8.02.2025

[theatre] Garry Starr Classic Penguins

7月21日、月曜日の晩、21:00からSoho Theatreで見ました。
演劇というよりネタがぱんぱんのコメディ。21時~と遅めの開始で、約60分一本勝負。理由は始まってからわかる。

Garry Starr, またの名をDamien Warren-Smithは、43歳になるオーストラリアの俳優、コメディアンで、この出しものは昨年のEdinburgh fringeで評判になったものらしい。爆裂にくだんなくて下品で、最高に楽しかった。

会場に入ると、背の高い椅子に背を向けて座って葉巻だかパイプをくゆらせている男の影があって、彼が向かっているディスプレイはジョン・エヴァレット・ミレーの「オフィーリア」の流れていくオフィーリアがペンギンになっている絵を映しだしている。右手には中くらいの本棚があって、オレンジ色のペンギン・クラシックスの本が棚の上下に詰まっていて、本棚の上にはOHPがある。

開始時間がきて、男 - この人がGarry Starr、たぶん - が立ちあがってこちらを向くと、下半身はすっぽんぽんで、首の周りにカラーを巻いて、燕尾服の上だけ羽織って、足にはオレンジの足ヒレ付けてて、要はこいつはペンギンなのでそういう格好なのか、客は当然大喜びだし、これは最初のツカミでやっているだけなのかも、と思ったら終わりの方はカラーだけのほぼ素っ裸になっていた。

このペンギン男がなにをするのかと言うと、横の本棚からオレンジのペンギン・クラシックスの本を端から順番に取り出して、表紙をOHPの下に置いて映し出すと、その内容を寸劇のように一発芸のように説明、表現していくの。それを20数冊はやったのではないか。もちろん彼ひとりでやるのではなく客を巻き込んだり、強引に客席にのりこんできたり。後方の席だったのでセーフだったがあの格好でサーフしにくるし… あと、客席に裸になってくれる人〜? って募ったりしてた(手をあげる女性とかいて、ほんとに裸になっているのでびっくり)。

『ガリバー旅行記』だと舞台にあげた客をガムテープではりつけにしたり、『怒りの葡萄』だとスーパーで買ってきたブドウのパックを開けてぶつけあったり、『ドラキュラ』はトマトジュースの大瓶を一気飲みして、お腹がぱんぱんになったところで『侍女の物語』、って繋いだり、これだけ聞けば、しょうもなー、とまあよく考えるねーの間を行ったり来たりなのだが、これを嬉々としてやっているのが半裸ぶらぶらのペンギン男である、という辺りでわけがわからなくなる。ペンギンの宣伝になるとも啓蒙になるとも、或いは反知性のようななにかをぶつけてくるとも思えず、ただひたすらバカらしくてお下劣なだけ(褒めてる)。

他にはウォーの『ブライヅヘッドふたたび』 - もじもじするだけ - とか、ウルフの『波』とか、ブロンテの『嵐が丘』とか、クライマックスは『ハムレット』だろうか、ペンギンの頭だけ被り物をした裸の男女数名が出てきて、踊りながら"Bohemian Rhapsody”をみんなで合唱するの。ラストはR. C. Sherriffの“Journey's End”。

ペンギン・クラシックスなので、登場するのはみんなが知っているクラシックばかりなのだが、何冊かは知らないのがあって、まだまだだな、って思った。

これ、日本でも誰か岩波文庫でやらないかしら?(もう既にやってる? あんなふうに裸になったら捕まっちゃうか..)

ペンギンは丁度90周年で、Waterstones(書店)のピカデリー店で小展示をしていたり(もうじきムーミンの80周年も始まる)、Penguin Archive Collectionていう一冊一冊のデザインが素敵で薄めでセレクションがちょっとマニアックなシリーズ(日本からは清少納言と川端康成)が出ていたり – Webだと5冊で£25 – 最近はいろいろ楽しい。

個人的には、BFIの前、Waterloo橋の下で、天気のよい土日にオープンする古本市で、ペンギン・クラシックスの古本 - だいたい1940~60年代の、値段だと£4くらいからいろいろの – をいつの頃からかちょこちょこ買うようになって、それがだいぶ貯まって山になってきてどうしたものか、になりつつある。最初は知っている作家や作品を中心に、だったのが表紙やタイトルがおもしろそうなら、になって止まらない。 大昔、岩波文庫を集めていた頃よりも底が見えないのがとってもこわい。 ペンギンのくせに。

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