが、やってみようか、って再建に向けて動きだし、隣のでっかい映画館からの買収の話もあったりするのだが、負けずにみんなで立て直していくの。 小さな町の映画館の再興っていうと暖かい人情噺になりがちだと思うが、従業員のキャラも含めて結構めちゃくちゃやっていて楽しくて素敵で。
線路脇で列車が通るとがたがた揺れるので、その時間帯に合わせて画が激しく振動する西部劇を上映したり(4DXのハシリか)、砂漠のシーンで暖房をがんがんにつけて、みんな喉が渇いてひーひーになったところにアイスクリームを売りつけて稼いだり、いろんな工夫して盛りあげて、というかなんとなく勝手に盛りあがっていくところがなんとも言えずおかしい。
併映の短編は”The Super Secret Service” (1953)。Super Secret Serviceに扮したPeter SellersがSuper SecretServiceとは、ってえんえんSuperなずっこけを繰りひろげていく24分、でした。
8.10.2025
[film] The Ladykillers (1955)
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